カナダはノバスコシア州(調べてみるとだいぶ端っこの方で、ほぼ島に見える半島)のハリファックスのスクリーモバンドの1stアルバム。
2017年に自主リリースされた。
女性ボーカルの五人組のバンド。バンド名は「脆い手」という意味だろうか。なんだか意味深だ。(Dead Kennedysのアルバムのジャケットが思い返される。)
全10曲でランニングタイムは15分。
激しく速い音楽だが、ファストコアでもグラインドコアでもパワーバイオレンスでも無いのだ。エモなのだ。割としょっぱなからクライマックス感出してくるのでエクストリームな感想を即座に持ってしまいがちだ。それは彼らの作戦で、別にそれにハマるのも気持ちが良いから問題ないのだが、何回か繰り返して聞くと彼らがスクリー(エ)モバンドだということがわかる。女性ボーカルはほとんど叫んでいるが、叫んでいないパートも、ちょっとはある。そして曲が練られている。リフレインがこれでもかというくらい削られているので、圧倒的な瞬間風速的なイメージがあるが、例えば劇速でブラストをぶちかまして拍の頭で叫ぶ、というスタイルとは違う。これを持ってして歌っているというのはなかなか断言してしまって良いかわからないのだが、バックトラック、つまり演奏を聴けばちゃんと曲になっていることがわかる。だいぶ複雑だ。(前述の通り繰り返しがあまりないので掴みにくいというのもある。)大抵非常に短いが、この手のジャンルとは切っても切れないアンビエントなアルペジオ、滑るように展開していくメロディアスなトレモロリフ。静寂と轟音を同居させたダイナミズムがバンドアンサンブルの限界(つまり余計な音は使わない)に挑戦するかのように短い曲の中に詰め込まれている。だから単に「ブチギレフィーメール・ハードコア」といってしまうのは乱暴。
不安定に揺れる心をそのまま曲にしたというのはいかにも混沌としている。ただ不安定に直線を軸に軌道を描くのではなく、行き当たりばったり猪突猛進を繰り返していくような趣があって、それが不安定なのだ。それこそが不安定といっても良い。軌道が読みにくいのが、混沌としているし、聴いているものを混乱させる。Oathbreakerに似ているところがあるが、あそこまで混沌の元となる感情にしても非常に整然とわかりやすく並べるあちらと比べると、こちらの方が整合性がない。個人的に面白いのは整合性がない感じを大抵のバンドはヘヴィネスで表現しようとするが、このバンドの場合は割ときちんとエモで表現しているところ。結果的にわかりやすさは失われているわけだけど、そんなこと知ったことかという態度が非常に格好良いのだ。こういう比喩的な表現は良い。この時比喩というのは直接それとは言わないで、何かを表現することで、本でも音楽でもそれが醍醐味じゃないかと思っている節がある、自分には。
尋常じゃない感じは日本の激情に通じるところがあるけど、こちらはハイテンションの裏側はきちんとエモ(バイオレンス)の伝統踏んでいるのが差異だろうか。聴いてて保守的と全く感じさせないのはすごいところ。
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