2016年7月24日日曜日

DESPISE YOU/west side horizons

アメリカはカリフォルニア州ロサンゼルスのイングルウッドのパワーバイオレンスバンドの編集版。
オリジナルは1999年にPessimiser Recordsからリリースされた。私が買ったのはFuck Yoga Recordsからの再発盤でデジタル版。
注射器をくわえたやべー顔がジャケットが非常に印象的。パワーバイオレンスの名盤として数えられる事も多い。90年代に活動していたのだがどうも一度解散して、その後活動を再開したとの事。そういえばちょっと前にPig Destroyerのギタリストで激音フリークのScott Hullが在籍するAgoraphobic Nosebleedとスプリットを出してた。
この音源は94年から96年までの音源からコンパイルしたもので全部で62曲収録されている。因に収録時間は43分なので平均1曲あたり1分無いわけで、まさにパワーバイオレンス!なアルバム。

完全にハードコアな音なのだが、よくよく(聴かなくてもすぐ分かっちゃうと思うんだけど)所々メタリックなところがある。
まずはドラムの速さに驚く訳だ。「スタスタスタスタ」というパンク特有のビート(2ビートかもしくはDビートだと思うんだけど、違うかも…)を気持ち悪いビデオの倍速のようにスピードアップしたものが基調となるんだが、グラインドコアバンドもはだしで逃げ出そうようなブラストビートも入れてくる。思うんだがブラストビートほど”全部のせ”感のある音楽的要素もそうないのではなかろうか。ある意味一番単純な思考の発露なのかも入れないが、こんなに嬉しいものはそうない。ブラストパートだけでなく、シンバルのクラッシュが滅茶苦茶叩かれるのは大好きなのでこちらも嬉しい。
ギターはさすがに昨今の流行とは一線を画す結構ソリッドなもの。音質は良いとは言えないぐしゃっとした感じに仕上がって(もしくは意図的に仕上げているのかもしれない)、アングラ感がある。「これはこれで」ってやつだ。速度に会わせて非常にせわしない。グラインドコアのようにリフに凝っている訳ではないが、たまにスラッシーなリフが飛び出したりする。またこの手の音質はパワーバイオレンス特有のスラッジパートに良く映える。たまに他の演奏陣が黙ってギターだけになるパートがあるんだけど(ソロでなくてワンフレーズ披露するあれっす)、このバンドは結構それがおおくてそんなときに「お!」と思わせてくるカッコよさ。
ボーカルが特徴的で何と男女のツインボーカル。たまに女性声が出てくるのだがこっちはスクリームという感じではなく、本当に女性がマイク片手に叫んでいる様な感じ。甲高い金切り声なので、真っ黒な背景から際立っている。本当なんかのサイレンみたいで「危ないですよ〜」という感じがぐっと増す。この危ないですよ感というのは日常性であって、男だらけのファンタジー世界だったのにこの女性の声が入るだけで”現実に何か起こっている”感がでてくる。なるほどなという感じ。彼らの危ない歌が現実のものになるのだ。
男の人の方は「ファック」だったり「シット」だったりの言い回しがが抜群にかっこ良いのでこの手のジャンルだと最高の部類では。必死さが半端無く絞り出している様な感じ。恐らく越えにエフェクトもかけていないのだろう、その生々しさが良い。
基本的にはあっという間に終わってしまう曲ばかりだが、たまに出てくるスラッジパートが非常にかっこ良いのと、たまに挟んでくるカバー(PossesedやD.R.I.など)がこちらのバンドにないフックやメロディーを提供してくれるので、62曲あるけど結構聴きやすい(まあ短いってのもあるんだろうけど)。

どうも当時イングルウッドは相当治安が悪かったようで、育ちの悪さがそのまま音になった様なヒリヒリ感。なるほど非常に凶暴な音だが、暴れるためだけの音なら絶対こうはならないと思う。有り余るパワーでのバイオレンスの背後にはちょっと内省的なところがある。そこがこの手のバンドの格好良さの一つ。名盤と誉れ高いこともあり、内容的にはお墨付きなので未だの人は是非どうぞ。

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