2013年に自身のレーベルScumzoneからリリース。
Birushanahは2002年に結成されたバンド。バンド名の由来は毘盧遮那で毘盧遮那仏とも。大日如来という仏様のお名前です。基本はサイケデリック要素のあるスラッジメタルですが、比較的長い尺の曲の中では時にゆっくり、時に速く、かなり複雑な展開をもった曲が特徴。ここまではほかのバンドでもならせる範疇かもしれませんが、このバンドはここにメタルパーカッションと和音階という二つの得意な要素を取り込むことでその音楽性を唯一無二なもの足らしめています。
メタルパーカッションは文字通り鉄をたたいて音出しており、キンキンという独特の金属音、ドラム缶をたたいているようなからっとしたぱらぱら音、同じ打楽器にしてもやはりドラムとは一線を画すグシャっとした重い打撃音、これらがバンドにほかのバンドにはない重々しさを加えています。聴く分にはすごい格好いいのですがその衝撃たるや凄まじく、オフィシャルサイトでギターボーカルのIsoさんはこう書いています。「響きはいいが、ただ鉄を叩くその破裂音の振動は脳を揺さぶり骨まで軋ませる。そのせいかとにかく俺の記憶力は特に最近は劣化が激しい。」物理的破壊力を持った恐ろしい楽器ですね!
私は彼らの1stアルバム「赤い闇」を買って好きになり、アメリカのハードコアバンドDrain the Skyとのスプリット収録の「窖(あなぐら)」で完全に打ちのめされたものです。多分後者はリリースされた2009年一番聴いた曲だと思います。女性の混成アカペラから始まる18分のスラッジ絵巻に虜になったものです。
この作品は2010年から2011年に録音されたものだったのですが、バンドの創始者にしてベーシストでリーダーであったSougyoさんが脱退してしまったためお蔵入りになっていたのですが、2013年になってからめでたく発売されることになったそうです。本当にもう待ちわびたリリースです。不思議なタイトルは歌詞カードによると「日に見し頃なや、心の灯火」。
Sougyoさんはフレットレースベースを使っているらしく、ぶおーんという特徴的な音使いが非常に格好いい。じゃららんとまるでギターのようにも弾いて、兎に角多彩かつ巧みなので脱退は非常に残念…。
1曲目「人的欲求」
金属の上を滑らすようなメタルパーカッションの乱打でスタート。ドラムは一撃が非常に重く、バスドラムはマシンガンのよう。重々しいギターがバンド特有のリフを奏でるのですが、イントロだけでBirushanah節が全開。ちょっと聴いただけですぐにKoreHaBirushanahDa!とすぐわかるのがすごい。あやしい裏声っぽい叫び声にぶおんぶおんうなるベースがたまらない。
2曲目「数え歌」
ぐまぐましたベースからの日本の伝統的音楽のような節回しのぐにゃっとしたボーカルでスタート。この曲は全編ギターボーカルのIsoさんの魅力がふんだんに詰め込まれております。Isoさんの叫び声はまさに絶叫という感じで個人的に大好き。変な言い方なのだけどすごい必死な感じがあって訴えかけてくる感じが半端ない。すごみがあるのに時に懇願するようで強さと弱さが同居したような独特の声。中盤からはもうカオスで極楽浄土につれていかけること必至。
3曲目「受戒」
混成男声、和笛を大胆に取り入れた実験的な曲で、テクニカルなベース、キンキンしたメタルパーカッション、生々しいギターのフィードバックノイズが素晴らしい一大スラッジ地獄絵図。過去の曲にもあった静と動の対比が強調されていてるのだけど、今回は曲の後半の静かなパートが今までにないプログレッシブな感じから一転、急に伝統的な和笛が入ってくるところがすげー。
4曲目「小松」
3分弱のコンパクトな曲で、アウトロっぽい役割なのかな?揺れるような跳ねるようなリズムが高揚されるようなボーカルと相まって気持ちいいです。
かなりかわった異形の音楽であることは間違いないです。しかしこの堂々とした様はどうだろう。卑屈なところはいっさいない、正面から正々堂々歌い上げる(まさに歌だと思います。)素直な音楽性であると思います。Sougyoさん脱退は悲しいけど、早くも次の音源が楽しみでならないなー。どのくらい先になるか分からないですけど、活動を続けてくれるだけで嬉しい。
素晴らしいですね。期待の遥か上をいく素晴らしさでした。私の言葉で彼らの音楽のすごさがちっともうまく伝えられないのがもどかしいです。兎に角たくさんの人に聴いていただきたい。これを機会に是非聴いてみてください。
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