イギリスのテクノミュージシャンのベストアルバム。
2015年にBlackest Ever Blackからリリースされた。
私が購入したのは12曲収録されたデジタル版。(8曲収録のレコードもあるそうな。)よそ様の2015年ベストに入っていたのを切っ掛けに購入。
RegisことKarl O'Connorは1990年代初頭から活動しているミュージシャン/プロデューサーでレーベルを運営していたりもするようだ。私はこの音源で初めて彼の音楽を聴いた。色の濃すぎる赤と青が印象的なジャケットだ。
ベストアルバムだが次作の曲は勿論他のミュージシャンの曲のリミックスも収録されている。私は唯一Vatican Shadowだけは名前を知っていて音源を持っている。(Prurientの別名義である。)
私は機械っぽい音は何でもテクノだな、とひとくくりしまうくらいの人間だが、勿論(往々にして間違っている事も考慮に入れても)その範疇には色んな音楽があるものだ。このRegisという男がならすのは流行とは無縁の無骨で暗いものである。基本はビート主体なのだが、例えばなぞりやすいメロディや突出した音使いなどの派手さはない。
金属質的な硬質さが全体を覆っていて、たとえばドローンなどの模糊とした芸術性とは明確に一線を画す。徹底的にミニマルで音の数もそこまで多くないから、極端な言い方をすれば地味という形容詞もある程度当てはまるかもしれない。もっと言えば暗い、潜行する様な内省的な雰囲気をたたえている。ノイズを効果的に用いているが、その使い方はとても繊細で、目を引く分ともすれば曲自体をただの”ノイズ”でしかないものに落とさない。しっかりとその手綱を握って精緻でカッチリした曲作りをする印象。細かい音使いがキラリと光り、例えばミニマルな曲でも後ろの方で儚い追加の音が次第にその勢力を拡大していく事で、微妙に曲が進行するに従いその形を変えていく。あれ?と思うと曲が終わってしまったりして、中々どうして天の邪鬼めいた印象もある。
幻想譚を書くなら確固たる言葉で書かねばとかの澁澤龍彦さんはおっしゃったそうだが、このアルバムに収録されている音はどれも硬質でハードな音、現実的に力を持っている音で構成されているが、ミニマルさもあって暗いトンネルとなってとても不思議な世界に導いてくれるようだ。
とにかく「Blood Witness」がカッコいい。バージョン違いで2曲分収録されているがどちらも甲乙付けがたくかっこいい。ということは曲は勿論、その素材となる音の作り自体が良いのだろうと思う。
一見すると異様さに驚愕する様な無愛想さだが、よくよく聴いてみるとその精緻さに驚くアルバム。ベストってこともあってきっと入門編にも良いのではと。
2016年1月23日土曜日
2016年1月11日月曜日
GREENMACHiNE/The Archive of Rotten Blues+1 -complete edition-
日本は石川県金沢のハードコアロックバンドの3rdアルバム。
オリジナルは2004年にDiwphalanx Recordsからリリースされた。私が購入したのは再発版でこちらは2015年に同じレーベルから装いも新たに発売された。内容的には1曲追加され、Eternal Elysiumの岡崎さんがリマスタリングを全曲に施している。私はディスクユニオンの店舗で購入したのだが、結構大きい缶バッヂがついてきました。(カッコいい)
GREENMACHiNEは完全に後追いで活動停止後に再発の1st、2ndを購入。3rdを買うかと思っているうちにこちらも再発された感じ。
GREENMACHiNEはハードコアロックだ。なんせオフィシャルがそういっているからそうなのだ。音楽的には確かにロックな感じも強いのだが、スラッジの要素が色濃くあって特に前2作ではときに陰惨とすらいえるくらい(そういえば「D.A.M.N」のオリジナル版のジャケットはとてもスラッジだ。詳しくは画像検索してください。)容赦がなかった。今作に関してはスラッジの要素は勿論あるのだが、よりロック色がつよくなった。スラッジ分が減退した訳ではなくて、それぞれのメリハリがくっきりしたという印象で、ちょっと後述します。
ロック色は音の重厚さはそのままによりソリッドになった。分厚い音波がグルーヴィなうねりになって来て背中を推してくる。ギターの粒子の粗いざらついた音が気持ちよい。ベースは下品なくらいの低音。例えば1曲目の「Black Summer」はイントロだけでも十二分聴かせる。速度は中速くらいなのだろうけど、ドラムの手数も多いし、体感ではもうすこし速め。スラッジを通過している演奏陣はタメのある演奏感でタテノリを生み出していく。しゃがれたボーカルはスラッジ特有の自暴自棄感がはいっていてハードコア/ロックの生き急ぐかんじにぴったり。ラフな雰囲気なんだけど決めるところがしっかりしているので荒々しい中にも整合性があるのだろうと思う。
とにかく10曲目「Hammer and Burner」はそんなGREENMACHiNEのロック的アプローチが結晶化したみたない曲で滅茶苦茶かっこよく、なかでもアウトロに入るところが好きすぎる。イントロが良い曲はいっぱいあるけど、アウトロがかっこいいというのはそんなに無い気がする。なんだろう余韻があるのが一因だとおもうがよくわからない。すごいリピートしていたのだが、よくよく聴いてみると4曲目「Into the Bigsleep(Red Eye Pt.3)」と8曲目「Path Bloody Path」もすごいよい。これはそれぞれ9分、8分という長い尺の曲で(特に前者は)完全にスラッジに舵を取っている。メリハリがきいているというのは一つにこれらの曲でもって、ぶっとい音圧で持って巨大な鉄壁を作り出している様な圧倒的な感じ、壁を前にして途方に暮れる様なあの感じがとにかくたまらない。壁かもしくは崖がわからないが、とにかくその無慈悲さに途方に暮れる様な、そんなイメージ。後者の方はそんな圧倒的な風景の中にもどこかしら悲哀のようなものがあって、哀愁のあるギターのソロやフレーズがとても感情的だ。この曲後半の流れが特にすきだ。
聴いたのが本当にねんまつだったからあれなんだけど、これは2015年ベストにあとからいらさせてほしいくらい。超絶オススメなのでみなさん是非聴いてみてください。
春には復活後初めての音源がリリースされるのだけどとにかく楽しみでならない。
オリジナルは2004年にDiwphalanx Recordsからリリースされた。私が購入したのは再発版でこちらは2015年に同じレーベルから装いも新たに発売された。内容的には1曲追加され、Eternal Elysiumの岡崎さんがリマスタリングを全曲に施している。私はディスクユニオンの店舗で購入したのだが、結構大きい缶バッヂがついてきました。(カッコいい)
GREENMACHiNEは完全に後追いで活動停止後に再発の1st、2ndを購入。3rdを買うかと思っているうちにこちらも再発された感じ。
GREENMACHiNEはハードコアロックだ。なんせオフィシャルがそういっているからそうなのだ。音楽的には確かにロックな感じも強いのだが、スラッジの要素が色濃くあって特に前2作ではときに陰惨とすらいえるくらい(そういえば「D.A.M.N」のオリジナル版のジャケットはとてもスラッジだ。詳しくは画像検索してください。)容赦がなかった。今作に関してはスラッジの要素は勿論あるのだが、よりロック色がつよくなった。スラッジ分が減退した訳ではなくて、それぞれのメリハリがくっきりしたという印象で、ちょっと後述します。
ロック色は音の重厚さはそのままによりソリッドになった。分厚い音波がグルーヴィなうねりになって来て背中を推してくる。ギターの粒子の粗いざらついた音が気持ちよい。ベースは下品なくらいの低音。例えば1曲目の「Black Summer」はイントロだけでも十二分聴かせる。速度は中速くらいなのだろうけど、ドラムの手数も多いし、体感ではもうすこし速め。スラッジを通過している演奏陣はタメのある演奏感でタテノリを生み出していく。しゃがれたボーカルはスラッジ特有の自暴自棄感がはいっていてハードコア/ロックの生き急ぐかんじにぴったり。ラフな雰囲気なんだけど決めるところがしっかりしているので荒々しい中にも整合性があるのだろうと思う。
とにかく10曲目「Hammer and Burner」はそんなGREENMACHiNEのロック的アプローチが結晶化したみたない曲で滅茶苦茶かっこよく、なかでもアウトロに入るところが好きすぎる。イントロが良い曲はいっぱいあるけど、アウトロがかっこいいというのはそんなに無い気がする。なんだろう余韻があるのが一因だとおもうがよくわからない。すごいリピートしていたのだが、よくよく聴いてみると4曲目「Into the Bigsleep(Red Eye Pt.3)」と8曲目「Path Bloody Path」もすごいよい。これはそれぞれ9分、8分という長い尺の曲で(特に前者は)完全にスラッジに舵を取っている。メリハリがきいているというのは一つにこれらの曲でもって、ぶっとい音圧で持って巨大な鉄壁を作り出している様な圧倒的な感じ、壁を前にして途方に暮れる様なあの感じがとにかくたまらない。壁かもしくは崖がわからないが、とにかくその無慈悲さに途方に暮れる様な、そんなイメージ。後者の方はそんな圧倒的な風景の中にもどこかしら悲哀のようなものがあって、哀愁のあるギターのソロやフレーズがとても感情的だ。この曲後半の流れが特にすきだ。
聴いたのが本当にねんまつだったからあれなんだけど、これは2015年ベストにあとからいらさせてほしいくらい。超絶オススメなのでみなさん是非聴いてみてください。
春には復活後初めての音源がリリースされるのだけどとにかく楽しみでならない。
細胞彼女/細胞宣戦
日本の関西を活動の拠点にするアイドルユニットの1stアルバム。
2015年にPoptableからリリースされた。
フロントに立つのはうてなゆきという女の子。
twitterでなにかと話題になりがちなアイドルユニット。結構ハードコアだったりメタルだったりに偏っているフォロワーさんが多い中で色々な方の口の端に登るのが気になり、視聴を経て購入。最近だとOzigiriさんがMixを公開したり(細胞粉砕Mixというタイトルに粉砕するのかよ〜と笑った)、元Megadethのマーティ・フリードマンさんが「細胞彼女は日本のNapalm Deathだ!」と称したとか。元々私はなんとなく良い大人がアイドルとかちょっとな…と思ってしまうくらい頭が古いのだが、群雄割拠のアイドル戦国自体の現在なら彼女(とどちらかというと制作サイド)たちが色々な付加価値を付けてくるのは必然で、所謂正統派がやらないようなことにも手をつけてくる、そうすると色物が出てくる中で面白い人たちが光りだす、というのは自然な流れかもしれない。例えばメタルと融合したBabymetalなんかは(私もライブを見に行ったが)日本にとどまらず人気を獲得している訳です。そう考えるといい加減「良い大人がアイドルとかwww」とか音楽好きですを自称する様な人種が言っている状況の方がサムイのかも知れませんね。(乗るのか批判するのかは自由ですが、さすがに黙殺するのは無理があるのかも。)
音楽としては電子音を主体としたメロディアスなポップソングという事になるのではなかろうか。ただ例えばPerfume(私何曲か持っているのです)みたいに洗練されたものではなくて、具体的に言うと音の数が圧倒的に細胞彼女の方が多い。Napalm Deathと称されるのも頷けるくらいメタルなどの激音を意識した作りになっている。ギターの様な(本当に生音なのかシンセ由来なのかは判別つかないので)がっつりした音の塊が入っている。(5曲目は分かりやすくてこれは完全に流行っぽいメタリックなリフに仕上がっている。)そしてドラムは速く、手数が多い。こちらもさすがに完全に生音風にするとそれはもうメタルにしかならないので(好きな人は好きだろうが間口は圧倒的に狭くなってしまう)、電子音と明らかに分かるものに調整されている。(それでも6曲目なんかはバスドラが非常に重たい。)ただ手数は多い訳で速さも相まって過激なブレイクコアに聴こえる。
モッシュパートみたいなのもあってライブでは盛り上がるかもしれない。(一体どんなになるのだろう)
勿論かわいい女子が歌う訳でデス声なんてもってのほかで速いパートはまくしたてる様な早口で言葉を繰り出してくる。ボコーダーなのかどうかも分からないが曲やパートによっては声にもエフェクトをかける。最大の特徴というわけでもないだろうが、どんなにはっちゃけてもサビだけはひたすらメロディアスでキラキラしていて可愛い。やっぱりアイドル的なカタルシスが必要なんだなと思う。ギャップがある分映えてくるというのもその感を強めている。
歌詞は難しい漢字なんかを織り交ぜながらちょっと可愛い感じ(それとも不思議な感じだろうか?)に仕上げている。これはあんまりアイドル調だと拒否反応を起こしてしまう(私のような)人もいるだろうから、結構よい選択ではないだろうか。あと結構韻を踏んでいて気持ちよい。文学的というか語感の気持ちよさを重視しているのだろう。
普段こういった音楽を聴かないので新鮮。個人的にはとても良いと思います。なんとなーく寂しい感じがする3曲目が気に入ってます。気になっているメタラーはこっそり買ったら良いのではないでしょうか。
2015年にPoptableからリリースされた。
フロントに立つのはうてなゆきという女の子。
twitterでなにかと話題になりがちなアイドルユニット。結構ハードコアだったりメタルだったりに偏っているフォロワーさんが多い中で色々な方の口の端に登るのが気になり、視聴を経て購入。最近だとOzigiriさんがMixを公開したり(細胞粉砕Mixというタイトルに粉砕するのかよ〜と笑った)、元Megadethのマーティ・フリードマンさんが「細胞彼女は日本のNapalm Deathだ!」と称したとか。元々私はなんとなく良い大人がアイドルとかちょっとな…と思ってしまうくらい頭が古いのだが、群雄割拠のアイドル戦国自体の現在なら彼女(とどちらかというと制作サイド)たちが色々な付加価値を付けてくるのは必然で、所謂正統派がやらないようなことにも手をつけてくる、そうすると色物が出てくる中で面白い人たちが光りだす、というのは自然な流れかもしれない。例えばメタルと融合したBabymetalなんかは(私もライブを見に行ったが)日本にとどまらず人気を獲得している訳です。そう考えるといい加減「良い大人がアイドルとかwww」とか音楽好きですを自称する様な人種が言っている状況の方がサムイのかも知れませんね。(乗るのか批判するのかは自由ですが、さすがに黙殺するのは無理があるのかも。)
音楽としては電子音を主体としたメロディアスなポップソングという事になるのではなかろうか。ただ例えばPerfume(私何曲か持っているのです)みたいに洗練されたものではなくて、具体的に言うと音の数が圧倒的に細胞彼女の方が多い。Napalm Deathと称されるのも頷けるくらいメタルなどの激音を意識した作りになっている。ギターの様な(本当に生音なのかシンセ由来なのかは判別つかないので)がっつりした音の塊が入っている。(5曲目は分かりやすくてこれは完全に流行っぽいメタリックなリフに仕上がっている。)そしてドラムは速く、手数が多い。こちらもさすがに完全に生音風にするとそれはもうメタルにしかならないので(好きな人は好きだろうが間口は圧倒的に狭くなってしまう)、電子音と明らかに分かるものに調整されている。(それでも6曲目なんかはバスドラが非常に重たい。)ただ手数は多い訳で速さも相まって過激なブレイクコアに聴こえる。
モッシュパートみたいなのもあってライブでは盛り上がるかもしれない。(一体どんなになるのだろう)
勿論かわいい女子が歌う訳でデス声なんてもってのほかで速いパートはまくしたてる様な早口で言葉を繰り出してくる。ボコーダーなのかどうかも分からないが曲やパートによっては声にもエフェクトをかける。最大の特徴というわけでもないだろうが、どんなにはっちゃけてもサビだけはひたすらメロディアスでキラキラしていて可愛い。やっぱりアイドル的なカタルシスが必要なんだなと思う。ギャップがある分映えてくるというのもその感を強めている。
歌詞は難しい漢字なんかを織り交ぜながらちょっと可愛い感じ(それとも不思議な感じだろうか?)に仕上げている。これはあんまりアイドル調だと拒否反応を起こしてしまう(私のような)人もいるだろうから、結構よい選択ではないだろうか。あと結構韻を踏んでいて気持ちよい。文学的というか語感の気持ちよさを重視しているのだろう。
普段こういった音楽を聴かないので新鮮。個人的にはとても良いと思います。なんとなーく寂しい感じがする3曲目が気に入ってます。気になっているメタラーはこっそり買ったら良いのではないでしょうか。
ユッシ・エーズラ・オールスン/アルファベット・ハウス
デンマークの作家によるミステリ小説。
ユッシ・エーズラ・オールスンといえば北欧の優れたミステリにおくられるガラスの鍵賞を獲得し、映画化もされた「特捜部Q」シリーズが有名で日本でも6作目までが翻訳されている。かくいう私もファンで目下のところ出ているものはすべて読んでいる。
この本は作者のシリーズ物ではない単発もので、小説家としてのデビュー作。(小説を書く前にノンフィクションの本を少なくとも2冊発表していたそうだ。)1997年に発表された。作者の人気の隆盛に合わせて外国でも翻訳されるようになったとの事。
第二次世界大戦末期イギリス軍のパイロットであるジェイムズとブライアンは密命を帯びてドイツ領空にマスタング(アメリカ軍との共同作戦のためアメリカの戦闘機に乗る)で侵入する。そこで撃墜された絶体絶命の状況に追いつめられるが、砲弾ショックで精神に異常を来したドイツ軍のSSに成り代わる事で状況を乗り切ろうとする。しかし2人が搬送されたのは通称アルファベット・ハウスという孤立した病院施設。電撃治療や精神を鈍麻する薬、なによりも詐病が見つかれば即死刑、という過酷な状況だった。さらに同じように病気を装う悪徳将校らに目をつけられてしまう。2人は脱出出来るのか…
デビュー作だが舞台は本国デンマークではなく、まさかのナチもの。
二部構成になっていて、前半があらすじの通りの戦時中の話。それから後半がいわば本番という訳でミュンヘンオリンピックが開催される1972年で、からくもアルファベット・ハウスを脱出したブライアンが親友ジェイムズを探しにいくというもの。そう、ブライアンだけは地獄の様な環境から逃げる事が出来たのだ。ただし一人で。作者ユッシ・エーズラ・オールスンは後書きでこう書いている。「これは戦争小説ではない。『アルファベット・ハウス』は人間関係についての物語である。」
前半の描写の凄まじさは中々筆舌に尽くしがたく、戦況が悪くなって来たドイツに余裕のあるはずも無く、また技術・知識も今とは異なりまともな治療が行われているとは言いがたい。なにせ病気を装っている訳でばれたら死ぬ。おまけに悪徳将校たちは自分たちの保身のためブライアントジェイムズを執拗に殺そうとしてくる。精神を病んだ人を装うというとそんな無茶なと思うかもしれないが、主人公の2人は大真面目な訳で文字通り命を削ってほぼ1年そんな生活を続けていく訳だ。
ブライアンは辛くも脱出するわけだが、罪悪感に苛まされ続け、手を尽くして親友ジェイムズをさがすものの効果は上がらない。(脱出してすぐに終戦を迎えたため銃後の混乱でアルファベット・ハウスも闇に葬られ、探索が著しく困難になった。)とはいえ本国に自分が探しにいく勇気はなかったのだが、とある切っ掛けで28年ぶりに自分の過去と向き合うことになる。28年前は逃げ出した悪徳将校たちと今度は正面切って対決する事になる訳だ。作者はデビュー作から緊迫した相手側との応酬を書く事に長けている。流石という展開に手に汗握る訳だが、本筋はブライアンとジェイムズの関係な訳で。人間の内面の暗さを深く描いている「特捜部Q」シリーズを読んでいる人ならそんな彼らの再会がどんなものになるかはある程度想像がつくのではないだろうか。
一人で逃げたブライアンを批判できるのはジェイムズだけだろう(状況を鑑みれば仕方の無い事だという意味で)、ブライアンは当然親友に対して罪悪感があるわけだから、ある意味ジェイムズだけが許されるチャンスなわけだ。勿論彼自身を救出することがブライアンの目的である訳だけど、そこに許されたいという利己的な気持ちが介在しない事も無く、そのせめぎ合いが物語に苦みを与えて何とも味わい深いものにしている。
精神病等の閉鎖された空間内での肉体的にも精神的な不潔さ。そして高きから低きに流れる暴力の陰湿さ。萎縮し、対抗していく健全な精神がいかんなく書かれた前半と、苦みばしった後半と、なかなかよくも悪くも読み応えのある一冊になっている。ナチものが好きな人はユダヤ的な成分がそこまで入らないこの本は中々変わり種になると思う。デビュー作という事もあって「特捜部Q」よりはむきだし感がつよい印象。前半は描写が辛かったが脱出計画が動き出す中盤からは一気に読めた。
ラベル:
デンマーク,
ミステリ,
ユッシ・エーズラ・オールスン,
本
2016年1月2日土曜日
岸本佐知子編訳/居心地の悪い部屋
翻訳家でエッセイストでもある岸本佐知子さんがセレクト、訳した短編を集めたアンソロジー。岸本佐知子さん自体は知らなくて、多分翻訳も読んだ事が無いと思う。Amazonでお勧めされたのを気になって買ってみた次第。
なんといってもタイトルである。「居心地の悪い部屋」。インパクト大。このタイトルは岸本佐知子さんが付けたものだと思う。収録されている作品のテーマを端的に表現しており、なによりその言葉の語感の印象も強く良いタイトルだと思う。
全部で12の短編が収録されているのだが、敢えてカテゴライズすればホラーか幻想の分野だろうか。イマイチはっきりしないのはどの作品も独特の味があるのだ。恐怖や不安を扱っている作品が多いし、たしかに血も流れるのだがどばどばではないし、流血沙汰自体を書いている作品は無い(と思う。つまり恐怖小説ではあるが流血行減は手段にすぎないという書き方)。それでは幽霊かというと確かに超常現象を扱っている短編はあるし、なんとも常識(や科学)で説明のつかない物語もある。しかしはっきりと異形のものどもが出てくるかと言われるとそうでもない。ようするにどれもはっきりとしないところがある。はっきりとしないのだが、それは言葉にする事が難しいわけで怖くない訳では全くないのがその持ち味だ。(カテゴライズが困難であることはどれも凝った物語である事の証左であるかもしれない。)不条理と言っても良い。シュールとは少し違う。どれもある程度(8割かそれ以上くらいの印象だが)は非常に現実的である。ただそこから先が霧の中だ。物語によっては唐突だったり、それとも始めから少しだけずれている。とらえどころが無い。ただはっきりと説明できないし、不安である。そんな嫌らしい短編が集められている。ここでもう一度タイトルに戻る。「居心地の悪い部屋」である。たとえば「恐ろしい部屋」「血塗られた部屋」「呪いの部屋」「暴力と殺人の部屋」「悲しみと苦しみの部屋」なんかとは一線を画すのだ。なんか直接的ではないけど、不快である。可能ならば立ち去りたいのだが、何となく説明できないから言い出しにくい、そんな感情が「居心地の悪い」に集約されている。
ちょっとこれは問題がある書き方である事は自覚しているのだが(理由は後述)、ひょっとしたら女性の方が選定しているからこういうラインナップになったのかなと思った。というのもこの手のジャンルは大好きだが、この本は勿論ホラー・幻想のカテゴリに入るものの今まで読んだアンソロジーと一線を画す。思い返してみると私が読んだアンソロジーの編者は男性が多かったように思う。中村融さんや東雅夫さん、西崎憲さんなどなど。現実的なのに(ここが重要!)全体的にはっきりと言葉で表現しにくい、というのは女性っぽく思えた。男性はよくも悪くも分かりやすいのかも…と思うのだが、単に私の読書量が足りないので女性である岸本佐知子さんのこれ一冊で判断するのはいかにも早計であるな。じゃあ書くなという話なのだが、なにとぞご容赦ください。女性が編んだアンソロジー、もっと読みたいものです。
何とも言えない気分になって、そういうのは嫌いではないので楽しく読めた。もやもやしたのがOKってひとは是非どうぞ。
なんといってもタイトルである。「居心地の悪い部屋」。インパクト大。このタイトルは岸本佐知子さんが付けたものだと思う。収録されている作品のテーマを端的に表現しており、なによりその言葉の語感の印象も強く良いタイトルだと思う。
全部で12の短編が収録されているのだが、敢えてカテゴライズすればホラーか幻想の分野だろうか。イマイチはっきりしないのはどの作品も独特の味があるのだ。恐怖や不安を扱っている作品が多いし、たしかに血も流れるのだがどばどばではないし、流血沙汰自体を書いている作品は無い(と思う。つまり恐怖小説ではあるが流血行減は手段にすぎないという書き方)。それでは幽霊かというと確かに超常現象を扱っている短編はあるし、なんとも常識(や科学)で説明のつかない物語もある。しかしはっきりと異形のものどもが出てくるかと言われるとそうでもない。ようするにどれもはっきりとしないところがある。はっきりとしないのだが、それは言葉にする事が難しいわけで怖くない訳では全くないのがその持ち味だ。(カテゴライズが困難であることはどれも凝った物語である事の証左であるかもしれない。)不条理と言っても良い。シュールとは少し違う。どれもある程度(8割かそれ以上くらいの印象だが)は非常に現実的である。ただそこから先が霧の中だ。物語によっては唐突だったり、それとも始めから少しだけずれている。とらえどころが無い。ただはっきりと説明できないし、不安である。そんな嫌らしい短編が集められている。ここでもう一度タイトルに戻る。「居心地の悪い部屋」である。たとえば「恐ろしい部屋」「血塗られた部屋」「呪いの部屋」「暴力と殺人の部屋」「悲しみと苦しみの部屋」なんかとは一線を画すのだ。なんか直接的ではないけど、不快である。可能ならば立ち去りたいのだが、何となく説明できないから言い出しにくい、そんな感情が「居心地の悪い」に集約されている。
ちょっとこれは問題がある書き方である事は自覚しているのだが(理由は後述)、ひょっとしたら女性の方が選定しているからこういうラインナップになったのかなと思った。というのもこの手のジャンルは大好きだが、この本は勿論ホラー・幻想のカテゴリに入るものの今まで読んだアンソロジーと一線を画す。思い返してみると私が読んだアンソロジーの編者は男性が多かったように思う。中村融さんや東雅夫さん、西崎憲さんなどなど。現実的なのに(ここが重要!)全体的にはっきりと言葉で表現しにくい、というのは女性っぽく思えた。男性はよくも悪くも分かりやすいのかも…と思うのだが、単に私の読書量が足りないので女性である岸本佐知子さんのこれ一冊で判断するのはいかにも早計であるな。じゃあ書くなという話なのだが、なにとぞご容赦ください。女性が編んだアンソロジー、もっと読みたいものです。
何とも言えない気分になって、そういうのは嫌いではないので楽しく読めた。もやもやしたのがOKってひとは是非どうぞ。
2016年1月1日金曜日
submerse/Stay Home
イギリス出身で今は日本の東京に在住のトラックメイカーの2ndアルバム。
2015年にProject: Mooncircleからリリースされた。レーベルのBandcampからデジタル版を購入。界隈では有名な人なのだろうが私は全く知らなかった。Ghzのブログでメチクロさん(ドロヘドロの単行本の装丁などを手がけるクリエイターの方)が2015年のオススメとして紹介していたのを切っ掛けに購入。
まだ若い人で音楽に限らずアニメやゲームなどの日本の文化に触れて興味を持ち、来日したそうだ。
ジャンルとしてはダウンテンポなアンビエントトラックを作っている。ほぼほぼインストになっている。ジャケットが秀逸で楽曲を良く表現している。つまり都会的だが暗くて、キラキラはしているものの内省的で孤独(メチクロさんは端的にこの音楽性を表現している)である。アンビエントの要素はあるもののビートがしっかりしているので非常に取っ付きやすい。この構造からもエレクトロニカの要素を持ちつつ、ヒップホップ(インタビューを読むに子供の頃はヒップホップ漬けだったそうだ。)が土台になっている事が分かる。ビートは分かりやすくシンプルだが、下品にならずに程よいバランスで曲の土台を支えている。メロディはあくまでもフレーズに上手く閉じ込められている。同じように声の要素は入っているがボーカルというほどではない。エフェクトがかけられていて”誰でも無い感”(匿名性?)が徹底的に演出されるので、曲が導くイメージがあくまでも聞き手にゆだねられている印象でここがとても良いなあと。日本語の公共の乗り物のアナウンスなんかもサンプリングされている。(割と聴くよね、この類いの。やはり特徴的なのかな?)
学生の時に買ったCauralにちょっと似ていると思った。ゆっくりしていてでもキラキラしている要素がある。全体的に夜という感じで夜のドライブに良く合うかもしれない。(私は免許取得以来何年も車を運転していないのでちょっと試せないが。)
1曲も短めでアルバムを通しても7曲しか無いのですっと聴ける。個人的にはもう少し(跡2曲くらいは)聴けても良いかなという気持ち。
お洒落な音楽である事には間違いないだろうが、真摯な作りで万人が聴けると思う。オシャレと揶揄しないでまずは視聴してみてはいかがでしょうか。私は普段あまり馴染みも無いジャンルなのでバランスを取る意味でもとても気に入った次第。
2015年にProject: Mooncircleからリリースされた。レーベルのBandcampからデジタル版を購入。界隈では有名な人なのだろうが私は全く知らなかった。Ghzのブログでメチクロさん(ドロヘドロの単行本の装丁などを手がけるクリエイターの方)が2015年のオススメとして紹介していたのを切っ掛けに購入。
まだ若い人で音楽に限らずアニメやゲームなどの日本の文化に触れて興味を持ち、来日したそうだ。
ジャンルとしてはダウンテンポなアンビエントトラックを作っている。ほぼほぼインストになっている。ジャケットが秀逸で楽曲を良く表現している。つまり都会的だが暗くて、キラキラはしているものの内省的で孤独(メチクロさんは端的にこの音楽性を表現している)である。アンビエントの要素はあるもののビートがしっかりしているので非常に取っ付きやすい。この構造からもエレクトロニカの要素を持ちつつ、ヒップホップ(インタビューを読むに子供の頃はヒップホップ漬けだったそうだ。)が土台になっている事が分かる。ビートは分かりやすくシンプルだが、下品にならずに程よいバランスで曲の土台を支えている。メロディはあくまでもフレーズに上手く閉じ込められている。同じように声の要素は入っているがボーカルというほどではない。エフェクトがかけられていて”誰でも無い感”(匿名性?)が徹底的に演出されるので、曲が導くイメージがあくまでも聞き手にゆだねられている印象でここがとても良いなあと。日本語の公共の乗り物のアナウンスなんかもサンプリングされている。(割と聴くよね、この類いの。やはり特徴的なのかな?)
学生の時に買ったCauralにちょっと似ていると思った。ゆっくりしていてでもキラキラしている要素がある。全体的に夜という感じで夜のドライブに良く合うかもしれない。(私は免許取得以来何年も車を運転していないのでちょっと試せないが。)
1曲も短めでアルバムを通しても7曲しか無いのですっと聴ける。個人的にはもう少し(跡2曲くらいは)聴けても良いかなという気持ち。
お洒落な音楽である事には間違いないだろうが、真摯な作りで万人が聴けると思う。オシャレと揶揄しないでまずは視聴してみてはいかがでしょうか。私は普段あまり馴染みも無いジャンルなのでバランスを取る意味でもとても気に入った次第。
FAILURES/Decline and Fall
アメリカはニューヨークのハードコアバンドの2ndアルバム。
2014年にメンバーの運営するYouth Attack Recordsからリリースされた。
2006年に結成されたいわゆるスーパーグループでCharles BronsonやCancer Kidsらのメンバーが所属する。ボーカルのMark McCoy(この人がレーベルのオーナーでもある)は元Charles Bronsonのボーカルで私はこのバンドが大好き(完全に後追いでディスコグラフィー盤を一枚持っているきりだが…)なので、このバンドの音源にも手を出した次第。レーベルのBandcampからデジタル形式で購入。
全部で14曲収録されているがほとんどの曲が1分前後でアルバムと通して14分と34秒である。相当はやいハードコアということで前述のバンド名からしてパワーバイオレンスが想像される。なるほどその要素が無くはないけどどちらかというと超速いハードコアパンクという感じ。以前日本のバンドのどなたかがCharles Bronsonをこう称していたことがあってなるほどなと思ったんだけど、やはりそこに相通じるものがあります。Last.fmだとThrashcoreやカオティックハードコアのタグを付けられいてなんとなく音の方もイメージできるのではないかと。
ギターの音がとにかく変わっていてこの手のハードコアにしてはちょっと珍しい。分厚くざらついた音を出すバンドが多い中でこのバンドのギターサウンドはかなり生々しい。(実際にはエフェクターを使用しているのだと思うのだが)あまり加工していない音に聴こえる。音の厚みに関しても極端にブーストをかけている訳ではないと思う。弾き手の感情がダイレクトに表現される様な素直さがあって、コード感がすごくある。つまり複数の音(和音)が同時にならされている感。だから音色がとても豊かだし、尖っているというよりは広がりがある。ただしこれが激烈な速さで演奏される。おまけにかなり複雑に弾いて回る訳で、速い曲に合わせてリフがめまぐるしい。ここがカオティックと称される由縁だろうと思う。
ここにマッコイのまくしたてる様なボーカルが乗る。Charles Bronsonはボーカルの声質にやんちゃな愛嬌があったけど、こちらはもっとハードコアなボーカルもあってかよりシリアスに聴こえる。ただ持ち味は健在でやっぱり唯一無二。変則的な演奏に結構ぴったり合う。
せわしないという形容詞がぴったり合う。ちょっとThe Locustにも似ているかもしれない。ピコピコは勿論していないのだが。
ちなみにカッコいいジャケットはマッコイさんの手によるものだそうな。
Charles Bronson好きな人は是非。(多分もう聴いているだろうけど)
2014年にメンバーの運営するYouth Attack Recordsからリリースされた。
2006年に結成されたいわゆるスーパーグループでCharles BronsonやCancer Kidsらのメンバーが所属する。ボーカルのMark McCoy(この人がレーベルのオーナーでもある)は元Charles Bronsonのボーカルで私はこのバンドが大好き(完全に後追いでディスコグラフィー盤を一枚持っているきりだが…)なので、このバンドの音源にも手を出した次第。レーベルのBandcampからデジタル形式で購入。
全部で14曲収録されているがほとんどの曲が1分前後でアルバムと通して14分と34秒である。相当はやいハードコアということで前述のバンド名からしてパワーバイオレンスが想像される。なるほどその要素が無くはないけどどちらかというと超速いハードコアパンクという感じ。以前日本のバンドのどなたかがCharles Bronsonをこう称していたことがあってなるほどなと思ったんだけど、やはりそこに相通じるものがあります。Last.fmだとThrashcoreやカオティックハードコアのタグを付けられいてなんとなく音の方もイメージできるのではないかと。
ギターの音がとにかく変わっていてこの手のハードコアにしてはちょっと珍しい。分厚くざらついた音を出すバンドが多い中でこのバンドのギターサウンドはかなり生々しい。(実際にはエフェクターを使用しているのだと思うのだが)あまり加工していない音に聴こえる。音の厚みに関しても極端にブーストをかけている訳ではないと思う。弾き手の感情がダイレクトに表現される様な素直さがあって、コード感がすごくある。つまり複数の音(和音)が同時にならされている感。だから音色がとても豊かだし、尖っているというよりは広がりがある。ただしこれが激烈な速さで演奏される。おまけにかなり複雑に弾いて回る訳で、速い曲に合わせてリフがめまぐるしい。ここがカオティックと称される由縁だろうと思う。
ここにマッコイのまくしたてる様なボーカルが乗る。Charles Bronsonはボーカルの声質にやんちゃな愛嬌があったけど、こちらはもっとハードコアなボーカルもあってかよりシリアスに聴こえる。ただ持ち味は健在でやっぱり唯一無二。変則的な演奏に結構ぴったり合う。
せわしないという形容詞がぴったり合う。ちょっとThe Locustにも似ているかもしれない。ピコピコは勿論していないのだが。
ちなみにカッコいいジャケットはマッコイさんの手によるものだそうな。
Charles Bronson好きな人は是非。(多分もう聴いているだろうけど)
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