2014年10月5日日曜日

Kryptic Minds/One of Us

イギリスはイングランド、エセックスのダブステップミュージシャンの1stアルバム。
2009年にSwamp81というレーベルからリリースされた。
Kryptic MindsはBrett BigdenとSimon Shreeveからなる2人組でアルバムは今作を含めて2作しかリリースしていないもののディスコグラフィーを見るとかなりの量のEPなどをレコードの形で世に出しているようだ。なんとなく現場よりのハードコアさを感じる。
私は勿論彼らのことなんて全く知らなかったのだが、「第9地区」の監督ニール・ブロムカンプによるSF映画「エリジウム」を見ていたところ(主演がマット・デイモンで突っ込みどころはあるものの概ね大変面白く見れた。監督の未来の風景を描く手腕は流石であった。)、とあるシーンで何とも陰鬱なダブい音楽が流れているものだから、すかさずスマホで曲名を調べて、その曲が収録されているこのアルバムをかったという訳だ。(ネットの技術は特に音楽にはすごい影響力があるなと改めて実感。)

ダブステップは2000年代前半にイギリスから火がついたジャンルであって、 本当に一時期市場をせっけんしてSkrillexのようなアーティストがスターダムに上り詰めたりしていたようだ。私はと言えば何回か視聴してみたものの今一乗り切れない感じではあったが、いかに新しいジャンルとはいえ一言ではくくりきれない懐の広さがあって、このブログでも紹介したことがあるが、Burialやら日本のDevilmanのようなアーティストは本当楽しく聴いている。このKryptic Mindsもどちらかといえばその傾倒に属するアーティストで鳴らす音はと言えばひたすら低音が強調された陰鬱なもので、音の数は多くなく、ミニマルな展開に装飾する様な要素がいくらか付加されたわりかしストイックなものである。まず聴いてみたところ同じくイギリスのNapalm DeathのドラマーMick HarrisのプロジェクトScornとの類似性であった。あそこまで寡黙ではなかったが。陰鬱で音数の少ない、音のデカい割にアンビエンスを多大に意識したその作風はかなり似通ったところがあると思う。
ダブ特有の湿り気のある重々しいバス、対応するように乾いた無骨なスネア、チキチキいうシンバル。根幹と鳴る要素はほぼこれらのみ。ほぼミニマルに構成されたビートがどっしり中心にあって、 曲によってそれらに装飾が施されていくイメージ。
装飾といっても過剰さはいっさいなく、ひたすら低音を意識したベース音、ドローンめいた唸る低音、ジリジリ言うノイズ、エフェクトのかけられた人の声のサンプリング、単発のブリープ音が霧に中から現れる幽霊のように現れては通り過ぎていく。全体的にエコーがかったというか、残響が強く意識された音作りで、太いビートとそれにのる幽玄的なノイズたちが曲を潜行していく様な怪しい雰囲気を作り出している。ミニマルでビートを追っていくうちに不思議な酩酊感に誘われるから不思議。深夜車に乗ってどこまでも続くトンネルに潜っていく様な、そんな格好よさがある。ちょっと都会派なところというか洗練された感じも漂う。

決して取っ付きにくい音楽ではないが、無骨なダブが好きな人は是非どうぞ。
こちらが映画「エリジウム」でも使用された曲。

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