2014年にWarpからリリースされた。
一つ前のアルバム「Drukqs」がリリースされたのが2001年だからそれから13年のときを経てリリースされたニューアルバム。2001年当時のAphex Twinといったらテクノモーツァルトなどと称され本邦でも絶大な人気を誇っており、nine inch nailsのリミックスアルバムに彼の曲が(リミックスなのか未だに謎なのだが)入っており、興味を持って私も「Drukqs」を購入したものです。当時高校生で本格的なテクノって初めてくらいだったもんで、その音の豊かさに大分驚いたものだ。ピアノの内部を使ったアートワーク通り激しくも何とも言えない閉塞感のあるくらいアルバムで、私はその後Aphex Twin関連のCDをいくつか購入したが結局一番はじめにかった「Drukqs」が一番好きだ。あの随所に挿入されるピアノ曲がたまらない。全体的には何となく雨っぽい雰囲気を持ったアルバムだと思う。
さて、そんな彼はそれ以来ぱっと鳴りを潜めてしまったのだが(「Chosen Lord」はリリースされたし、今調べたら別名儀でも自身のRephlexからリリースしていたみたいだが。(全く知らんかった。))、突然アルバムをリリースするぞということになって世界的にも結構な盛り上がりを見せておったようです。私も過去のアルバムを聞き直したりして大分楽しみに待ったもんです。戦車を通販で買ったとか、曲が滅茶苦茶詰まったハードディスクをどっかで無くしただとか、虚実のはっきりとしないもはや生きる伝説めいた趣のある彼だが、子供も出来てタイトルの「Syro」というのも子供の作った単語だとか。日本でも色々特典のついたオリジナル版を作ったりで期待感満点。まあテクノモーツァルトだから。
さて音の方はというと完全にAphex Twunです。
彼の作る音は音が細かいという印象があって、アンビエントものは別としてテクのものはだいたいどれも小さくてこまい音がぎっしり詰まっていて、それが跳ねたり転がったりするように鳴る、(そう考えると「Windowlicker」ってちょっと変わった曲だよね、大好きだけど。)というのが私の考えなんだけど、これってなかなか唯一無二。具体的にはどこがどうかというと困るんだけど、聴くとあ、Aphex Twinとなんとなーく分かる様な感じです。悪意のあるアートワークとは違って音の一つ一つにかすかに熱を持っている様な暖かみがある。
嵐のように打ちまくるビートは健在だが、一音がより重みを増したので今までの作品になくテクノ然とした聴きやすさがあると思う。アシッドなベース音が走り回る子供のように縦横無尽に右に左に駆け回り、伸びやかなシンセ音がそれに乗っかる。ノイズ寸前の小さな音達がひょっこり顔を出して跳ね回り、消えていく。霞のかかった様な、ベールの向こうから聴こえてくる怪しい声のサンプリングも健在でたま〜に絶妙なタイミングで出てくる。
ドリルンベースもあるんだけど、昔に比べると鳴りを潜めた。「Drukqs」の何とも言えない窒息しそうな閉塞感と焦燥感はほぼなくなり音がもっと外に向かって広がった。得意技のぶよぶよしたアシッドな音が幅を利かせているが、なんでこんなにドリーミィーな曲に鳴るのかはやっぱり分からない。なるほど彼はテクノ魔術師かもしれない。彼が曲を作ると無機質な電子音が感情を持ち出すのかも。(色んな記事を読むとかなり古いアナログ機材を多用しているとあるので、それも要因の一つかも。今回は機材がアートワークに書いてあるのだけど、聴くだけの私は見てもそれがなになのかわからないのだ…)
そんな不思議さの秘密は緻密に作られた音とその数の豊富さかも。テクノというと音を減らすことで格好よさが増すという側面もあると思うのだが(テクノに限らないかも。)、Aphex Twinは音の数がとにかく多い。よくよく聴いてみると色々な音が鳴っている。ピアノだけの曲も何かがこすれる音とか、鳥の声みたいなのがサンプリングされている。いわば病的なくらいの神経質さでもって彼の内面が音楽という形で再構成されているのかどうかは分からんがこの作り込みはすごい。
というわけで個人的には超大満足なアルバムでした。聴いてて楽しい!!次は13年後というのはあんまりだなと思うんで関係者の皆さんよろしくお願いします。
話題のアルバムだからかっている人は多いだろうが、まだの人はまずは視聴だけでも是非どうぞ。なかなかニッチな音楽ばかり紹介しているが、このアルバムは文句無しに色んな人にもお勧めが出来ると思う。
ちなみに私はなんとなくテクノをレコードで聴いたら気持ちよいんじゃないか?と思って(気持ちよかったよ。)レコード盤をかったが、これにはCD盤のように色々な特典はついていない様なのでご注意ください。日本版は1曲ボーナストラックが追加されているそうです。
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