2016年7月30日土曜日

SECRET BOYFRIEND/Memory Care Unit

アメリカはノースカロライナ州の音楽によるノイズ/ドローン音楽ユニットのアルバム。
2016年にBlackest Ever Black Recordsからリリースされた。
全然知らなかったがレーベルからのメールで視聴して良かったのでデジタル版を購入。
Ryan Martinという人が一人でやっているようだ。どうもこの手の界隈の人に良くある多作ぶりなのでいくつ目のアルバムなのかは分からない。

暗いアンビエントな音楽を演奏しているのだが、結構一つの作品の中でも音楽の幅が広い感じで面白い。
再生ボタンを押すと1曲目の「The Singing Bile」はドローン。無慈悲なノイズが威圧的に空間を埋めていき、リバーブのかかったシンセのフレーズがミニマルに乗ってくる。不安を駆り立てるその様にこれからの先行きがのっけから怪しい感じだが、2曲目「Little Jammy Center」ではのったりとしたベース音にこれまたのったりとしたドラムが乗っかり、合間にノイズがふわふわしている。なんともドリーミィなシンセがテーマを奏で始める。なんだかちょっと雰囲気が違う。暗い中にも暖かみが出てくる。音の作り方と雰囲気で言うとAphex Twinの作るアンビエントトラックに通じるものがあると思う。血の通った感じで、悪夢とは言えないけどちょっと奇妙な夢を見ている様な、あの感じ。そうこうすると反響のかかったボーカルがボソボソ歌い始める。なんともなよっとした感じ。
調べてみるとRyanの作る音楽は「気怠いニューウェーブ」や「ローファイ」という言葉で形容されている事が多く、なるほど確かにそんな面がある。感情の込め方がなんとも微妙なので非常に「あわい」(間)の音楽という印象。暗い、激しい、苦しいという音楽はもっとそれこそ色々・沢山世にあふれてのだが、この人の場合はもっと日記的な側面があって思いつきをノートに書き留める、フレーズをテープレコーダーに録音する、そんな雰囲気が漂う。(別に思いつきを一発取りしている、という訳ではない。)だから結構気分みたいに曲にも不利幅があるのだけど、当然毎日の生活の中で感情に幅があるのは当たり前なので、アルバムを通して聴いても一貫性があるといった風。
レーベルによると「孤立したマシンミュージック」と称されているが、バンドと違って一人で作っているからだいたいこういったユニットは個性が濃いイメージがあるが、この人の場合もそうで、ゆったりとした夢みがちな雰囲気は大分変わった人が見ている夢の世界に接続したみたいな趣がある。
個人的には美しいシンセのそこの方にじりじりとした低音ノイズがゆっくり侵入してくるラストの「Memoraize Them Well」が気に入った。コントラストが良いと思いきや、ノイズも美しさに加担している、そんな感じのクライマックスが大変良い。

暗いけどオーガニックな雰囲気がする不思議な音楽。暗い奇妙な夢に接続してみたい人は是非どうぞ。

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