2013年3月2日土曜日

The Bronx/The Bronx IV

アメリカはロサンジェルスのパンクバンドの4thアルバム。2013年発表。
ちなみにかの有名なブロンクス区があるのはニューヨークです。

まあ明るく楽しいパンクなんだけど、こういったジャンルはテクノ以上に詳しくない。かろうじてクラスととかハードコアは何枚か音源を持っているのだが~。
なぜ買ったの、という感じなんだけどネットでぼんやりyoutubeみてたら見つけたんだよね。おっ、と気になるけど、その時は動画を閉じちゃって。で、2,3日したらまた動画をみたりして。で、買っちゃうわけだ。インターネットっていいよな~って思うよね、こういう経験すると。
さて前置きが長くなってしまったけど、このバンド複雑でない曲構成、一緒に歌いたくなるようなキャッチーなメロディ、といわゆるパンク版であることに間違いはないのだけど、
演奏のハードさというか重厚さ(そこまでハードじゃあないですよ)と独特の歌いまわしは、どことなくハードロック(ここも詳しくないのではっきり説明できないのだけど、音がじゃっかりしたちょっと古いスタイルのロックです。)のにおいがして、それが明るい曲にちょっとした味わい深いえぐみのようなものを加えていて、これがまたなかなかどうしてかっこいいのだ。
そして声がいいな。やんちゃな声というのだろうか、お調子者なのだがどうにも憎めないやつで、楽しく歌っているときはもちろん楽しいし、ちょっとシリアスになっても「おまえ~」となるのは最初だけで、良く聴くとこっちに訴えかけてくる真面目さがある。 一言でいうといい声で、何よりバックの演奏とバンドのスタイルにばっちりあっている。
個人的には楽しい曲も好きで、たまに無性に聞きたくなる(そうして自分が楽しい曲をほとんど持っていないことにびっくりする)けど、アルバムを通して聴くと、なにやら不安になってきてしまう(それでバランスを取るため重苦し~いデスメタルとか聴くわけだ) のだけど、このバンドはアルバム通して楽しく聴けてしまう。歌詞カードがついていないので(私は歌詞カード読むのが好き、だからやっぱりデータよりCDとかレコードが好きなんだよね)わからないけど、結構シリアスなことも歌っているのじゃあないかなと思う。少なくとも楽しむだけじゃなくて、真面目に音楽に向き合っているように、私は感じたよ。
というわけでとってもいいアルバム。普段デスメタルとかばっかり聴いてる人にもお勧めだよ。

楽しいPV。


Paroxsihzem/Paroxsihzem

カナダのブラッケンドデスメタル、2012年発表1stアルバム。
2007年結成だから、結構ながいこと活動してからやっとこアルバムを出したのだね。
デスメタルとか結構こういうのあるよね。

さて、音はというと真っ黒メタルです。ブラッケンドデスメタルってこともあるんだけど、もっと言葉の通り真っ黒。黒い絵の具でデスメタルというキャンバスに絵を描いてみたよ、という感じ。眺めてみると、あれ真っ黒で一見したところ何書いてあるのかすらわからない。まあさらに例えるときっと抽象画だからはっきりとした主題があるわけじゃないんだけど。
音のほうはというとスローなパートを織り交ぜつつも基本は結構速めのメタルで、音の密度も高め。
音像は結構はっきりとしているのだけど、全体的に執拗に低音でまとめあげられているので、もはや真っ黒い音の塊。ボーカルはとにかく低く、這うような低音グロウルスタイルですごみ十分。
ちょっと全体的に前の投稿した「Antediluvian」に似ているけどこちらのほうが乱暴で直接的な印象です。いい意味でアートっぽいところが希薄で、ストレートに殴りに来るタイプですね。

ジャケットからして黒い。まさに黒一色メタル。聴けば聴くほど味が出るようなタイプでおすすめ~。

Ital Tek/NEBULA DANCE

イギリスのAlan Mysonさんのプロジェクト。
2012年にPlanet Muからリリースされた3rdアルバム。
昔はダブステップやっていたらしいが、このアルバムを聴く限りあまりダブステップ感はないですね。
discogsでジャンルを見ると、「Ghetto, Glitch, IDM」と書いてあります。このジャンルに明るくないのでGhetto?Glitch?なんのことやらわかりませんが、IDMというと昔Aphex twinとかその周辺を聴いていたことがあるのでしっくりきます。IDMは個人的な認識しかないですけど、踊りやすさよりも曲としての完成度が重視されているような作風で(もちろん中で聴けば一番気持ちいいのだろうけど)クラブの外でも気持ち良く聴けるテクノです。
ドリルンベースとかではもちろんないのですけど、比較的動きの激しいビートに冷たいメロディが乗ってきます。もちろん歌ものほどメロディが強調されておらず、多分にミニマルです。
全体的に派手な印象はないのですけど、私のテクノに求めるかっこよさがふんだんに含まれています。私テクノはあまり聴かないのですけど、 テクノの好きなところは基本無機質な音のみを使って構成されているのに、曲全体としてとらえると感情的になるところです。単にじゃあ抒情的なメロディが乗ればいいんじゃねーか、ということにもなるんですけど、そっちが主張しすぎるとゲームのBGMみたくなっちゃって、それはもう別ジャンルというか、変な話ちゃんととっつきにくさを残しておいてくれよと。金属的な冷たさ、機械の唸りとか、突発的な動作に伴う電子音、極端に言えばいっぱい機械を置いておいたら、それらの発する音で偶然曲ができました、みたいな。要するにバランスの問題かもしれませんが、このアルバムはそういった意味で素晴らしいバランスの上に成り立った良質なテクノミュージックであることにもはや疑いはありません。


2013年2月23日土曜日

Gaza/No Absolutes in Human Suffering


始めにいってしまうとこのアルバム、買って聴いてください。
2004年結成のアメリカユタ州はソルトレイクシティのグラインドコアバンド、2012年発表3rdアルバム。

このバンドのアルバムはすべて持っているけど、1st「I Don't Care Where I Go When I Die」に出会ったときは衝撃だった。「死んだらどこに行こうが知ったこっちゃねえ」という破滅的に冒涜的なこのタイトル。壁にぶつかっても容赦なく激走する狂犬病を患った犬のようなグラインドコアなのだが、急にすべてを投げ出したようなスラッジパートに沈み込んだりする。いわば躁うつ病を患ったノイズコアで音楽性はちょっと違うがToday is the Day(ちなみにこちらも私は大好き)に通じる陰鬱さがある。ジャケット通り真っ黒であった。なかでも「Hospital Fat Bags」という曲は阿呆ほど聴きまくった。


その後2009年に2nd「He Is Never Coming Back」をリリース。
このアルバム決して悪くはないのだが、妙に整合性が取れてしまっており、曲のクオリティは高いのだけど、1stの異常なテンションが少なからず失われている感じが個人的にはした。聴きなおしてみると録音状態が少しおとなしいのかなあ、という気もする。

そしてこの3rdアルバム 「No Absolutes in Human Suffering」である。
あまり期待せずに買ったが、これがもう、これがもう大当たりである。
1stのぐちゃぐちゃ感が5割増しで戻ってきた!!カオスである!!こりゃあもう騒音である!!
爆音だが、次の瞬間にはどこに行っているのか全くわからない、予想がつかない。
このバンドの特徴的なこじるようなギターリフ、もはや打楽器かというほど暴力的である。
そしてボーカル、これはもう咆哮である、野獣である。誰にでも噛みつく病んだ狂犬だ。
そしてまた沈み込むようなスラッジパート。
ひょっとしたらこのバンドなにかから逃げているのかもしれない。こっちに向かっているのかと思ったら実は死に物狂いで逃げているのかもしれない。そうして巨大な影についに捕まってしまうのかもしれない。陰惨で狂暴なのだが、とにかくそのようなどうしようもない暗闇を抱えているような印象がある。どうしようもない、諦観に満ち溢れた、コールタールのような粘度の高い闇に取りつかれたような悲しさや寂しさといったらない。こんな音楽本当にあまりない。
「Mostly Hair And Bones Now」(なんとも恐ろしげなタイトルだ、死体なのか?)からジェットコースタのようにはじまり、最後「Routine And Then Death」(これまた悲哀に富んだタイトルだ)はじっくり地獄に着陸するようだ。
素晴らしいとしか言いようがない。
最後に繰り返すが、このアルバム是非買って聴いてみてください。
本当にお勧めです。

2013年2月17日日曜日

チャイナ・ミエヴィル/都市と都市


イギリスの作家チャイナ・ミエヴィルさんの2009年発表の、の、SF?け、警察小説?げ、幻想小説?
ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞、ローカス賞、クラーク賞、英国SF協会賞というタイトルを取りまくり、日本だと2013年版このミステリーがすごいの海外編で堂々7位という、読む前からしてこのふてぶてしさである。格式高いぜ、うかつに手に取るんじゃねえぜ、感すら漂う大作です。
チャイナさんは以前「ジェイクを探して」という不思議な短編集を読んだことがあって大胆な筆致なのだが、全体的にうすぼんやりとした恐怖小説だなという印象でした。
エイヤとばかりに手に取ったこの「都市と都市」、これが結構厄介。

ヨーロッパの国「ベジェル」と「ウル・コーマ」。隣り合った2つの国家、その領土は部分的に互いに浸食しあいモザイク状に組み合わさっている。完全にどちらかの領土である「トータル」、2国間で共有している領土を「クロスハッチ」とする。片方の国に所属している市民は、もう片方の国に所属する、人、もの、出来事は一切認知しないという大前提があり、それを破った場合はどちらの国に所属する国民でも、どちらの国にも属さない第3の組織により裁かれることになる。
「ベジェル」の警察ティアドール・ボルルは自国で発生した殺人事件を捜査するうちに2つの国と第
3の組織の過去と謎に肉薄することになっていく。

 というお話。
よくわからんな、という感じでしょう。 まずこの特殊な状況を把握しなくてはなりません。
隣り合った2つの国ですが、重なり合っています。ある施設を通って越境することで隣の国に行けますが、施設を境にはっきり国境があって左が「ベジェル」で右が「ウル・コーマ」ってわけではないのです。越境行為は儀式みたいなもので、実際は隣の国に行こうと思えばすぐに行けます。それこそ2歩とか踏み出すと行けるレベル。重なってますので。ただし施設を通らないと、違法です。
さらにどちらかに所属している市民(正規の手順で越境していれば自国でなくてもOK)は、もう片方の国の事柄が見えません。向こうの人がいても見えません。クロスハッチでは向こうの車も同じ道路を走っているはずですが存在しません。建物もどんなに大きくても他方のものならば見えません。
無理じゃん!そんなの小説だからと言って納得できない!!
そうです。無理です。
この小説がなぜ面白いのか、それは無理を無理じゃない風にして強引に描き切っているのではなく、無理が原因になって引き起こされる歪みを描いているからです。
じゃあどうやって「見えない」の?
簡単です。実は見えないんじゃなくて、見えないことにしてみなかったことにしているのですね。
もちろん生まれた時から訓練しているのでどちらの国民も「まったく見えないよ」といって生活しているのですが、例えばクロスハッチにいるとき、前から歩いてくる人がいます。服装や歩き方を「見」ます。(ここでもう矛盾しているわけです。)一瞬で判断!同じ国に所属している人ならいます。「あ、あっちの奴!」となったら見ないようにするのです。面倒くさいでしょう。いやいやいや言いたくなる気持ちもわかります。繰り返しになりますが、実際こんなこと相当難しいので変なことが起きるわけです。そしてその奇妙さを見事に小説にしているのです。

無理!って限界をひょいって越えられるところに、私は読書のだいご味の一つがあるなと思っています。それはとてもSF的だし、この小説の「ただそうしようと思ってそうなった」(ちょっとここがうまく言葉にできない…)という説得力があって作られた世界は私たちの日常のちょっと先にあるような現実感があります。大きな歪みと矛盾を抱えた都市はそれだけで物語です。よくこの小説は都市が主人公といわれますが、なるほどその通りです。

かなーりややこしい小説です。おまけに意識して説明を省いて書かれている感があります。しかし読む進めて、この都市と都市に横たわる事情が見えてくると、もうページをめくる手が止まりません。気になった方は是非手に取ってください。おすすめです!

Hypomanie/Calm Down, You Weren't Set on Fire

前回に引き続きオランダのポストブラック、2012年発表3rdアルバムです。
ジャケットが有機的になりました。

基本的には前作の流れをくむ哀愁系ポストブラックです。
音の種類が豊富になった印象で、前回はちょっと閉じられた世界という感じで音も少し地味目でした。今作は明るくなったというのではないですが、前作に比べると世界が広がって聴きやすくなったと思います。シンセの音が結構前に出てきています。
一見クールなS.さんですが、今作でも内に秘めた激情家っぷりをいかんなく発揮。
静かに始まり、ある程度ミニマルに進み、音が次第に追加されていき、クライマックスに突入。乱打されるドラム、加速するトレモロリフ、相変わらず健在。
決して泣かしに来ているようなあざとさはないのですが、相変わらず訴えかけ度が半端ネエ。音を一つずつ見ると結構冷たく無機質だったりするんですが、曲としてまとまるとビシビシ突き刺さります。どちらかというと暗く陰鬱なんですが、温かさすら感じさせるS.さんならではなの優しさに満ち溢れたアルバム。
おすすめです。

2013年2月16日土曜日

Hypomanie/A City in Mono


オランダのS.さんなるひとによるブラックメタル/シューゲイザープロジェクトの2ndアルバム。
2011年発表。
ジャケットがかっこいいなあと思っていたのですが、ゼロ次元さんに入荷されていたので、ここぞとばかりに購入しました。

内容はというと全編インストのポストブラックというやつだろうか。
艶っぽいベース、回転の良い(結構手数が多いというか)ドラム。かすみがかった雰囲気のキーボード。そしてギターはシューゲイザーっぽいノイジーな音が売りなんだろうけど、乾いたアルペジオもあるし、ノイジーさも高音が強調されていたり、じりじりしていたりと芸が細かい。

なんといっても展開が素晴らしく、しずかにゆっくり始まる前半、突然ドラムが乱打され、ノイジーな(うるさいわけではない)トレモロリフが加速する。シューゲイザー色強めのポストブラックというとここ最近かなりの隆盛を見せるジャンルで、はいはいお洒落お洒落というバンドも少なくないのだけれど、このS.さん、クールでシャレオツに見えて実はアッツい激情家であることはもはや疑いなし。いったん火がつくともうトレモロリフの加速が止まらない止まらない。暗いのだがどこかしらノスタルジーを感じさせる美しいトレモロリフにただただ涙が止まりません。

全5曲でどの曲も捨て曲なしでかっこいいのだが、特に最後の2曲の破壊力が半端ない。
「A City in Mono」アルバムタイトルにもなってる9分弱の曲で、静かに始まり徐々に音が加わっていく感じ。中盤で加速して、いったんブレイク、再加速で一気にクライマックスに流れ込む。
「A City in Stereo」ラストを飾る10分20秒。アンビエントパートを挟んでの後半でもう滂沱の落涙。こんなに切ないのに、こんなに熱い展開があるだろうか。