2014年10月26日日曜日

Sombres Forêts/Royaume de Glace

カナダはケベック州のブラックメタルアーティストの2ndアルバム。
2008年にSepulchral Productionsからリリースされた。
私はこのバンド全然知らずで、この間紹介したSargeistのCDを買うときに折角だからといって一緒に注文したもので、いわばジャケ買いの様なものだった。

バンド名はフランス語で「暗い森」の意。メンバーはAnnatar(どうも指輪物語のサウロンの別名らしいが。)なる人一人のみ。この界隈では珍しくない一人で全部やるバンドである。(ライブをやるようで勿論そのときはサポートメンバーを迎えているようだ。)
ブラックメタルというとメタル界で言えばかなり先鋭的なジャンルではあれど、 今では様々なバリエーションがあるのはご周知の通り。このバンドはバンド名からも想像できるが、プリミティブブラックのコールドさを保ちつつ、ブラックメタルのもつ攻撃性よりも孤独感に代表される暗い叙情性を突き止めたもので、一つの指標となるのが森をキーワードにした自然指向であろうと思う。ブラックメタルで自然というとどうしてもカスカディアンブラックスタイルの大立物Wolves in the Throne Roomが思い浮かんでしまうが、このバンドも曲の尺は比較的長めなものの、もう少しロウなブラックメタルな音楽を演奏している。取っ付きやすいとは言わないが、あそこまで(たとえば新しいアルバム「Celestite」の用な)突き抜けちゃった感、ある種仙人の様な孤高感はない。

ドラムはややもったりしたもので、はじけるように叩かれる様はアクセントに響いて良い。
ギターは真性プリミティブブラックメタルな感じでとにかくガリガリざらざらしており音の像が曖昧である。それなりに音の厚みがあるが、ジリジリしていて全体像がはっきりしない感じでテクニックというよりは雰囲気重視(テクニックがないとか下手とかではないです。)プリミティブな感じ。疾走感のあるトレモロはほぼ無し。
ボーカルはブラックメタルの一つの典型とも言うべきイーヴィルなもの。如何にも阻害されたものの叫びと行った感じで尾を引くそれは恐ろしさというよりも、どことなく悲痛な響きがあって曲の雰囲気に良く馴染む。
たまに出てくるシンセ音も浮遊感のあるやや荘厳な感じだが、あくまでも霧のように使われており、バンドサウンドの邪魔にならない程度。良いバランスではないでしょうか。
なんといってもアコギの使い方が 絶妙で、つま弾かれるアルペジオは本来暖かみのあるもののはずなのにここまで寂寥とした孤独感を表現できるのはすごい。イントロやアウトロ派勿論のこと曲中での使い方も巧妙である。
概ね曲のスピードは中速だがその悲哀を帯びた曲調の所為でよりもったりと感じられる。曲の運びはあくまでも陰鬱でブラックメタルの爽快感を代表するようなお家芸トレモロリフ成分もほぼなしで、バンド名通りくらい閉塞感の中進んでいく。メロさはほぼギター担当でたまに飛び出るフレーズは全体的な閉塞感もあってとにかく心に刺さること。間の使い方が上手でボーカルとギターの語尾をのばすかニュアンスとでもいうか、たまに見せる伸びやかな演奏スタイルが気持ちよい。

という訳で大満足な一品。ブラックメタルに何を求め得るかという事もあるが、孤独感疎外感、そんな魅力をそこに感じたい人にはまさにうってつけのコールドなブラックメタル。オススメです。


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