2016年にMass Appeal Recordsからリリースされた。
言わずと知れたDJでとにかくその元ネタの在庫の豊富さと後にトリップホップにも影響を与えたというその音楽性は有名だと思う。かくいう私も名前だけは知っていたのだが、大学生の時にヒップホップ好きの友人から伝説的な1stアルバム「Entroducing……」を借りて聴いたことがある。その他のアルバムは聴いた事がないのでいかにもミーハーだが、新作が出るというので思いついたように買ってみた。Bandcampでデジタル版を購入。
ここでいうDJというのは本来2台(以上、こともあるのかも)のターンテーブルを使い異なる曲を間断なくつなげていく人のことを言う訳だから、テーブルに載せる元ネタがあって当然曲を作っているミュージシャンというのは違うのだろうけど、DJ Shadowの場合はそのDJプレイの枠から、膨大な元ネタをつなぎ合わせる事によって全く新しい曲を作ることで大きく躍進している人。で、その作曲方法からも分かる通りやはりヒップホップのよう差が強いという事になると思う。つまり作曲の根幹にあるのはサンプリング。100%サンプリングで作っているのか否かはちょっと分からないが、最近のMVでもターンテーブルを捜査しまくる彼が出てくるからやはりその比重は多いのだろうと思う。
ではその中身となる音楽的にはどうかというと、確かにこのアルバムでもRun the Jewelsが参加していたりとヒップホップの要素は強いのだが、全体的なイメージはもっと内省的だ。さすがトリップホップの源流と評されるだけはあって、ヒップホップというには煙たく、そしてその根底には暗い雰囲気が漂っている。ただボーカルが乗る曲の方が少ないし、所謂陰鬱さはほぼ感じられない。あくまでも音の使い方ということで方向性や指向性という観点ではあまりトリップホップを挙げるのは間違っている気がする。具体的には音がソリッドすぎてそちら方面とは結構一線を画すのではと。例えばスクラッチなんてトリップホップではあまり使わないのではなかろうか。
こういった意味では基本1stからの方向性が続いているという事になるのだが、さすがに丁度20周年ということもあって、圧倒的な経験によりその曲のクオリティは研ぎすまされている。明らかに曲の幅は広がっていると思う。前述のRun the Jewelsとのコラボ曲では大胆にアコースティックなギターの音をサンプリング(もしくは録音?かもだが)して取り入れている。ミニマムさは曲によっては大胆に削り取られ、代わりにスクラッチを始めうわものが奔放に跳ね回るようになった。一方土台となるビートの部分は軽快さを失わない確固たる重さでもって一定のリズムを刻んでいる。曲によってはディストーションをかけたノイジーな音使いに中国風の楽器と旋律を取り入れる、みたいなことにもチャレンジしている。
DJそしてヒップホップという言葉から想像する音よりかなりストイックな音楽をやっていると思う。勿論踊らせるための音楽ではあるのだろうが、やはりというか求道者的な地味憂さと真面目さが伺える。個人的には4曲目「Bergschrund feat. Niks Frahm」、5曲目「The Sideshow feat. Ernie Fresh」が素晴らしい。
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