2016年4月24日日曜日

Cobalt/Slow Forever

アメリカはコロラド州デンバーのブラックメタルバンドの4thアルバム。
2016年にProfound Lore Recordsからリリースされた。
Phil McSorleyのソロプロジェクトにErik Wunderが加わる形でキャリアがスタート。2003年に前身のバンドから名前を変えて活動。2009年までにアルバムを3枚リリースしたが、ボーカリストであるPhil McSorleyはアメリカ陸軍に所属しているためかその後の活動は停滞。(wikiをみるとバンド活動初期から軍人として生活しているようだ。)2013年に新しいアルバムの制作がアナウンスされるが、その後2014年にPhil McSorleyが脱退を表明。Erik一人バンドになってしまったがLord MantisというバンドのCharlie Fellをボーカルとして迎えた。CharlieはLord Mantisを脱退しているから引き抜いたのかもしれない。んでもって発売されたのがこのアルバムという訳。
私は彼らの3rdアルバム「Gin」はかなりお気に入りのアルバムだったのでうひょーとばかりに購入。

基本的な音楽性は前作から変わらず。標準からすると長めの尺でアバンギャルドな要素のあるブラックメタルを演奏している。
ギターの音質が特徴的なバンドでひたすら低音を意識する昨今の流れとはそぐわない、どちらかというと中音域を強調したソリッドかつ敢えて厚みを削ったカミソリの様なもの。高音を強調するとプリミティブ感が増すから中々面白い選択だと思う。このアルバムでも勿論健在。いわば攻撃性よりブラックメタルの禍々しさを表現しようとするバンドなのだが、前作のアルバムのアートワークにもヘミングウェイを大胆に用いてくるあたりからも分かる通り、その表現の仕方はかなり独特。ひたすらトレモロでつっぱしる訳でもなく、うねる様なリフが特徴で展開もやや複雑。前作ではJarboeをゲストにかなり大胆に女性ボーカルをフィーチャーしていたりした。今作は多分ゲストボーカルはいないんだろうが、ボーカルの無いパートをかなり長めにとったりとその実験性は損なわれていない。
実験性と行ってもその過激さの欠如の良い訳にしている感やよくわからない水増し感は皆無で、分かりやすいクリーンパートを導入すること無く不気味さの演出にフルでその才能を発揮している。一見非常に取っ付きにくい印象なのだが、疾走するパートに独特にフックがあってカッコいいこと(これは前作からの流れ)、それから例えば9曲目なんかはそうなんだが妙に哀愁のあるメロディをギターが奏でて来てとても様になっている。後者の方はブラックメタル界隈では珍しくない手法なんだけどCobaltとしては正直結構な新機軸だと思う。その他一切優しい印象が無い音楽なので結構効果的に利いていると思う。曲も長いのでこういったパートがあるのは個人的には嬉しい。

正直初め聴いた時は悪くはないのだけど前作に比べるとな〜と思ってしまったのだが、ボーカルの差異がなれてくればやはり良く練られた曲の巧みさが素直に耳から頭に入ってくる。素直に良いアルバムだと思う。特に中盤、7曲目「Cold Breaker」から後の流れは中々どうして素晴らしい。最後の曲だけちょっと他の曲からすると浮いているのが面白い。個人的にはボーカルは意識的に前任の声質にあわせようとしているのだろうが、もう少し高音より中音域を意識した自前の歌い方の方がその良さを出せるかも、と思う。そういった意味でも早くも次作に期待感。
アヴァンギャルドといってもかなり真面目に制作されたアルバムだと思う。やはりカッコいいな、とため息が出てしまう。オススメです。

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