日本のレコードショップ/レーベルのGHz監修のジャングルのコンピレーション。
2016年にGHzからリリースされた。
GHz/MHz界隈はもともとブレイクコア色強目ということで注目していたのだが、漫画「ドロヘドロ」のサントラをリリースしたり(内容も大変よろしかった)と色々面白いことをやっている。そんなレーベルのコンピレーションなら絶対良いはずだろう、という気持ちで購入。まずは何と言ってもインパクトのあるジャケットに目がいってしまう。
収録曲は以下の通り。(レーベルより)
1. FFF / Junglist (2015 Rework)
2. Stazma The Junglechrist / Metalworker
3. Bizzy B / CALLING ALL THE AMEN (Bizzy B REVAMP FEAT MULTIPLEX MC)
4. madmaid / hollow in the jungle
5. FFF / Torturing Soundbwoy (Bizzy B Remix)
6. Amenbrother(DJ DON&Kekke) / Champ Road
7. Dave Skywalker / Saxon Street
知っているアーティストは辛うじてFFFのみ。
私はAphex Twinからドラムンベース/ブレイクコアに入門。学生時代は日本のRomzあたりをほんのちょっと聴いていた。ブレイクコアというのはラガに接近しているところがあって、たとえば前述のAphexなんかはあまりない(多作だから私が知らないだけという可能性は大)んだけど、Kid606とか、Bong-Raなんかは結構曲中にラガの要素をぶち込んでくるし、ブレイクコアのコンピレーション買うと必ずそのうちの何曲かはラガの要素が入っていた。私は当時この手の要素が苦手でラガいレゲエ特有の歌声が聞こえてくると「う〜む」なんて思っていたものだ。私は徹底的なマシーンの非常性と攻撃性をブレイクコアに求めていたのかもしれない。
そんなわけでジャングル再入門となるのがこのCDといってもいいかも。
どうもビートを倍速に、ベースを半分の速度にといった変則的な速度(どうも再生速度の間違いから生まれたジャンルだとか)で鳴らすというのがルールのようだが、恐らくここから実際多様な音色で発展していったジャンルなのだろう。
聴いてみるとまずはやはりそのビートの手数の多さ、速度の早さに驚く。ほぼブレイクコアで曲名にも入っている通り特にAmen Breakの登場頻度が異常に高い。あの有名なフレーズはきっと誰もが聴いたことがあると思うが、やはりテンションが上がる。分解され再構築された、または譜面に敬意を払いつつ再入力されたそれらは元のフレーズを残しつつどれも思い思いに強烈にブーストされている。めまぐるしいブレイクビートと対照的にベースは確かにピッチを落としたかように(実際にサンプリングしたものを落として使っているのかも)間延びした低音が低音部を重たい垂れ幕のように覆っている。またはアシッドのビヨビヨ分をいくらか漂白したようなブワンブワンしたもので、これがうねるようなリズム感を演出している。昔買ったサイケアウツを思い出した。
そこに軽快でプリミティブ、時にチープですらあるギター、ピアノが裏打ちのリズムも印象的にサンプリングされ、チョップされて乗ってくる。鳥の鳴き声のような高音や、モダンなダンスホールレゲエを彷彿とさせるピュンピュンした音も飛び出してくる。ここら辺がジャングル、まさに密林といった感じで、鬱蒼とした緑色のビートの森の中にけばけばしい色をした鳥類や珍獣のような異音が飛び出してくる。この唐突さと、そしてそれらの異物を違和感なく包み込む懐の深い放埓さがジャングルの面白みなのかもしれない。
そしてラガいレゲエボーカル。独特のしゃがれ声、力が入っているようで抜けているテンションはしかし確実にこちらのテンションを上げてくるから不思議である。こちらも程よくピッチが変えられていてマシーンメイドさが垣間見得る。さながら電子化されたサイボーグ・グルといった感じで怪しいことこの上ない。
テクノの面白さの一つに機械的なのに感情的という逆説的な楽しさがあると思うけど、このジャングルという音楽は高速ブレイクビートという非人間的な要素を使いつつも、血の通ったレゲエの要素を大胆に取り込むことでさらにさらに感情的で有機的だ。
気づくと暗い音楽ばかり増えがちな自分としては非常にこういった音源は稀有で楽しい。会社で聴くとテンション上がって個人的にはとても好きだ。
インパクトありすぎなジャケットに驚くが、中身は紛れもなく素晴らしいです。非常にオススメなので普段は暗い音楽ばっか聴いているメタラーの方も是非どうぞ。
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