日本の東京を活動拠点とするハードコアバンドの1stアルバム。
2018年にTill Your Death Recordsからリリースされた。
weeprayは2009年に結成されたバンドでメンバーチェンジを経て今は4人体制。過去にデモを2つリリースしているが私は聞いたことがなく、音源より先にライブを何回か見たことがある。全員黒装束に身を包み、持ち込みのライトを使う凝ったステージングだった。
「激情」というジャンルは結構日本独自のものでないかと思ってきた。純粋にハードコアの一つの発展系としてのエモ、エモバイオレンスが日本に持ち込まれ、そして時代を経ることでこの狭い島国で独特の形に進化しているのではと思う。私はisolateという日本のバンドが好きで、これもハードコアが悩みすぎた上によろしくない方向に発展してたいへんどうかしている。isolateは音楽的にはブラックメタルに多く影響を受けているが、一方でweeprayはそれとはまたちょっと違う。
ポエトリー・リーディング、激しいかと思えば一転して爪弾かれるアルペジオが目を引くアンビエントな展開に落ち込んでいく曲のなかの起伏など、「激情」の伝統を抑えつつ、独自の世界観を構築している。メンバーがハードコア、デスメタルなど様々なバンドで活動していることも関係があるのだろう。たとえば表題作「楽園」はノイズ・アーティストLeecherとのコラボ作で、こちらではフィールドレコーディングされた雑踏の上にハーシュノイズと、ノイズに溶けたボーカルがフィーチャーされており、バンドサウンドは一切使われていない。
その他の曲で使われているメロディアスなトレモロフレーズなどはブラックメタルへの接近を思わせる。ここ数年であっという間に使い古された感もあるブラッケンドを彷彿とさせるが、メロディやともすれば直接的な華麗さに中指を立てるようにざっくりとして無愛想なメタル/ハードコアの要素が強い。面白いのは初めからバッキバキの強面からスタートしていないのだ。前述の激情の要素もブラッケンドの要素もある。ただこのバンドはそれらの(様式美化された)わかりやすさとナイーブさをごついメタル/ハードコアの要素で叩き潰すかのようである。いわば曲の中に相反する要素があって、なるほど一直線でわかりやすい音楽ではないが、その相克がまた非常にややこしくて良いのである。isolateだとボーカルVS演奏陣という趣だったが、weeprayはメンバー全部で曲の中で相反する要素を作り出してぶつけ合っているようなイメージ。振れ幅の大きさがこの手のジャンルの売りだが、不安になるアルペジオとミュートで無理やり止めるみたいなハードコア暴力的ぶんまわしリフが同居しているのはちょっとなかなかないのだろうか。ぶつかりあう感情の渦巻きはしかし外に解放されずにひたすら内向的であり、総じて不安である。どこにも同着しない不穏さ、暗さ、陰鬱さ、悲痛さがある。自分の中が地獄なら楽園というのは他者のことかと思ったが、そこに期待をかけてる感じがしない音楽性なのだよな…。
歌詞は全編日本語だが漢字が多めで難解。しかし滲んだ青(背景もよく見ると真っ白ではない薄いクリーム色なのが良い)が美しいアートワークを見れば(例えば骸骨が山積みにされて悪魔が居座る真っ黒いジャケットとは違い)これらの歌が日常のことを歌っているということがわかる。楽園なんて方便や嘘なのだろうか。
捻じ曲げたような異様な姿に思わず顔をしかめてしまうかもしれないが、こうならざるをえない自意識というのも少しはわかるような気がする。このややこしさが私は好きですね。ちなみに流通は500枚のみで絶対に追加プレスはないそうなので、気になる人は早めにゲットでどうぞ。こういう音源の常でまだ大丈夫だろって思っているうちに気がつくともはやどこの店頭にもないのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿