2015年5月10日日曜日

Bell Witch/Four Phantoms

アメリカはワシントン州シアトルの2人組ドゥームメタルバンドの2ndアルバム。
2015年にProfound Lore Recordsよりリリースされた。
Bell Witchは2010年に結成されたバンドでメンバーはベース/ボーカルのDylan Desmondとドラム/ボーカルのAdrian Guerra。2人ともいくつかのバンドでプレイしているが共通してLetheという(既に解散している)のメンバーだったようだ。
バンド名Bell Witchはアメリカで実際に起きた怪談話を元ネタにしている。ポルターガイストが起こる家にまつわるおはなしで中々面白い。興味がある人は調べてみると言いかも。
2012年に同じくProfound Lore Recordsより発売された1stアルバム「Longing」はなんとなしに買ったのだが激烈な音楽性の割には結構ばっちりハマってしまいいまでも良く聴いている。そんな彼らのニューアルバムとなれば、という訳で購入した次第。

「4人の幽霊」というタイトル通り22分、10分、22分、10分という4曲で構成されている。10分か20分な訳だから1曲はとても長い。基本的な路線は1stから変更無し。彼らの音楽というのは尖っている分結構説明がしやすいかもしれない。
基本はドゥームメタルだが、リフは古くなりすぎたカセットテープの用にズルズルに引き延ばされている。低音が過剰に強調されており、さらに余韻にただならぬ思い入れがあるようでドラムとベースがグシャーーとなってフィードバックノイズがズズズズズズと長く続く、さすがにそこまででは無いがSunn o)))を引き合いに出すとイメージしてもらいやすいと思う。あの要素をもう少しロック的にしている。そこにグロウルめいた方向が乗る。徹頭徹尾低い。このボーカリゼーションはWorshipを始めとするフューネラルドゥームっぽさが色濃い。
こうやって書くととにかく荒涼として硬派で取っ付きにくい鋼鉄音楽を想像してしまうし、実際に半分は正解なのだがこのバンドはここに独自の叙情性を付与する事に腐心しているバンドで、そこがいちいち私の壷に入るのである。
具体的にはまず重苦しい中でも中音で泣くように入るベース(うーんギターなのか?)の印象的なフレーズ。伸びやかで多分ベースのフレットをぐーんと指で滑らせるスライドも多用されていてこれがなんともメロディアスで哀切。涙を誘うというとさすがに大げさだが、大仰でない悲劇的な陰鬱さがあってこれが荒涼としたバックの演奏(ずうぅううーーという感じで低音は唸っている)に映える事。凶暴さそのものというよりは廃墟に漂うまさに幽霊の悲鳴の様な趣がある。もう一つはボーカルに低音以外も使用している事。あえてクリーンと書かないのは例えばボソボソとしたつぶやきであったり、なにかしらオリエンタル風の詠唱めいた朗々とした歌い方であったり、器用とは言えないものの曲全体の雰囲気に従いつつもそれをさらに拡張する様な実験的な声を取り入れている。勿論クリーンで結構メロディアスに歌い上げるフレーズも(全体の割合からすればわずかにしても)入っている。で、この歌い方が例えばメタルコアのサビの様な爽快感があると全くそんな事はなく、むしろ怒り以上に悲しみの感情がにじみだすようでなんともさらに陰鬱さを倍加させる。このやるせなさは一体どうした事だ。
短い2曲がJudgement、長い方の2曲がSuffocationと名付けられたコンセプトアルバムになっている。攻撃性に特化したJudgementもよいが個人的には長い分贅沢且つ感情豊かなSuffocationの方が好み。
1stに比べるとジャケットの色彩もやや豊かになっている通り、上記に挙げた激烈さと陰鬱さのとけ込みがさらに進化していて、激→メロウ→激という進行だったのだが、展開はありつつもさらに激メロウ同時のカオスさを両立させている印象。とても良い世界観。

前作にあった魅力を踏襲しつつさらにぎゅっと濃くなったとても良いアルバム。とても良いバンドなので沢山の人に聴いてもらいたい。とにかく見た目というか第一印象より聴きやすい音楽性だと思うので一回試してみてはいかがでしょうか。オススメですよ。

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