こちらの方はRobot Elephant Recordsから2014年にリリースされた。
この間紹介した「Scorched」は1stアルバムからさらに装飾を削ぎ落とした、ぶっといビートにノイズの塊を乗っけるというシンプルかつ破壊力抜群の焼け野原のようなアルバムだったが、同時にリリースされたこちらのアルバムはかなり様相が異なる。
土台となるビートは音が分厚く太いものだが、それほど歪められていない。音の数がまし、より細かく刻んでくる様なスタイル。シンバル、ハイハットの音も多くはないが入ってくるようになった。ブリブリしたDubい悪夢めいたベースラインもその鳴りを潜めている。
過剰な装飾性は皆無だが、やや分かりやすさの増したビートに空間的に広がりのあるシンセ音が乗っかる。音の境界が曖昧で反復性があり、聴いていると妙に夢見心地になってくる。まるで霧のの用に空間を埋め尽くす様なドローンめいた持続音も異界めいた雰囲気を曲に付与するのに一役買っている。
一見インダストリアル/ノイズというよりはかなり硬質なエレクトロニカと言ったところか。とはいえ過剰なドラムンベースな訳でもない、やはり持ち味であるシンプルさでもって、当たり前のように美麗なメロディは皆無。
しかしたまに入る怪獣の雄叫びのような歪んだベース。手数が多く軽快ながらもノイジーなビートは確かにDead Fader由来。
聴いているとこう思う。なるほどこれは確かに「Blood Forest」だ。「Blood Forest」って何だ?それは分からないが「Scorched」は悪夢のトンネルのようだった。Dead Faderはその音楽でもって聴いている人をどこかに連れて行こうとしている。つまり別の世界を作ってそこに没入させようとするのが彼の試みである。いわばもう一つの悪夢である「Blood Forest」はもう一つの世界に比べれば硬質ではない。暖かみすらある。ジャングルのように湿気がある。常にピンク色の霧に覆われている。見たことも無い植物が独特のリズムに合わせて踊っているように見える。視界が利かない。一人っきりの酔うなきもするし、たまに何か他の何かが霧の向こう側にいる気配がする。居心地が良いのか悪いのかは意見が分かれるところだろうが、私はとても楽しい。そう、楽しい。一見不穏で感情の振れ幅が狭いように思えるが、よくよく聴いてみるとこれは結構なダンスミュージックのように思えてくる。妙にずれた陽気さというのがあって、それは奇形的だが見た目で判断してはいけない。ぶっきらぼうな中の優しさみたいのがあって良い。
どうなるんだ?という期待と不安で聴いたもののこれはすごい良いじゃん。
大衆性といったらこっちの方に軍配あがるんじゃないかなと思う。
変名ではなくDead Fader名義で出すあたりに、彼のメッセージが込められているように思う。つまり結果があって筋道が沢山あるのがDead Faderなの、かもしれない。
面白いテクノ聴きたい人はどうぞ。