言わずと知れたシェイクスピアの戯曲。
1601〜1602年頃に書かれたものでシェイクスピアの四大悲劇のうち一つ。
読んでなくても名前だけならほとんどの人が一度は聴いた事はあるのではなかろうか。忠誠に書かれた戯曲でありながら、現代になってもまだまだ劇場では色んな形で(原作に忠実に現代風にアレンジしたり…)上演されている物語である。
偉そうな事言う私も読んだ事が無く、というかシェイクスピア作品は一冊も読んだ事が無く、学生の頃から良い大人なんだからそろそろ読んでおくべきかな、と思いつつもそれから10年ほど経過してようやく手に取った次第。
なんでこの本にしたかというと絵である。ミレイの手によるオフィーリアである。これも美術の教科書に載っているから誰でも見た事があると思う。私もご多分に漏れずこの絵が大好きだ。奇麗さと恐怖がこんなに美しく調和している芸術というのもちょっと無いのではなかろうか。実物を見た事があるけど、意外に小さくてビックリしたものだ。
デンマーク王子ハムレットは本人の亡霊から父王が叔父に暗殺された事を知り、復讐を誓う。母親である妃は葬儀も間もないのに叔父と再婚してしまった。かつての学友達も叔父の言いなりである、そんな状況でハムレットは頭の狂った振りをしながら虎視眈々とその時を伺うのであった。
さて読んでみて思ったのは台詞が大仰で芝居がかっている。芝居用に書かれたので当たり前なのだが、本になって読んでみると当たり前だが、神の視点で書かれた様な動作の描写がほとんど(訳者の本当に動きだけたまに括弧で囲んで書いてある。「あとじさる」とかそんなもんだが。)ないので、当たり前だが役者は体の動きだけでは表現できない自分の思いを台詞にするしかないのであって、必然的に台詞が長くて芝居がかったものになる。実際に文字になってみると面白い。意外に違和感無く読める。
悲劇というと構えてしまうが、ハムレットというのはかなりお茶目な人柄で役者の福田恆存さんも矛盾した性格と書いているし、後書きによると性格が破綻しているという表もあるそうだが。しかし個人的にはハムレットなんかいいやつだなあという感じ。好きな人(オフィーリア)には上手く接する事が出来ないし、復讐を誓ったはいいものの中々これを実行に移せない。王族らしく追う様なところもありつつ、本当の友人には敬意を払い、恐ろしい冒険で命の危機をくぐり抜けて来たのになーんか泰然としている。このとこハムレットが喜怒哀楽も豊かに舞台を右往左往する様が、なんとなく目に浮かぶようで良い。
王家という密室的な状況で起こった事件を書いているが、不思議に、これは現代人である私が読んでそう思うのかもしれないが、なんとなく解放された状況で普遍的な人間の心情を扱っているように思えるのである。だから様々なアレンジにも耐えうるのだろうと思うのだが、そこは素人目なので本当のところは分からないが。
翻訳が良いのかちっとも古くささは無い。長さも短いので気になっている人はさくっと読んでしまうと良いのではなかろうか。
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