2016年3月13日日曜日

MASAMI AKITA & EIKO ISHIBASHI/KOUEN KYOUDAI 公園兄弟

日本人2人組によるノイズユニットの1stアルバム。
2016年にEditions Megoよりリリースされた。私が買ったのはデジタル版。
秋田昌美さんは言わずもがなのノイズ界の巨匠Merzbowであるし、石橋英子さんは様々なアーティストと共演するマルチプレイヤー(七尾旅とサンと共演したりして気になっていたものの)。と偉そうに紹介したのだが実はお二人の音源は持っていない(Merzbowは単独音源持っていなくて他のアーティストとのコラボ音源のみ持っている)のでこれを良い機会に買ってみた。結局単独音源は買ってない事になるのだが。

レーベルのクレジットを見ると秋田さんがノイズ、エレクトロニクス、コンピューター(?)、ドラム担当。石橋さんがピアノ、ドラム、シンセサイザーを担当しているとのこと。Jim O'Rourkeがレコーディングとミックスを担当しているとの事。
Merzbowというとハーシュノイズな印象があって、私が持っているBorisやFull of Hellとのコラボでも容赦のない凶音ぶりを発揮しているので、おっかなびっくり聴いてみるとこれが中々どうして期待を裏切られる出来。ノイズというのは絵の具の黒色みたいなもので、個性が強い分他の音と混ぜてもノイズの音色にしかならない、というのは結構な誤解で、この音源を聴くとハーシュなノイズでも色々な表現があるのだと分かる。
「Slide」(アートワークにもなっている滑り台の事であろう)と「Junglegym」という2曲のみで構成されていて両方とも18分台である。ほぼインストゥルメンタル。多分溶けた様な声がたまに出てくる程度。
ノイズがその背骨を貫いているのは間違いないのだが、全体的には予想よりもっと複雑かつ繊細な音が鳴らされている。まずは音の数が非常に豊富だ。ノイズは刻一刻とその形と色と音を変えていくもの。このアルバムでは一口にノイズと言っても色々な表情を見る事が出来る。シャーシャーなるホワイトノイズ、暴力的なブラックノイズ、空電の様な高音、地鳴りの様な低音などなど、枚挙にいとまがない。それからノイズ以外の楽器も顔を出す。ドラムが全方位的に広がっていく混沌とした世界に秩序をもたらす事もある。ただし全編に出てくる訳ではないのがニクいところだ。例えばバスドラムの乱打はむしろ混沌の度合いを強めている様な気がする。霧の様に曲を覆うシンセサイザーの音は幻想的。透徹なピアノは暴力的なノイズと極めて対照的だが、両者の差異が明確になりつつも、曲自体ではきちんと調和がとれているから、単にボリューム以上の繊細なコントロールが徹底されているのだと思う。
一体どういう風に曲作りがされているのかは分からないが、曲がゆったりだがしかし確実にとその展開を変えていく様は不自然でないもののかなり先が読めないので、ひょっとしたらインプロゼーションなのかもしれない。
混沌としているが多分に感情的で、多様な色が渦を巻いているようで面白い。冷たい印象は皆無でノイズ以外の楽器が暖かみ(というか聴きやすさという要素なのか)を演出しているのでこの手の音の中ではかなり聴きやすい部類だと思う。

個人的にはバッキバキのハーシュなノイズよりもこういったメロウだったりメロディアスな要素の片鱗が感じ取れる音が大好物なので非常に気に入っております。非常にオススメ。

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