2015年12月20日日曜日

This Gift is a Curse/All Hail the Swinelord

スウェーデンはストックホルムのハードコアバンドの2ndアルバム。
2015年にSeason of MIstからリリースされた。
「この贈り物は呪いです」というバンド名が印象的なものの聴いて事無かったが、とあるブログでのレビューが気になりBandcampで購入した。
自らの音楽を「重たいタール」と称するが言い得て妙であり、重厚かつねっとりと悪意の粘性に富んでいる。「豚王万歳」というアルバムタイトルも皮肉が利いて薄ら笑いのシニカルさが感じ取れる。

その音楽性はハードコアを基調としたもの。昨今一部で隆盛を見せている所謂ブラッケンドな音楽性でもって分厚く金属質なギターが雪崩のように責め立ててくる。影響を受けたもの「聖書」を挙げてくるあたり(BandcampのタグにはDeathspell Omegaが入っている)、思想的にもブラックメタル感があり、また音の方にもその影響は色濃く感じる。一番は間断無いトレモロリフで音作りがやや生々しいのでコールド感はそこまで無いが、一見優しさ皆無の容赦ない曲の隠れたメロディメイカーだったりする。クワイアっぽいアウトロを曲によっては入れたりして、そこら辺もハードコアから一歩進んだブラッケンド感をアピール。
曲は中速以上のスピードだが、速度を下げたりフィードバックノイズも多めでスラッジの要素を大胆に取り入れている。バンドアンサンブルを基調としたストレートな音作りだが、弾きまくるリフと展開が大仰とは言わないにしても空間的には広がっていく様な音作り。曲によってはポストメタル風のインストを挟んだり模するので、密室っぽいカルトメタルというよりはストレートなハードコアを感じさせるもの。音の一つ一つも詰まっていて質量がある。トレモロリフも相まってとにかく曲の密度が異常に濃い。しかも霧のような茫洋なものというよりはもっと実体のあるもの。なるほど「タール」である。これは思わずにやりとした。
このバンドの魅力はそのぎゅっと詰まった演奏に加えて、なんといってもボーカルでハードコアっぽい男っぽい咆哮スタイルなんだが、ハードコアにしては邪悪すぎる。ブラックメタルのイーヴィルなものとも一線を画す。私的にはNeurosisのScott Kellyにちょっとだけ似ているように聴こえる。声量が迫力を生み出し、余裕の無い感じが言葉に真実みを与える。(彼らの歌詞が分からないのが悔しい。)
面白いのは演奏は結構緻密でずっしりしていて喧しい。もしボーカルが違う人だったらこのバンドの印象はもっと違ったものではないかなと思う。もっとポストメタルっぽくカッチリ聴こえたのではと思う。ボーカルはバンドの顔とは言うらしいが、確かにこの邪悪なバンドの悪さをボーカルが結構な割合でになっているのだなと。

悪意の暴風雨でその衝撃に身をのけぞってしまうのだが、それが不思議と楽しい。
タールの様な真っ黒い音楽に目がない人は是非どうぞ。非常にオススメ!

0 件のコメント:

コメントを投稿