2018年5月5日土曜日

Will Haven/Muerte

アメリカ合衆国はカリフォルニア州サクラメントのハードコアバンドの6枚目のアルバム。
2018年にMinus Head Recordsからリリースされた。
同郷DeftonesのChinoが出ているMVで名前を知ったバンド。今作でもDeftonesのギタリストStephenがゲストに参加している。DeftonesはニューメタルバンドだがこのWill Havenはいわゆるニューメタルというジャンルには共通点があっても、そこにカテゴライズされることはあまりないのではないか。ハードコアというジャンルで語られることがあるが、なんとも言えない独特の音を出している。自らの音楽性をしてノイズ・メタルと称している。アルバムタイトルはスペイン語で「死」の意味。

基本的には前作「Voir Dire」(こちらは予審尋問という意味)の作風を踏襲する形。分厚い音で鳴らすハードコア/メタルコアなのだがニュースクールとは一線を画す。タフで筋肉質というよりは暗くて鬱屈している。ただしボーカルはほぼ(6曲目はYOBのボーカリストがゲストとしてあの独特な声でメロディのある歌を披露する。)叫びっぱなしで、かと言ってギターリフがメロディアスなわけでもない。暗いハードコアという感じでリフが独特。あまりミュートを多用しないのでいわゆるモッシーな仕上がりではなく、垂れ流しているような気怠さ、倦怠感に満ちいている。かといってドゥームのようにひたすら遅く遅くというわけではない。雰囲気すら漂う冷徹で重たいリフを、いわばノイズのようにぶちまけることでその音楽性の土台を作っている。この迫力はあるがぼんやりとしたところのある存在感のある音がWill Havenの音を独特なものにしていて、このやや曖昧と言っていいほどの巨体に、クリーンな単音リフ、コード感のある生々しいや時にインダストリアルにすら聞こえる金属質なギター(これはちょっとニュースクールの要素があると思う。)を重ねていく。またわかりやすくも、踊り(暴れ)やすくもないが、そこはハードコアというわけでリズムは結構かっちりしている。この相克が黄昏の宵闇のようなどっち付かずの、重苦しいがかといって弛緩しきっていない緊張感のある風景を描き出す。
展開はあるもののビートダウンなどの”落とし”はやらない、クリーンボーカルはいれないがかといってブラッケンドのようなわかりやすい小技を導入してメロディを補填するわけでもない。暗くて陰鬱だがポスト系のような荘厳な美麗さは取り入れない。はやりのわかりやすさは一切使わないバンドだが、それでも曲をコンパクトに纏めること、メタル化しないこと(過剰な装飾や物語性がない)でハードコアの範疇にとどまりつつ、オリジナリティのある音を鳴らしている。グルーミィであるという点ではなるほどDeftonesと共通項はあるなと思う。

独特の美意識で構成されたハードコア。退廃的な雰囲気すら漂うが、締めるところはきっちり締めてハードコアになっているからすごいなと思う。

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