アメリカの作家によるミステリー小説。
「パインズ-美しい地獄-」の続編。前作を面白く読めたので続刊も買ってみた次第。
前も書いたけどM・ナイト・シャマラン監督の手によりドラマ化されている作品。
アメリカ南西部に位置する山間の穏やかな町ウェイワード・パインズ。イーサンはこの町の保安官。ある夜彼の運転する車が何かを轢いて大破。満身創痍のイーサンが確認するとそれは全裸の女性死体だった。全身には激しい拷問を受けた後があり、地が抜かれていた。イーサンはこの町の初めての殺人事件に捜査を開始するが…
ビックリどんでん返し系の「パインズ」の続編。あの落ちでまあよく続編が作れるなと思ったものの、前作と同じ誰が何故こんな事を?という謎解き要素はそのままに少し趣向を変えて追われるものだったイーサンが追うものになる。安定した地位を手に入れたのでよりミステリー的な要素が強くなった。
またイーサン自体が楽園の住人の一人になったので、より楽園・パインズでの生活がどんなものなのかというのが読書には理解できるようになったのが面白い。いわばこれはディストピアを扱った小説であって、壁に囲まれた一つの田舎町という規模の小ささというのがそのまま逃げ場なしという状況を作っている訳であって、ある意味では隙間がある大都市を扱ったものより閉塞感がある。住民同士の相互監視社会というのがいかに嫌らしいものかというのを実感できる。
そんな今作、基本的には見かけだけの天国でイーサンが右往左往するのは面白いのだが、設定でいくつか気になるところが散見された。
動物を飼っている人は分かると思うのだが、動物とは従来臆病なものだから訳が分からない状態に陥った時は回避行動をとるのが生き残る鍵であって、銃で撃たれたときにまっすぐ撃った人に向かっていくのはちょっと考えられないかなあと思った。勿論実は怪物が銃の存在を知っていて、の伏線かも知れないがだとしたらなおさらいくら強靭な生き物でも逃げると思うけど。もひとつ、車がオブジェと化した町でみんなが寝静まった夜に五月蝿い四駆をかっ飛ばして隠れ家に行くシーンが2回くらいあったと思うけどそんな事をしたらどんなアホでも車が向かったと思われる方向に何かあるんだろうな〜位には思うだろう。
という感じで舞台は前作と同じなのに個人的には粗が目立った。この瑕疵は実は前作から存在し続けていたものだから、敢えて二作目の本書で指摘するのはおかしい事だとは自覚しているものの何となくそう感じてしまった。不思議なものだが前作は力業で全編を引っ張りまくったから気づかなかったものに、今作ではパインズという町をイーサンとともにゆっくり眺める事が出来るようになって改めてその不自然さに気づいたって感じだろうか。あとアメリカのドラマにありがちな肝心な謎は引っ張って次作へ、次作へというやり方が個人的にはあまり好きじゃないのでそういうところもあると思う。(「24」の最初の方は好きだったけど「Lost」はなんか興ざめで早々見る気をそがれた事がある、両方とも少し古くて恐縮だが。)
読みやすい文体で先が気になって最後まで楽しく読めるんだが、手放しで100点満点とは言えなかったかなという印象。ちょっとあざとくて強引さが目立つ印象でした。
という訳でビックリ系が好きな人は是非どうぞ。まさにドラマを見ている様なビジュアル的なエンタメ作品。ただしまずは前作「パインズ-美しい地獄-」からどうぞ。
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