2014年8月31日日曜日

Pulling Teeth/Funerary

アメリカはメリーランド州ボルチモアのハードコアバンドの4thアルバムにして最終作。
2011年にA389 Recordingsからリリースされた。CDとアナログがあるんだけど、手っ取り早く見つからなかったので、私の買ったのはデジタル版。
前作「Paranoid Delusions/Paradise Illusions」がべらぼうに格好よかったため必然的に買わざるを得なかった訳だ。
前作は何とも言えない憂いのあるメロディを痛快なくらいのストレートさにのせてまっすぐ打ち出して来たストレートパンチの様な作風で記事でも書いたが唯一の欠点は短すぎることだったが、今作は全12曲でボリューム満点。前作と同様独特の濃密さでもった描かれたアートワークが特徴的(本当デジタル音源で残念なのがアートワークをちゃんと楽しめないことだ。クレジットも読めないし。)で「Funerary」というタイトルにちなみ棺の絵である。このアルバムの発表が2011年で翌2012年にバンドは解散しているから、まさか最終作の心構えで作った訳ではなかろうが、結果的に何とも因縁めいたタイトルになってしまった。

作風としては前作の延長線上でスラッシーな重たいハードコアで重く暗くそして速い。そこにドゥーム/スラッジの低速パートを取り込んだスタイル。物珍しいスタイルという訳ではないが、とにかく突き詰めた様なテンションと独特の叙情性を取り込んで唯一無二の音楽性を確立している。すっげえ格好いい。
ドラムはブラストありの、パンクっぽい2ビートありの叩きまくりスタイルで迫力満点。ブラストビートは様になりすぎて下手なメタルバンドより迫力あるかもしれない。
ベースは前作より前に出た印象でやはり重たい低音で唸りまくる。特に速度がぐっと落ちたビートダウンパートだと雷鳴のようにゴロゴロ唸っているのが格好いい。
ギターは刻みまくるスラッシーなもので、ビートダウンのためる様なリフから、疾走するトレモロリフまでこなす芸達者なもの。今作でもやけっぱちなギターソロが頻繁に出て曲に彩りを与えている。音質はソリッドかつ中音域を意識した分厚いもので、特にスラッジパートのノイジーな残響が耳に残る。
がなり立てるハードコアボーカルはともするとメタリックな楽曲を一気にハードコアスタイルの粗野かつ激しいものにする力を持っている。演奏陣もそうだが、なんといってもこのボーカルがバンドの顔かも。絞り出す様なボーカルスタイルはドスが利いたというよりは血管が今にもぶち切れそうな危うさがある。私は残念ながら一人も分からなかったのだけど、結構な数のゲストボーカルも参加していてボーカルワークも多彩。

前半はとにかく突っ走りまくるんだけど、後半は全体的に速度が落ち曲の尺が長くなる。演奏はさらに重たくディープに沈み込んでいく。非常にグルーミィだが、そんな中でも前作から引き続く、歌う様な抒情的なギターリフ、メロディがある。今作はさらにコーラスワークが陰鬱な曲に深みを加えている。曲の軸はぶれずに感情が豊かになってむしろ魅力が増している表現力はすごいなと思う。喜怒哀楽のどれかではなく、何かに相対したときの心の動きの様をなんとかバンドサウンドで表現しようとした試みとでも言うべきか。なかなかこういう印象を与えてくれるバンドや楽曲に合うことはないからいざ出会うととても感動する。

という訳で滅茶苦茶格好いいハードコアである。気づいたときには解散していた分けなんだけど本当に惜しいものです。という訳で文句無しのオススメアルバムなのでどーぞ。探せばCDやレコードなどのアナログ音源も買えるだろうけど、手っ取り早くBandcampでも手に入ります。


0 件のコメント:

コメントを投稿