2015年にWarp Recordsからリリースされた。
13年ぶりに沈黙を破って「Syro」がリリースされたのがもう去年。今年に入って「Computer Controlled Acoustic Instruments pt2」というEPをリリースしたり、Soundcloudで大量の音源をアップしたりと、にわかに浮上して来た彼の新作である。といっても純粋な新作ではなくてタイトル通り2006年から2008年に作った音源をまとめた編集版的なものらしい。色んな逸話とかインタビューとか読むと常に音楽は作っていそうなので、莫大な未発表音源からコンパイルしたのだろうか。Orphanedは「孤児の〜」という意味だから、その頃AFX名義でリリースしていた音源から漏れたものという意味がありそうだ。
前も上記作品の感想で書いたが私は高校生のとき「Drukqs」を買って以来、熱心なという訳ではないが気づいたらいくつか音源を買っている程度のファン。AFX名義だと2006年にリリースされた「Chosen Lords」しかもっていないはず。
さて今作は衝撃の「Syro」とは結構趣が違う内容になっている。
元々AFX名義はアシッド色の強い音源をリリースしていた(と思うんだけど違ったら申し訳ない。)こともあって、この音源もその要素が強い。アシッド(ハウス)が何かと言われると分からないんだけど、個人的にはこういう解釈だ。つまり「びよびよ」いっている電子音だ。「ぶりぶり」成分もある。「ぶりょぶりょ」といっても言い。ちょっと前に流行ってた「ぶぶーぴょもぴょもぴょも」とはちょっと違う、きっとこっちがそっちに影響を与えているんだろう。こっちももっとこうストイックだ。
特にこの音源で言えば「びもびも」していてあとはハードでミニマルである。
まずはビートがかなりカッチリしている。コンピュータに作らせればなんでもカッチリするだろ、という意見も最もだが、それでも結構人間らしさがある電子音楽と比べると、やはり、結構カッチリしていると思う。音が硬質という事もある。曲を構成している一部の音は本当に金属を叩いて出している様なキンキンさがある。これで無骨なビートを作り上げる。ちょっとMr Gに似ているなと思った。あそこまで音の数が少なくもストイックではないのだが。でもシリアスさには似通ったところがある。無骨なくせに音の数はやたらと豊富なのはさすがリチャードさんだぜ!という感じ。(同時に色んな音が鳴っているというよりは、手を替え品を替え色んな音で一本筋が通ったビートを作り上げていく様な感じ。)
この土台に「ぶりぶり」が乗る訳だ。ベースラインが「ぶよぶよ」しているんだが、これがそのアシッドという語源もあって、ミニマルなくせにずっと聴いているとその輪郭が徐々に姿を変えていく様な(例えば不定形の細胞群が点滅しながらゆっくりとその形を変えていく様な視覚的なイメージ)印象があって聴いていると段々酩酊感が醸し出されていく。このベースラインがさすがに巧みで「ぶりぶり」が連続するものもあれば「もじょ もじょ」とぶつ切りにされていたり、それらが組み合わさったりと、組み合わせの妙という感じでストイックかつミニマルな中にも聴いている楽しみがある。
明快なメロディは皆無だし、Aphex Twinの魅力の一つである妙にねじれたファンタジックなユーモアというのは正直あまり付け入る隙がないくらい”ハード”な音源なんだが、無骨な音楽性の中にも流石がキラリと光るかっこよさがある。硬質なテクノを聴きたいぜという人は是非どうぞ。
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