2015年6月14日日曜日

Mrtyu!/Witchfucker

ニュージーランドのノイズ/ドローン/アンビエントプロジェクトの2nd?アルバム。
2012年にAurora Borealis Recordingsからリリースされた。
Mrtyuとはサンスクリット語で死を意味する単語だそうな。Antony Miltonという人のソロプエジェクトでこの人はPseudo Auroraというレーベルのオーナーをやりつつ、本名を含めて様々な変名で活躍している。
私は切っ掛けはもう忘れたが、2009年に発売されたアルバム「Ornate Shroud」というアルバムを購入して大いに気に入って、20 Buck Spinから2006年にリリースされていた「Blood Tantra (Rituels De Sang Du Culte De Tantra)」を購入、一時期結構聴いていた。派手に活動するアーティストでもないのでそれぎりになってしまっていたが、この間記事に書いたSutekh Hexenの音源を探していたらレーベルのBandcampでこの音源を見つけてこっちをすっと買った次第。

このMrtyu!というプロジェクトの音楽はノイズを主体とした音楽性は酷く攻撃的なものだが、激しさを追求したハーシュノイズというよりは、バンド名の通り退廃的かつ荒廃的な暗い音楽である。いわば死んだ後の絶対的静寂を音楽的に再現するような(絶対的な無音状態を五月蝿い音楽で表現するというこの矛盾、好きです。)試みがあって、結果だいぶ前衛的な音楽が出来上がっている。
五月蝿いながらもどこかしら放心した様な空虚さを追求した音楽性で、聴いているとノイズならではの常に蠢く不定形な音の波の洪水に飲み込まれるようで大いに気持ちがよい。
こう書くと結構取っ付きにくい印象なのだが、おそらくロックの影響を結構取り入れていて、おぼろげながらもドラムがあるかなきかのリズムを刻んだり、うっすらとシンセ音のメロディらしくものがかすかにたどれたり、このアルバムではなかったけどアコースティックなギターが流麗なアルペジオを奏でたりする。いわば聴きやすいポイントが随所にちりばめられているので私の様な軽薄なロックファンでもすんなり聴ける。
不穏なアンビエントっぽさも一つの売りで、ゴーンという鐘の音がなんとなく和風な雰囲気を醸し出して夜の寺に侵入して墓地の真ん中で佇んでみました、という趣な曲もあったりする。
個人的にこのプロジェクトの真骨頂は五月蝿いノイズが喧しく鳴り響くのに、微妙なメロディを聴かせてくるというパターンであって、とにかくこれが泣ける(泣かないけど。)あざといくらいにぐっと来る。アルバムタイトルにもなっている「Witchfucker」がなんとも素晴らしい出来で、低音ながらも透明感のあるシンセ音にしみ出して来た様な細いノイズが被さるイントロから殺しにかかって来ている。ミニマルかつ冷徹なシンセと対照的ににノイズは悲鳴をあげつづけ、たまにデジタルっぽいバスドラムがリズムを刻む。霧のようにかすかなシンセ音が空間的な色づけをする。ノイズは悲鳴を上げ続ける。とにかくどの楽器でもアタックの後の残響の余韻に美しさを見いだすような人間ならこの音楽の素晴らしさを分かち合えるのではと思う。
ノイズをコントロールするのではなくむしろ思うままに放埒に任せて、曲全体に他の要素である程度の反復性だったり目立たないメロディだったりを付与する事で秩序らしきものをもたらすという面ではBen Frostに少し似ているかもしれない。

個人的にはタイトル曲だけで本当何回リピートでもいけるまさにトリップ盤。
興味ある人は是非どうぞ!!!
Bandcampで気軽に購入できますよ〜。

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