2017年4月2日日曜日

Granule/AURORA

日本は東京のドゥーム/スラッジメタルバンドの1stアルバム。
2017年にBandcampでフリーダウンロード形式(NYPではなくフリー)でリリースされた。
2016年に解散したバンドBOMBORIのメンバーによって結成されたバンド。
Granuleというのは「顆粒」という意味らしい。聴いたことはないがBOMBORIの音源に同名の曲がある。

BOMBORI最終作となった3rd「we are cured, fuck you」の延長線上にある「今これをやるのかよ?」というくらいのオールドスクール・スラッジを展開している。ただ同じバンドではないわけで音の方にも結構変化が見られる。
ベースはGriefの系譜にあるようなひたすら低音に特化した、聴いているのが苦しいと言った趣のトーチャー・スラッジ。遅い。重たい。不穏なサンプリング。フィードバックノイズにまみれた一音をこれでもかというくらいに伸ばす、伸ばす。そこに金切り声のボーカルが乗る。それをだいたい10分越えでやるわけなので非常にとっつきにくいマニア向けの音楽になりそうなのだが、そのフォーマットの中でもある種のききやすさ、というより聴きどころか、絶壁におけるかすかな足がかりのようなものが設定されていて、オリジナリティに溢れたエクストリーム・ミュージックを展開している。
「we are cured, fuck you」ではEyehategodを思わせる疾走パートがあったが、今作でもはほぼその要素は生かされていない。明確にBOMBORIにけりをつけて新しいバンドを始める、という意思が感じられる。代わりに長い尺の中盤以降にワウを噛ませたサイケデリックなギターパートが大胆に導入されている。もともと地の音の数が多くないので、この組み合わせはかなり映える。殺伐とした漆黒の世界に異形の命の芽吹きが注ぎ込まれているようで、まさしくミュータントな生命力が付加されている。Griefなら「Dismal」の廃墟のアートワークなどが象徴するように概ね死と破壊に向かいがちなスラッジコア界隈では、Granuleのこのような蠢く生命の(暗い)躍動、というか蠢動を感じさせる楽曲はベクトルが逆というか、異質で非常に面白いのでは!と思う。そう言った感覚というのは他にも表れていて、長い尺の曲の他にイントロ、インタールード的な「Esoterica」、そしてアルバムのラストを飾る6分足らずの「Whale Song」。これらの曲に関してはヘヴィネスが抑制されており、かわりに空間系のエフェクトがかけられた模糊として奥行きのある風景である。女性ボーカルが導く「Whale Song」はソリッドなアコースティックギターと裏で響くアンビエントなドローンがあいまって絶滅した地球で生き残ったクジラが深海を一人でどこかに泳いでいくような、寂寞とした感じ。残響が想像力を掻き立てる音でそう言った意味で非常にクリエイティブだ。

Grief大好きなスラッジ・フリークなら迷わずだし、単に音の表現形式ではなくて感覚的にポスト系が好きな人も激音の向こう側にそんな精神を垣間見ることができるかもしれない。ぜひどうぞ。

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