2014年6月1日日曜日

Atmosphere/Southsiders

アメリカはミネソタ州ミネアポリスのヒップホップデュオの8thアルバム。
2014年にRhymesayers Entertainmentからリリースされた。
グループ名とアルバムタイトルが印刷された透明のビニールにCDとブックレットと歌詞が入っている変形ジャケット。

私は偶々ネットで彼らの曲を聴いて気に入りこのアルバムを買った訳だけど、彼らのことは全然知らなかった。
Atmosphereは1989年に結成されたヒップホップグループで現在のメンバーはラップ担当のSlugとDJ/トラックメイカーのAntの2人。写真を見るに2人とも白人であるようだ。結構ベテラン選手だから知っている人は知っているのだと思う。

(以下私の主観によるヒップホップ観を書くけど、はなはだ間違っている可能性をはらんだ一個人の意見であることご留意されたく。)
さてヒップホップ(はカルチャー主体のことをさすらしいから厳密に言えばヒップホップ音楽か。)というとご存知の通りサンプリング主体で作ったトラックに人の声からなるラップをのせたものからスタートした音楽のジャンルです。そのシンプルな音楽性格上なかなかドラスティックに変化してく(例えばロックがメタルになったりみたいな)余地がなさそうですが、それでも昨今のヒットチャートを見ると大分その黎明期からは音楽性が広がって来たようだ。サンプリングマストではなくなったのだろうし、他ジャンルとの融合だって頻繁に行われている訳だ。
そんな流れの中でAtmosphereのやっている音楽を聴くとこれは結構オールドスクールなヒップホップになるのではなかろうか。彼らの曲作りがどうやってなされているのかは分からないところだけど、結果的に形になった曲を聴くと、あくまでも基本の形を踏襲したヒップホップであるようだ。
シンプルなビートにいくつか音をのせ雰囲気を作る、その上にラップが乗る。
ヒップホップ好きの友人のいうところには、優れたヒップホップのトラックというのはラップ抜きで聴いても抜群に格好よいのだ。デザインとは引き算だから、限界まで削ぎ落とされたトラックというのは完璧なもので、それはそれでめちゃ格好よいのだ。冷徹なビート、その上に本当にいくつか音をのせるだけで曲の雰囲気ががらりと変わる。基本ビートが太いから乗りやすいしね。
太いビートにベースをのせて土台を作って、その上にピアノやアコギの音をのせたりしている。曲によっては歪んだ電子音も使っているが、あくまでもトラックという感じで前にしゃしゃり出てくる感じは皆無。女性の声のサンプリングを入れたりして結構凝っている。またたまに入るスクラッチがすごく格好よい。やたら頻発する様な下品な感じじゃない。飛び道具の様な独特の音なのにバックトラックと相まって不思議と落ち着きがあるから不思議だ。
ラップの方はというとまろやかな感じで、いわれないと白人と分からないかも。でも黒人に比べるとちょっとあっさりしているかもしれない。高すぎず低すぎずちょうど良く耳に入ってくる声質で、画像検索するとやっぱり恐そうだけど、ラップを聴いた限りギャングスタな悪自慢という感じではなさそうだ。もっと落ち着いた大人なイメージ。曲によってはトラックもあって暖かく、ゆったりしたラップを見せる。スキル自慢というよりは完全に曲の完成度重視なタイプで語りかけてくる様なゆったりしたものから、緊張感があるちょっと硬質な感じのものまで結構幅があるラップで面白い。

タイトルになっているSouthsidersというのは彼らの故郷ミネアポリスの南側のことを指すらしい。各曲の頭には電車のアナウンスを模したトラックの紹介が入っている。きっとここも故郷由来のネタなんじゃないかなと思う。

格好よい。派手さは無いし落ち着いているけど、日和っている訳ではない。
虚栄心が削ぎ落とされた自然体かつストイックなアルバムだと思う。
ギラギラしたのじゃなくて、しっかりしたヒップホップが好きな人は是非どうぞ。

この曲聴いてアルバム買いましたよ。
しかし曲名が「カニエ・ウェスト」ってのも結構すごい。

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