2014年にMetal Blade Recordsからリリースされた。
発売は去年だしネオクラストと言えばマイナー界隈では良く目にするジャンルでなんで今更という感じだが、このバンド日本のTokyo Jupiter RecordsとLongLegsLongArmsという二つのレーベルが共同でぶちあげた来る11月に開催されるその名もTJLA Festのヘッドライナーで来日する事が決まっており、慌てふためいて買って来たのが私なのである。完全に後追いも良いところで恐縮です。
さてこのバンドは2008年に結成されてメンバーチェンジがありつつも現在は四人体制でやっているという事。「アイオーンが腐敗の王を暴く」と中々物々しいタイトルでもってどちらかというとデスメタル感さえ漂う。
いざ再生ボタンを押すと結構驚いた。ネオクラストというと私はほとんど素人であるからどうしても最近聴いたKhmerだったり、同郷のAlpinistだったりをなんとなく頭に浮かべていた訳なのだが、それれのバンドとは共通点はありつつも相違点がデカく、そこに圧倒されたのであった。まず曲の尺が極めて長い。インタールード的な曲をのぞけばだいたい8分から11分くらい。ハードコアでこれだけの長さとなると真っ先に曲の速度を著しく落としたスラッジが頭に浮かぶし、(Metallumでもアトモスフェリックスラッジと称されている)なるほど速度を落としたスラッジパートも盛り込んでいる。ただアトモスフェリックという形容詞があるように汚いズルズルとしたスラッジ感というよりはポストロック、ポストハードコアを通過した轟音の中にも寂寥とした荘厳な美しさを感じさせる、そっちの方の要素が強い。そしてそのスラッジパートもあくまでもパートとしてなので全編低速で無声な訳ではない。要するに曲がドラマチックなのだ。展開が複雑という意味である。前述の通りポストハードコア感が強いのだが、しょっちゅう出てくる荒々しさは確かにクラストのもの。激情という言葉が上手く彼らのイメージを補完する訳なのだが、私はその荒々しさの先頭に立つ様なボーカルの恐ろしさにビックリしてしまったのである。掠れまくったそれはブラックメタル感を感じさせつつもそこにとどまらない異様な存在感を放っている訳で、一言で言うならおっかないな、という感じでただただ圧倒されたのだった。
ところがむむむという感じでイマイチ掴みきれなかったこの音源も、2回3回と聴いていくとその本当の姿がやっと見えて来た。それは徹底的に荒廃しつつもどこかしら幻想的な雰囲気のある音風景である。まったく制約があってのアートワークは今や中の音楽と完全に一体となっている様な気がするのだが、印象的なジャケットは良くこのバンドの音楽を表現している。暗くて荒涼としているがどこかしら詩情のある風景だ。何と行ってもこのバンドは演奏が劇的。ドラマチックという言葉がぴったり。同じネオクラストでもLight Bearer方面。(ネオクラストとか全然知らない頃に「Lapsus」を買った。)あくまでもバンドサウンドの形でしかも暗くて重い方に完全に舵を切っているのによくもここまで豊かな曲を作れるものだと思う。それこそポスト感の漂う停滞した様なスラッジパート。クリーンな余韻がたまらないアルペジオ。一点ブラックメタルそこのけのトレモロの嵐感。静と動はやはりこの手のジャンルのお家芸だが、クラストバンドがそのフォーマットでポスト感を完全に飲み込んでしまうとは結構な驚きである。(ポスト感横溢しているもののあくまでもクラストフォーマットに則っている様な。)個人的にはドラムが回すように勇壮なマーチっぽいリズムを刻んで2本のギターが切ないトレモロを奏でる2曲目の最終部分は白眉。
良い意味で予想と違った内容で驚いた作品。とにかく荒々しく劇的。来日するわけだしこの機会にまだの人は是非どうぞ。オススメです。
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