この間リリースされた色々なアーティストとのコラボレーション企画版「The Divine Move」と同じくWorld's End Girlfriendの主催するレーベルVirgine Babylon Recordsから2014年にリリースされた。
Vampilliaは2005年に大阪で結成されたバンドだから、だいたい1stアルバムが出るまで9年かかったことになる。すごく長いがその間にもコラボ含めたかなりの音源をリリースしているから、大分いろいろやってますけど、あれまだ出てなかったの?という感じだろうか。私は彼らの音源をすべて網羅してる訳ではないからあれだけど、そうやって思い返してみるとどれも尖った音源だが、なるほどフルアルバムというのとはちょっと違うのかとも思う。コラボはコラボだし、単独音源なんかも企画版じゃないけど結構コンセプチュアルな作りになっているようだから。
インタビューなどを読むと実は結構前にAnimal Collectiveの人なんかと作っていたらしいけど、諸般の事情でお蔵入りになったからそういった事情もあって、待望のという形でリリースされたのが今作。タイトルが長いけど「オーロラの虹の暗闇の中の私の美しく歪んだ悪夢達」とでも訳すか。(調べたらカニエ・ウェストのアルバムのもじりっぽい。)全編アイスランドのレイキャビックのグリーンハウススタジオで収録されてWorld's End Girlfriendがリミックスを手がけている。マスタリングはKashiwa Daisuke(気になっているけどまだちゃんと聴いたことない)。ゲストミュージシャンとしてツジコノリコとJarboeがそれぞれボーカルで参加しているほか、アイスランド地元のストリング隊と聖歌隊がレコーディングに参加している。
基本は今までの流れを汲む静と動を意識したプログレッシブなメタルで、ピアノとストリングスを入れることでその音楽性の裾を広げているが、決して大仰になりすぎず、あくまでもバンドサウンド。
突っ走るところはツインドラムを活かしたグラインドコアはだしの轟音スタイルで、なんといってもブラックメタルからの影響がありそうな(特に今作は要素はありつつも全体の音像は全くブラックメタルっぽくなない。)、トレモロいギターがグイグイ引っ張りまくる。モンゴロイドのデス声はいつもにましてデス声でかなーりドスの利いたスタイル。
オペラ声も非常に堂々としたもので荘厳かつ歪んだバロックとでも例えれば良いのか。
ドラムやギター、ベースなどのバンドサウンドがその音のでかさでもって曲を派手なものにしているところ、曲の完成度を上げるのに一役買っているピアノがとにかくすばらしい。ピアノという楽器はとにかくすごい存在感があって、印象的なフレーズ一つで曲の雰囲気ががらりと変わってくる。特に静と動を強く打ち出すこのバンドではあっという間に静謐な空気を作るには不可欠な存在ではなかろうか。
曲の展開はめまぐるしく変わり、メタルや独特のアンビエンス、ハーシュノイズ、クラシック様々な要素をアルバム単位、曲単位で矢継ぎ早に繰り出してくるそのスタイルは、例えば四季だったり喜怒哀楽の感情を早回しで再現しようとする試みのように難解かつ普遍的なもので、個人的にはとても好きだ。すべての数ある要素がその雑多さ故に曖昧にならず、強い個性でもって共存しているこのバランス感覚がVampilliaというバンドの一番優れているところかもしれないと思った。
初めてのフルアルバムということで今まで積み上げて来た経験でもって直球勝負する様な、意外にも真面目この上ない内容である。一歩も引かない気迫でもってすっと差し出された名刺のようにいさぎが良いものである。全編奇を衒っている様なバンドなのにこのアルバムを聴くと意外にも衒ってない感があってちょっと驚いたものである。
やっぱりVampilliaはすごいなあ、と素直に感心してしまったアルバム。
いやー本当こういう人たちが日本にいてくれて嬉しいす。
文句なしにとてもオススメ。是非聴いてほしい
(このバンドが初めての人は前作「the divine move」のが良いかもしれない。)
ちなみにレーベル直販特典はendless summer の8bitバージョン。意外に味があるね…なんとなくROM=PARIっぽくて私は好きです。
一つ気になるのはブックレットに「R.I.P. Psychic Yamanashi」と書かれていること。サイキック山梨とはVampilliaのボーカルで白塗りピエロのゲス声担当の人(多分ベースのミッチさんとは別人だと思うのだけど。)で「Heyoah」のMVでその姿を見ることが出来る。最近姿が見えないので抜けたのかなあと思っていたけど、亡くなってしまったのだろうか…だとしたたら非常に残念なことだ。
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