2014年6月8日日曜日

Dead Fader/Scorched

ドイツのベルリンを拠点に活動するインダストリアル/ノイズアーティストDead Faderの2ndもしくは3rdアルバム。(理由は後述。)
2014年にSmall But Hard Recordsからリリースされた。
Dead Faderのことははっきりと分かっている訳ではない。Discogsを見るとメンバーは2人でクレジットされているが、FBやインタビューをちょっと見る限り、最近はJohn Cohenという人が単独で活動しているようにも思う。(テクノアーティストはバンドに比べるとクリエイターが前に出てこない印象がある。)実はほぼ同時期に別のレーベルからもアルバム「Blood Forest」というアルバム(まだ聴いていないが近々レビューする予定。)を出しているため、どちらが2ndでどちらが3rdなのか分からないのだ。私に分かっているのはDead Faderの作り出す音楽はベラボウに格好いいということだけだ。私はなんで知ったのかはもう分からないが、1stアルバムとライブアルバム、それからシングルをもっている。全部の音源をもっている訳ではないが、結構好きなアーティストだ。ちなみにこのアルバムともう一つの新しいアルバムはレコードの形とデジタルでリリースされている。私は2つのアルバムプラスシングルのバンドルセットみたいのをオーダーしたが、まだ手元に届いていない。購入と同時にデジタル音源もダウンロードできるようになっており、その音源を聴いている。

Dead Faderはどんなアーティストなのかというと、クソ喧しいとしか言いようが無い。
極端に歪められた太いビートの上に、さらに歪んだベースがのり、その上にノイズとしかいえない様な硬質な音が乗るのだ。それだけだ、基本。ヒップホップよりは音の数は多いだろうが、結構いさぎの良いスタイルでそのかわり一音一音の主張がもの凄い激しい。勿論メロディなど皆無。インダストリアルと称されるのはその音質で、はっきり言ってノイズにしか聴こえない。金属音でひどく耳に痛い。巨大なアナログ機械が悲鳴を上げているか、ラジオの空電をブーストさせたか、あるいは工事現場の音をサンプリングしたのか、要するにそういった類いの音楽である。この間紹介したBen Frostもそうだが、最終的には面白いのはハーシュノイズではないということだ。ハーシュノイズはカオスであるが、Dead Faderはカオスに抑制を持ち込んでいる。それがドラムとベースである。簡単にいうと極太のビートである。つまり混沌状態にパターンを作ってある程度をコントロールしようという企みである。だが巨大な竜巻にもう一つ巨大な竜巻をぶつける様なこの試みは果たして成功しているのかどうか怪しい。喧しさはとにかく少なく見積もって2倍になった。ビートがあれば音楽かといわれれば怒る人もいるだろうが、要するにこういうことかもしれない。つまり音が鳴っていれば音楽なのだ。
1stアルバムはまだテクノ感があった。音の数も多かったように思える。お洒落とは全然いえない音楽性であったが、少なくともこのアルバムに比べればまだピカピカしていたと思う。一体前回のアルバムからどんな心境の変化があったのか。(ひょっとしたらメンバーが抜けた所為もあるかもしれないが、それも定かではない。)より無骨になった。より喧しく、そして気持ちが悪くなった。呵責がなくなった。音はゆがみ、殺気が満ちている。ノイズはその力を増した。ビートは整合性をもたらすどころかむしろ神経症的に鳴り響く、猛暑の二日酔いのような気持ちの悪さがある。音が分厚く偏頭痛のトンネルに放り込まれた様な感覚である。真夏の工事現場の五月蝿さである。ノイズの洪水で、この反復性は壊れたビデオを見ている様な不安感をあおる。さらに面白いのが、冷徹なビートでそのような音を構築してしまうそのセンスである。かねがねテクノというのは完全に機械で作るくせに、聴いてみると感情がこもっているのが面白いともっていたけど、Dead Faderの音楽もまさにそういった音楽である。未来の巨大な建設機械が発狂したうなり声にも聴こえる、この音楽性。とにかく格好いいのだ。

デカい音で聴くのが良い。みんな聴いた方が良い。きっと気に入るだろう、と思う。
因にもう一つのアルバムは音楽性が全く違うようだ。そちらも楽しみだ。

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