アメリカ合衆国はペンシルベニア州ベツレヘムのスラッジコア/グラインドコアバンドの2ndアルバム。2018年にHoly Roar Recordsからリリースされた。
Secret Cutterは2009年に結成された3人組のバンド、今までのアルバムとEPを1枚づつリリースしている。
ボーカルは専任、ベースがいないギターとドラムのトリオ編成なのだが、ギターの音がひたすら重たく、ベース不在の頼りなさが全くない。ドラムもプレイが多彩で手数も多い。スラッジコアといっても単に遅くすればOKという形から入るタイプではなく、余裕でツーバスも踏む。グラインドコア顔負けにバシバシスネアを叩きつけてくる。ギターもギターでフィードバックノイズも多めだが、思わせぶりな余韻や静謐さで賢しらぶるところは皆無で、ひたすら力、すなわちパワーで押しつぶしてくる。
ヴィンテージで煙たいドゥームロックというよりは、ニュースクール以降のグルーヴィ、つまりモッシーなハードコアをどっしり重たくしたかのよう。もっというとモッシュパートが気持ち良いなら、延々とモッシュパートを演奏したら良いんじゃない?という頭が悪いんだか良いんだかわからないような、邪悪な発想を音楽にしたかのような構成で、ひたすらグルーヴで攻め立ててきて、そしてそれをひたすら執拗に反復していく。ドラムが暴れる分、ギターは核となるリフがあってそれを調節していくようなミニマルさ。いわゆるテーマというやつなのだろうか。酩酊的だが、それ以上にとにかく音が暴力的だ。この手のジャンルの音からするとかなりソリッドで、ギターのとは分厚く背の高い壁のようだ。
ボーカルは声量のある高音金切り声という意味でSeven Sisters of Sleepにちょっと似ている。こちらの方が安定しているかな?とにかく力強い。ひたすら重たいバックの演奏に負けず、むしろ重たく沈み込むスラッジを、振り絞るように吐き出すスクリームでぐいぐい引っ張っていく。
前述のSSoSもEyehategodも、なんならElectric Wizardもそうだが、メタルもハードコアも遅くなると特有の「煙たさ」が醸し出されてくる。このバンドもその要素がないわけではないが、もっと筋肉質だ。(ここら辺は音の作り方も関係していると思う。)そういた意味では非常にハードコア的だ。ただ気持ちよく首を振っているとこれは儀式的だと気がつく。反復という手段で涅槃に至ろうとしているわけだ。それも念仏的な反復ではなく、抑揚をつけたリズムで。崇高で静謐なドグマというよりは、もっとプリミティブなリチュアル的で野蛮だ。肉体的でいようとすると、今度は非現実的になっていくのは非常に面白い。わたし的には結構ありそうでなかったタイプ11曲を28分にまとめる潔さも程よい。聴いている人の顔面に叩きつけるような攻撃的な作品。
ボーカルと演奏陣がしのぎを削りあっているような緊迫感があって、理想的な三角形ではないだろうか。非常に格好良い。こればっかり聴いている。全編落とし所みたいな無茶苦茶な出来なので暑い夏にはぴったり。
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