一旦下がった気温が再度上昇してまた天井をついたような酷暑の中秋葉原の音楽館に向かう。ここはそもそもスタジオらしいが、一つ下のフロアにはライブスペースがある。といってもあまり大きくないビルの人フロアだからとても小さいのだが。ただし全部ぶち抜きで開放感はある。
会場に着くとキャップにバンドT、短パンもしくはDickies(風)のワークパンツを身につけた客層。メタルのライブに行くと黒いという共通点はあるが服装自体は結構ばらついているイメージはあるけど、ハードコアだと服装自体結構統一感がある。私のようなオタク風の男性は浮くなー。Sonic Maniaいった時は落ち着かないなぁと思ったけど、かといってこういう場所でも自分のホームだ!という感じも全くしない。中年になって自分の居場所がどこにもないので悲しくなってくるけど、まあそういった鬱憤を今日は晴らすのだ、という気持ち。
UNCOVERING
1番手は最近結成されたバンド。すでに名のあるバンドの面々によって結成されたらしい。EPも早々にリリースして昨今の注目度が高かったのではなかろうか。ギター二本に専任ボーカルの5人組。
始まった瞬間にかっこよくてすぐに今日は来てよかったなという気持ちに。どっしりとしたメタリックなハードコア。ニュースクール・ハードコアをさらに一歩推し進めた感覚で、叙情派と共通点はあるもののよりマニアックで凶暴な印象。中速域でメタリックなリフをザクザク刻んでいき、テンポを落とす凶悪な低速パートを持ってくる。
歯切れよく刻んでいくギターは低音一辺倒ではなく、Akangelのような(つまりSlayer)単音リフも披露。とにかく全編攻撃的だが、同時にメロディアス。わかりやすいトレモロとかではなくてもっと無愛想なのだがとにかくメロい。ギターが良いのはビートが良いからなのだ。特にドラムはシンプルで堅実だが一音が重たい。このシンプルなビートに前述の情感たっぷりのツインギターが絡みついてくる。これが非常に良い。ここであえてドラムは実直に叩き続けることに終始しているのがハードコアだと個人的には思う。終わった後すぐに音源を買った。
STILL
続いてはSTILL。なんとドラマーとギタリストの一人がUNCOVERINGから続投。バンド界隈でのドラマー不足と、そもそも相当マニアックなジャンルなんだなと実感。なんとなく1枚7インチを持っているはずだが、すみませんあまり聴き込めてなくて初めてくらいの気持ちで臨む。編成はUNCOVERINGと同様専任ボーカルにツインギタリストの5人組。
始まってみると一番手とは全然違う。まず続投のギタリストの動きが全然違う。動きだからといってバカにしてはいけない。バンドというのはやはり全体で一つの雰囲気があってそれはもちろん中身とは不可分だし、バンドのことを手っ取り早く知ることができる貴重な手がかりだ。(だからライブを見るというのはバンドを知るにはとても良い機会だ。)客席に突っ込む勢いで暴れまわる。ドラマーも続投だが、リズムがもっと複雑で手数が多い。速度のチェンジももっとスパンが短くて回数も多い。頭蓋骨内に打ち込まれた小口径の銃弾のようにあちらこちら跳ね回るようなイメージ。とにかくめまぐるしい。こうかくとパワーバイオレンス見たく思えてしまうが、その要素はありつつももっとハードコアだ。やはりニュースクールを強烈に感じる。もっとメタリックで曲の構成も凝っている。ラストあたりでブラストも打っていたように思うけど、やはり基本的にはハードコアの速度でどっしり展開していたと思う。音源をちゃんと聞きなおそう。
Beneath the Horror
続いては急遽出演が決まったメキシコからの刺客。ツインボーカルの6人体制!全員ガッチリしていて目ためにも迫力がある。ドラマーの方のヒゲが特徴的で、ベーシストの方はイケメンでした。
メキシコのバンドというと結構わちゃっとした感じなのかと思いきやこの日一番音がクリアだったと思う。(ライブ本数を相当こなしているのだろう。)通常のシャウトにまくしたてるようなスペイン語が乗っかってくる。このコントラストが良い。ラップというよりはまくしてるという感が強くて、モダンに区切っていくハードコアでは良い意味で浮いていて唯一無二のアクセントになっていた。ギタリストは広いフレット上の音を全て使い尽くすような表現力で、ゴリゴリ低音で攻め立てるのではなく、メロディアスなトレモロなどで中音域から高音域までを幅広く用いる。長めの休符を効果的に使い、休符からの復帰はバッチリユニゾンしてくる。相当な練習量を感じさせる。表現力は豊かだがミクスチャー感は皆無で、落とし所は極めて凶悪だし、あくまでもハードコアの中でも技術力によってその表現に挑戦しているという印象。私を含めてなかなか予習する時間がない中での出演という状況の中で非常にアグレッシブなステージングだった。
BLINDSIDE
続いては柏のハードコアバンド。やはり5人組だが、ギタリストの一人がOtusのメンバー(Otusではベース担当)がヘルプとしてはいっていた。
ニュースクールなのだろうが、オールドスクールさすら感じるシンプルな突進力が魅力なバンドでこの日一番明快だった。とにかく高速と低速のメリハリがくっきりしている。やはりドラムが強靭で、良い感じに抜けが良いドラムはて数は多くないのだが、テンポチェンジの際はこのドラムがフィルイン(?)で軽快に速度をつないで行くようなイメージ。曲を回しているのがこのドラム。ギタリストの方もサイドでボーカルをとるのもわかりやすい。その代わり曲にメロディの要素がほとんどない。メンバーは全員にこやかだが曲に入ると近寄りがたいほどにおっかなく、このギャップが良い。途中でOtusのボーカリストの方が参加。ギタリストの方のマイクを突然奪うもので過激な客かと思ってびっくりした。
新曲だということで始まった曲は低速から始まり、途中で高速になる。普通とは逆のパターンなのだが、低速明けの高速がえらくかっこいい。低速が良い、という概念を覆されるほどに。この日一番フロアが湧いたバンドだろう。中央は危ないことになっていた。ラストはどうやら定番の曲らしく随所でシンガロングが発生して楽しかった。(曲を覚えないと。)
Otus
トリはOtus。この日唯一ギタリストが一人。ただしその代わりと言わんばかりにアンプをヘッドとキャビネットをそれぞれ3つ積み上げるスタイル。おそらくマスターとスレイブみたいに接続されているのだろうが、当然ヘッドが異なるので音は微妙に異なるわけで面白いなと思った。ベースの方もおそらく複数のアンプを使っている。なので音は壁みたいになっている。
ライブを改めてみてみるととても変わったバンドだ。この日一番異彩を放っていた。誤解を恐れずにいうならわかりにくいバンドなのだ。アプローチは様々でも出来上がった音・曲というのは比較的わかりやすいのがハードコアなのだが、このバンドは模糊としているところがある。音が分厚い分細部を捉えにくいというのもある。またミュートを使ってザクザク刻んで行くバンドが多い中、Otusはあえてアタックした後も音を引きずるように残して行く。音の連続性というか、音の終わりが捉えにくいのだ。そういうわけでノイズの成分も多い。音源だと割とかっちりしている印象があったのでこれは結構驚きだった。別にメタル的だというわけではない。明らかにハードコア的な曲なのだが、演奏の仕方が独特なのだ。ちなみにドラムが作り出すビートは明確だった。
MCはあるものの個人的にはたまに遭遇する「判られ」ることを拒否しているバンドの一つかも、と思ってワクワクした。別に(確かに無愛想だけど)態度が悪いわけでもなく、ステージ上で全てをさらけ出しているのだが、やけにフレンドリーというわけでもなく殺伐としているもので、みている側としてはどうしても惹かれてしまう。やはり格好良かった。
マーチがおしゃれで、BLINDSIDEのサコッシュと迷ったんだけどSTILLのT-シャツを購入。それからCOLD WORLDがcocteau twinsのカバーをしているというソノシートも買った。
休日の昼間っから轟音を浴びて楽しかった。ハードコアは単純に音と曲が凶暴で良い。感情がないわけではないが、陳腐なストーリーも不要だ!という感じで思い切りが良い。暴れるといってもただ腕や足を振り回すわけでもなくステップを踏む人などそれぞれの楽しみ方があるようだった。いい意味で地元感みたいなのが出ていて、笑顔が絶えない雰囲気。
有名なお蕎麦やさんでお昼を食べて帰宅。
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