2015年5月4日月曜日

Jucifer/District of Dystopia

アメリカはジョージア州アセンズの夫婦スラッジバンドの7thアルバム。
2014年に自身のレーベルNomadic Fortress Recordsより発売された。
Juciferは結構メッセージ性の強いバンドで詳しくはTwitterなんかを見てほしいんだが、アルバムにも結構コンセプトがあって例えばRelapseから出ている4thアルバム「L'Autrichienne」はたしかフランス革命がテーマ、前作「За Волгой для нас земли нет 」(読めない…)はタイトルに使われている文字からも分かる通りロシアの戦争がテーマ。で今作は「ディストピア地区」と銘打たれたより政治的な意味合いが強いアルバムになっているようだ。ジャケットも国会議事堂かな?これは。

音の方はというと凶暴さで言えば過去最強ではなかろうか。
全部で9曲だが長さはほぼ25分。ほぼ2分から3分台の曲で締められていてスラッジというにはすこし短い印象。もちろん曲調が遅くても短い曲というのは沢山あるんだが。ただこのアルバムは所謂スラッジとは少し異なっていて曲の速度はそこまで遅くないし、音の密度もかなり濃い。突っ走るパートも多いのでなんならグラインドコアっぽくも聴こえる。
ただなんとも陰鬱な攻撃性に満ちていてまさにジャケットの通り全体的に灰色な印象。
コンクリートの塊の様なざらざらした粒子の粗いギターですりつぶす様なギターはたしかにスラッジ由来のもの。歌いながら弾いているのだが結構リフは練られていて、こじるようなスラッジリフやぐーーんと引っ張る様なタメの聴いたリフ、グルーヴィなリフが混在していて気持ちよい。ノイズ分も多め。ほぼほぼ全編メタリックに引っ張る。
ドラムは手数の多いシンバルが喧しく乾いた音のスネアが気持ちよい。曲によってはかなり叩いている。完全に重たい方向にいかなかったので、ある種の開放感が出て来ていて個人的にはこっちの方が良かったんだろうなと思う。こうじゃないと陰鬱になりすぎるんじゃないかなと。
Amberのボーカルは引き絞る様なドスの利いた絶叫スタイル。この人は結構多彩な声を出せる人なんだが、今作ではウィスパーだったり通常の声、前作でたまに顔を出したクリーンで不穏なメロディを歌い上げるというパートも皆無。全編のどが千切れるんじゃないのかという絶叫。
方向性としては2つ前のアルバム「Throned in Blood」に近い。あちらもグラインドっぽいアグレッションを持ったアルバムだったがそれをさらに過激に押し進めたイメージ。前作にあった実験性はほぼ皆無で完全に直接的な攻撃性に舵を取った印象。

個人的には「L'Autrichienne」のスラッジと陰鬱かつ美麗なメロディアスさとの融合、それから2ndアルバム「I Name You Destroyer」(本当に名盤なんで皆さん是非聴いてほしいっす。)のノイジーなメタルを基調にしながらもAmberの女性らしさが色濃く出ているごった煮ロック感が大好きな身としてはもう少し多様性を打ち出したアルバムをついつい期待してしまう。(普通はむしろとっ散らかったアルバムは良くないとされるんだが…このバンドに関してはそれが楽しいと思う。)まあさすがに2ndの路線はもう無いんだろうけど…。
個人的な好みはあるんだが、Juciferのファンなら購入して損は無いと思います。アグレッションに富んだ地獄めいたスラッジが聴きたい人も是非どうぞ。最後の曲はノイズ地獄みたいな後半がとてもカッコいいんだ。
ただ初めてJuciferを聴くのだったら別のアルバム(前述の2枚がオススメ)が良いかなと思います。

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