2013年2月16日土曜日

My Bloody Valentine/ m b v


いわずと知れたシューゲイザーの大立者2013年発表の3rdアルバム。
なんと22年ぶりに、しかも急に発売されて世界を驚嘆の嵐に巻き込んだという噂のあれです。
メンバーも22年前と同じみたい。Black SabbathにしてもCarcassにしても久しぶりに再結成するとメンバーがそろわなかったりするものですが、すごいものですね。

私は昨年あたりにリマスターされた「Loveless」と「EPs」を買っただけのミーハーなファンだから、そこまで強い思い入れがあるわけじゃあないけど、これはいい音楽ですね。
唸るような轟音がずらーっと塗りつぶされていて、その隙間からケヴィンさんビリンダさんの甘いささやき声がメロディアスに聴こえてきます。全体的にゆったりして夢見がちという以前の音楽性を踏襲していて、大きく変更はないと思います。
轟音といってもいわゆるメタルだハードコアの轟音とは違いますよね。なんだかスローモーションにされた巨大な建設現場みたいな世界に放り込まれて、唖然としてたら歌声が聞こえてきたぞ、という感じ。音自体はデカくてはっきりしているんですけど、たどっていくとなんだか曖昧になっていて、全体的にというか結局というかぼんやりとした世界に連れ込まれちゃったなっているんですよね、不思議です。

というわけで、私がおすすめするまでもなくもうみんな聴いているんじゃあないかと思うけど、おすすめです。
ちなみに私はレコード+CD+デジタルダウンロードバージョンを買ったよ。音はもうすでに聴いているけどレコード届くのが楽しみだな~。


2013年2月11日月曜日

ジョージ・オーウェル/一九八四年[新訳版]

イギリスの作家ジョージ・オーウェルが1949年に出版した小説。

1984年、世界は、ユースタシア、イースタシア、オセアニアの3つの超大国に分かれ、終わることのない戦争に明け暮れていた。その中の一国オセアニアは「ビッグ・ブラザー」率いる「党」に統治され、全国民は相互通信機により日常背活のすべてを「党」によって監視されていた。旧イギリスに住む39歳の党員ウィンストン・スミスは真理省に努め、日夜「党」のため歴史の改ざん行っている。刻一刻と「党」の都合の良い方向に捻じ曲げらる歴史、あいまいな自分の過去。次第に「党」に疑問を持つようになったウィンストンは禁じられている「日記をつける」という行為に手を染める。ある日ウィンストンは完璧な党員ジュリアから「あなたが好きです。」と書かれた手紙を受け取るが…

とても有名な小説で、いわゆるディストピアについて書かれたもの。
何となく自分の中でディストピアものといったらこの本とブラッドベリの「華氏451」が代表選手と勝手に思っていた。この前「華氏451」を読んだので、さあ次はこれだとばかりに手を出したのだったけど、これがとんでもない話だった。
この本は真っ暗である。血が出る話、人が死ぬ話などいろいろ読んできたけど、この本はそれらよりずっと気分が悪い。

本の中のエピソードを引用してみます。
2+2は4で当然ある。あなたはそういう。しかし周りの人が全員2+2は5だという。当然あなたは反論する。石ころでもなんでも使って2+2は4である、と証明してみせるが、それは全く聞き入れられない。あなたは異端で、思考犯罪を犯しており、いずれ「党」によって処刑されるだろう。
「ありえない」というでしょう、なんならちょっとおかしくもあるでしょう。しかし本当に周りの人が全員2+2は5だといったら?あなたが主張する正しさは誰によって証明されるのでしょうか?あなた一人は絶対的な法則があってそれは常に2+2を4たらしめているという。しかし絶対的な法則を”認識”している時点で(仮に存在するなら)真実をそのままの形でとらえることは不可能では?
「詭弁だ」とあなたは言うでしょう。しかしあなたは異端で矯正されたのち殺されるのでした。

 この本は数の暴力と純粋な暴力について書いている。多数決がすべてを決める。そしてその多数決は常に「党」によって操作されている。多数決に従わないものは異端で、異端には純粋な暴力が振るわれる。普通の本では暴力が描かれても結果は痣ができたり、骨折したり、死んでしまったりというところまでだけど、この本は違う。純粋な暴力!それがこれほどの力を持っているとは!殴る、蹴る、それがこれほど人間から尊厳を奪い、徹底的に人間性を破壊しつくしてしまうとは!暴力に精神が屈したとき、人はその前とは全然違った人間になってしまうのです。

とにかく人間の尊厳の剥奪ということが全編にわたって書き込まれており、そうしてそれが有無を言わさない外的な力によって引き起こされているということに、言葉に言い尽くせないような無力感ややるせなさを感じました。崇高で清冽な意志、これ自体に力が備わっていると何となく信じ込んでいた私ですが、それがもろくも崩れ去る瞬間、いったい私たちには何が残されているのかと考え込まずにはいられませんでした。
中盤で主人公の過去がちょっとだけ書かれます。今ほど「党」の支配が確立されていない頃、しかい民は貧困にあえいでいました。そこで語られる主人公親子のエピソード。私は久しぶりに本を読むのが嫌だと感じさえしました。

この本を読んで気分がよくなることはないと思います。しかしそれでも私はたくさんの人にこの本を読んでもらいたいと思います。それは決して世界がいかに醜くなる可能性があり、いかに今の社会が恵まれているかを分かってもらいたいからではありません。私たちが信じているものが実際にはひどく頼りなく、力ないものであることを少し考えてもらいたいからかもしれません。この本を読んで結局どのように権力や隣人に接したらいいのか、私自身も明確な答えを出せずにいます。しかし私は駅で下を向いている人たちの手から携帯電話を叩き落としてでもこの本を押し付けたいと思ったのでした。
この記事を読んだあなたがまだ一九八四年[新訳版]を読んでいないなら、ぜひ読んでください。
これはあなたのために書かれた本です。(こういういい方は本当は嫌いなのですが)

最後に、この本の表紙、真っ暗闇かと思ったんですけど、実際には星が描かれています。

2013年2月10日日曜日

Antediluvian /Through the Cervix of Hawwah


カナダのブラッケンドデスメタルバンド(ブラックメタル要素のあるデスメタルということだと思いますが…)の1st。名門Profound Loreより。
バンド名Antediluvianはこんな意味だそうです。(weblio英和辞典より)
【形容詞】
1(Noah の)大洪水以前の (cf. deluge 1b).
2《戯言》 大昔の,旧式な,時代遅れの.
【名詞】【可算名詞】
1大洪水以前の人[動植物].
2非常な老人; ひどく時代遅れの人.
[ANTE‐+ラテン語 dīluvium 「洪水」]
バンドの写真がこれ。



なるほど、だから原始人っぽい恰好をしているんですね!納得!
まあ見るからにめんどくさそうなこの人たち音楽性も結構ややこしいことになっています。
基本的には結構速度速めのうるさいデスメタルです。(うるさくないデスメタルだってあるかもしれません。)音の密度が特濃で、やかましいったらないんですが、曲が全体的に最初っから最後まで低音主体で構成されているため派手な印象はないです。
ボーカルは低い。ちょっと聴き取りにくいくらい低いです。前に紹介したDismaのボーカルに一寸似てる。
演奏がかなり特徴的であえて言うならDeathspell Omegaに似ていると思いました。やたら音の数が多く、音の感覚が詰まっていて、うねうねスピードを変えて一秒一秒曲が変化していくような気持ち悪さ(もちろんほめ言葉です。)があります。全体的にオカルト色が強いのも似ているかもしれませんね。異界的な状況を表現したい!という気持ちがヒシヒシと伝わってきます。疾走感があるところは速く、落とすところは落として、かつ気持ち悪いSEが入っていたり盛りだくさん。そんなしつこい曲な割に曲の長さがむやみに長くないのがイイネ!と思います。だいたい3分から5分くらい。気軽に聴けるよ!
こりゃあかっこいいぜ!(今回は全体的に元気良い感じで書いてみました。)

2013年2月9日土曜日

Unsane/Wreck

アメリカはニューヨークのノイズロックバンドの2012年発表7thアルバム。
アートワークが生々しく恐ろしい。
1988年結成、中断を挟みつつ長いこと活動しジャンクの帝王と呼ばれてるらしいです。
バンド名はおそらくinsaneのもじりでしょうか。
その名の通りいかれている音楽性なわけですが、デスメタルやブラックメタルのそれとは趣を異にしております。後者の演出する狂気というのは、通常過激さを追求するあまりおおむね現実世界から逸脱していることが多いのですが、このバンドの狂気は日常の延長線上にあるようです。朝起きて、仕事に行って、帰って酒を飲んで寝るという生活のサイクル、これをずーっとくりかえしていたらいつの間にか狂気の世界に含みこんでいたような生々しさがあります。

ギター、ベース、ドラムスリーピースで全体的に乾いた音。がしゃがしゃじゃきじゃきしたギター、太く硬いベース、ぬけの良いドラム。がなり声のボーカルは結構特徴的で高めですね。
何かが飛びぬけているわけじゃないはずなんですよ。もちろん音が重くてでかくてノイジーなんですけど。曲がばかっぱやいわけでも、劇的に速いわけでも遅いわけもないです。 テクニックのひけらかしもなし。デス声もないです。小細工なし!なんですけど曲として聞くとやっぱりこれはどっか正気じゃねえぞ、という感じがするんです。なんですかね、酒場で酔っぱらいのおっさんと夢中になってしゃべって、ふっとおっさんの目を見たらどうにもこうにも普通じゃない。アルコールのせいも思えない。自分がおかしいのかなとも思えるけど、かといってじゃあ話をやめようとしたらこのおっさんに殺されるんじゃねえかと不安になるような。そんな音楽です。
こりゃーかっこいいです。

なかでも戦慄が走るくらい怖-くてかっこいい曲を。
Flipperというバンドのカバーとのこと。

2013年2月3日日曜日

BP./THE NEW BP.

BP.です。
日本のロックバンド。14年だか、15年だかぶりの新音源発表とのことです。
イチマキさんという人がギターとボーカルをやっています。
イチマキさんは私が中学生のころから今も大好きなバンドCOALTAR OF THE DEEPERSでギターとボーカルを担当していらっしゃたことがございました。私が初めて買ったCOTDのアルバムが「No Thank You」でした。イチマキさんが(COTDに)所属していて、BP.の「GIANT」というをCOTDが演奏・録音したものが収録されておりましたから、BP.というと結構思い入れのあるバンドです。前の記事のMournfulもそうですけど、ほしいと思った時には廃盤になっているんだもの。そりゃ気になる。
去年過去音源をまとめたCDが出たときはそれはうれしかったものです。内容的にも大満足でしたから、ただの再発じゃなくて活動再開だよー、とくれば当然新音源に期待が膨らむというのが人情というものです。
まあそんな感じで一人でテンションあがったBP.の新音源。これがまたかっこいー。
BP.というと荒々しい演奏に、透明感のあるイチマキさんのボーカルという対比構造が魅力の一つだと思うのですが、この新作でもそれがいかんなく発揮されています。個人的にうれしかったのが、演奏の荒々しさのバランス。何となく単純にすげー激しくなるのかな、と思っていたのですが、杞憂でした。曲全体の完成度というか目指すところを意識した程よい激しさ。過去の音源を踏襲するよう曲中で急に激しくなるギターや、スクリームも入っているのですけど、全体的に変なことになってるわけじゃない。なんていうかメタルバンドみたいになってないんですね。激しい音楽は大好きですけど、それはほかのバンドがうまくやるからさー、というか。ほんとこういうバランスってありそうでないかもしれない。とても気持ちい。でかいギターの音も素晴らしく気持ちいい。イチマキさんのボーカルはちょっと大人っぽくなったですかね。のびやかーで爽やか。
アルバムが早くも楽しみです。

この音源のがなかったわい。


Mournful/Monochrome

ドイツのエモバンドの1stアルバム、2003年(10年前だ!)発表。
バンドは2005年に解散。
内容的にはエモだ。エモい。スクリーモっぽい要素も結構ある。(なんていうか独特のスクリームだ。)
はっきり言って今好んで聞いている音楽とは一線を画す彼らの音楽性なのだが、これにはちょっと事情がある。だいぶ前彼らの「LHC」という曲をネットで耳にした。何の媒体経由だったのか、今はもう思い出せないのだけれど「いい曲だなー」と思いCDを探したところ、バンドは既に解散していてこのCDも廃盤になっており申した。泣く泣くあきらめたのですが、この間amazonのマーケットプレイスで見つけて「なんだよ」とばかりに購入したわけです。
エモなんだけど、何年か前のエモブームの前のバンドなんで、あそこらへんではやったバンドとはちょっと違います。曲によってはちょっと初期Deftonesぽいところもあると思った。ベース、ギター、ドラムどれをとってもこぎれいな印象で、基本的にはそんなに速度のない曲調で哀愁のあるメロディ。ポストロックとまでは言わないが、それっぽいアルペジオがあったり、サビで急に抒情的になったり結構しっかりしております。
なんといってもこのバンドボーカルが特徴的で、ものすごくなよなよしている。裏声というのかわからんが、やたら弱っているのだ。おいおいお前ちょっとナヨナヨしすぎじゃあないか、と。「LHC」でも「疲れたよー」とか泣き言をなよ~っとこう歌い上げるわけで、このナルキッソスめとちょっと笑っちゃうくらいなのだけど、曲全体が何とも丁寧にあざとく作っているため、「むう」といって納得しちゃうわけです。
たまにはこういう音楽もいいですね。

LHCがねえんだなー。

Old Man Gloom/NO

アメリカのスラッジメタルバンドの4thアルバム。
オリジナルはHydra Head Recordsからで、私の買ったのはボーナスディスクが追加されている日本版でリリースはDatmare Recordingsから。
その道で高名な方々が集まって組まれたスーパーバンドいうやつでして
Aaron Turner  元isis
Nate Newton   Converge
Caleb Scofield  Cave In
Santos Montano Zozobra(上のCalebのバンド)
という面々です。
上の3人が曲ごとにボーカルとっているそうです。
ちなみにみんな大好きPlotkinさんがマスタリングです。

内容的にいうと実験的な要素が強いスラッジメタルでノイズ成分多し、と書くととっつきにくそうですが、意外にメロディがキャッチーだったりしてそんな構えなくても楽しめます。
ノイズな曲、ストレートに疾走する曲、2つの要素を混ぜた曲、ちょっといかがわしいアコースティックな曲、という感じにバリエーションもあるのでこのジャンルにありがちな「いいんだけど曲の区別がつかねえな…」というのもあまりないです。個性の強いメンバーが曲によってそれぞれの持ち味をうまーく出しているのだと思います。
私メタルが好きなのですが、メタルといえば過剰なところが魅力!過剰にすればするほどソリッドになっていきますが、一方で現実から遊離していくのではたからみると滑稽に見えてしまうことも往々にしてあると思います。その過剰さと同居する面白さというのを本人たちが面白がって作っているような印象を受けました。(不真面目に作っているというわけではないです。)

ここでインタビューが読めます。
ふざけているんですけど面白いです。(ふざけているから面白いというのでもないと思います。)
http://www.daymarerecordings.com/extra/oldmangloom/interview_2012_1.htm

一番キャッチーな曲をば。