2017年4月13日木曜日

East West Fast Blast Festival#14@新代田Fever

NFESTが来日するらしい。INFESTはアメリカ合衆国カリフォルニア州ヴァレンシアのハードコアバンドだ。1986年に結成され、いくつかの音源をリリースしたのち1991年に解散。パワーバイオレンスというジャンルに多大な影響を与えたバンドらしく、にわか丸出しの私だってその名前を知っているくらい。奇跡の再結成、そこからの奇跡の来日!ということだったのだが、正直「感涙!」とか言ったら嘘になってしまう。最近興味があるジャンルなので、というくらいの気持ちで行くことにした。(割と早いうちにチケットはソールドアウトになり、何だか申し訳ない気持ちもありました。)
ところがこのバンド、音源のほとんどが入手困難。disk union行った時に探してたりしたんだけどそもそも売ってない。youtubeですわーっと聞いただけの状態でライブに臨んだ。
East West Fast Blast FestivalはSLIGHT SLAPPERSの企画。新代田Feverは綺麗なライブハウスなのでパワーバイオレンス!というのはちょっと面白い。ライブハウス前が人だかりだし、入場は整理券順というあまりこんな音楽界隈ではちょっとないような光景でそれまた面白かった。最初っから客の入りは上々(前述の通りこの日はソールドアウト)。

SLIGHT SLAPPERS
一番手は1994年から活動している東京のパワーバイオレンスバンド。私は「Tomorrow Will The Sun Shine Again?」から入って何枚か最近の音源を持っている。
メロディックハードコア調の爽やかな曲の入りから一気に加速、というか爆発したように突っ走る様はパワーバイオレンス。低速パートを取り入れるパワーバイオレンスバンドが多い中、このバンドはほとんど高速で突っ切るファストコアスタイル。スラッシーというわけでもなく、曲の中に印象的なフレーズや、低速というよりは一時停止めいたストップをかけてくる変態性があり、曲の表情は超高速が勿体無く感じられるくらい豊かである。ボーカルのKUBOTAさんは眼鏡をしていて、動きが痙攣的に妙だ。カクカク動いたり、ビールをやたら吹き出したり(あごひげに泡がついてチャーミングでした)、感謝の気持ちを喋ろうとしたらカミカミになったりしていた。眼鏡が危ないぞ、と思っていたら満を辞してという形で中盤にはズレ出して最終的にはどこかに飛んで行ってしまった。(投げたのかも。)”バイオレンス”であっても笑顔が絶えないステージングで「うお〜」と思って見ていた(あとでこれに関しては気づきもあり)。音的にはうるさいはずなのだが、音の厚みのバランスが良くてそう言った意味で非常に聞きやすかったのだ、と気づいたのはだいぶあと。楽しかった。すでにご満悦。

Crucial Section
続いて同じく東京は三多摩のハードコアバンドCrucial Section。短髪、ハーパン、頭にはバンダナ、という出で立ちで何となく音が想像できる。厳ついやつである。スラッシーなハードコアでスケートスタイルというやつであろうか。何となく最近聞いたAgnostic Frontに似ているな(ハードコアの語彙(知識)が少ないせいもあると思うが)と思った。ただしオールドスクールなハードコアのがなりたてるパートをもっと早く、そしてリフをスラッシュで武装している。やはり見た目通りのいかつさ。そして男らしいシンガロング(というほどの長さはないのだが)が入る。ここら辺が絶妙でビートダウンほど速度が落ちるわけではないが、初めて見る人でも一緒に拳を振り上げることができる。前の方では完全に歌詞を歌う人もいて盛り上がっていた。
「危機感がある。」というMCは音楽からすると思ったより柔和であったが、しかし聞いているとなぜか背筋を伸ばしてしまうようなストイックさがあった。前のSLIGHT SLAPPERSと雰囲気が全く異なり、同じ盛り上がりでも空気というのはバンドがガラリと変えてしまえる。イベントの醍醐味ではないだろうか。

VIVISICK
続いてやはり日本は東京のVIVISICK。世界規模で活動するバンドで私は目下の最新アルバム「Nuked Identity」だけ持っている。
前の二つのバンドとは違う。もっと速度は遅いというか、遅くはないし早いのだけどもっとドタバタしている。コミカルというのではなくて、特に速さを追求して行くと削ぎ落として行くことが一つの美学になることも多いのだと思うのだけれど、このバンドはそこらへん全部落とさずそれで走っているような感じ。だから高い声で絶叫するボーカルから一転、サビとも取れるような長くてメロディアスなシンガロングが入ったりする。そしてこれが猛烈に楽しい。殺伐としたモッシュというのも良いのだろうけど、このバンドが演奏しているときは大抵フロアにいる人が笑顔でモッシュしていたのではなかろうか。ポップであることはともすると嫌われる土壌があるアンダーグラウンドのシーンでここまで温かく受け入れられるのは、一つは曲のクオリティが高いこと、そしてさらに感情的なことではあるまいか。「こいつ嘘くさいぞ」と思われたらしらける現場であそこまで盛り上がるのはそういうことなのではと思った。また見たい。

INFEST
続いてはアメリカからパワーバイオレンスINFEST。概ねフロアはパンパンだったがさすがに密度がすごい。メンバーがステージに現れるとガタイの良さにビビる。みんなでかい。なんせ86年に結成したのだから年は立つわけで、ドラムのメンバーはスタッフに手伝ってもらいながらセッティングする様を見て失礼千万にもお父さんがドラムを趣味で始めたみたいだなあと思ったりしてしまった。(ちなみにドラムも超すごかった。正確。)ボーカルのJoe Denunzioは何だかやばそうな雰囲気たっぷりだったが。
そんなJoeがバーカウンターでメンバーのお酒を購入してライブがスタート。パワーバイオレンスに爆発力があるなら、このバンドが音を出した瞬間にそれが100%の力でもって惹起した。フロアの盛り上がりがハンパない。モッシュするもの、拳を振り上げるもの。とっくに廃盤の音源なのにみんな聞き込んでいるのだろう。私はほぼ初めてINFESTの音を聞いたようなものだが、強烈なストップアンドゴーの形を成しながらも、ただ早いだけでなく曲は練られていて高速でばちばち唸るベース、そしてギターリフの表情豊かさ。twitterでINFESTはハードコアだ、という方が結構いらしたが、なるほど確かにハードコアの感情の豊かさがある。おそらくだがパワーバイオレンス黎明期、まだ形を成す前のそれは純粋にハードコアの延長線上にあって、それがが激化した一つの表現方式の原型だったのではないだろうか。中盤Joeはほぼフロアに降り、客ともみくちゃになり、客にマイクを持たせ、客の胸ぐらを掴み(おっかないのだけど剣呑な雰囲気ではない)、客の上をサーフし、客と抱き合い、とまさに縦横無尽に動き回っていた。彼の動きでフロアのそれが支配されていたと言っても過言ではないかも。ただ支配といってもフロアの雰囲気は常にポジティブだった。曲の凄まじさに圧倒された序盤と、そして私も汗まみれになった中盤以降は会場の雰囲気にと感動していた。あっという間にINFESTのライブは終わってしまった。

ハードコア、特に音楽的にはその極北というくらい激しいパワーバイオレンス、そのライブは何となくひたすら恐ろしいのではと思っていたが、この日”伝説”という形容詞がついてもおかしくないバンドのライブを見ると、その印象が違って、というか逆にみんなが楽しそうにしているのを見てとても衝撃的で、そして自分も楽しかった。思い返して見ると音はでかかったけど、別に耳も変にならなかった、そういえば。不思議。日本に来てもらうのはきっと大変だっただろうと思います。企画・主催の皆様ありがとうございました。

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