ベルギーは首都ブリュッセルのハードコア/メタルコアバンドの1stEP。1998年にReleased Power Productionsからリリースされた。
2013年に(そしてその以前にも)来日経験のあるバンドだがすでに解散している。メンバーは結成当初ストレートエッジでヴィーガンだった。(後にはそうでなくなっている。)
なんて言ってもArkangel(大天使を意味するArch Angelをもじった)というバンド名、そしてキリスト教の宗教画からとったこってりしたジャケットアート。物々しいタイトルも宗教的なモチーフから拝借してきているようだ。どう考えても臭いメロディが売りのパワーメタルバンドといった風情だが、中身はというとガチガチのハードコア。(サブ)ジャンル的にはフューリー・エッジ(Fury Edge)というジャンルにカテゴライズされる。単音系のリフ(Slayerからの影響と書かれている事が多い)を多く用いることが特徴。
「聞こえない耳に向けた祈り」というタイトルはなんとなく詩的だが、実際は難聴者にでも確実に届くような轟音のハードコア。やはり基本的なギターのリフが単音で構成されているのが特徴的か。エモ/ポスト系の分野で低音リフにかぶせてくるメロディアスな高音とは一線を画す、邪悪でぶっきらぼうフレーズという感じで、マスロック(コア)やテクデスにありがちなピロピロさは皆無で単音と言っても重量感がある。ハードコアは速度でもって曲に高低差をつけるのが特徴的だが、この高音リフに関してもいざというときの低音リフとの差別化をこれによって増強していると捉えるとなるほどハードコア的なやり口だと思う。ボーカルに関してもややしゃがれ要素が入っていて、オールドスクールなマッチョなハードコアとは一線を画すタイプ。
不思議だと思うのはなぜこれがメタルではないのかということだ。こちらの予備知識があることも大きいだろうが、それにしてもSlayerから拝借してきた単音リフを主体に曲を作っているのになぜハードコアに聞こえるのか?というのが気になる。やはり疾走感の意図的な殺し方、それからつんのめるようなリズム(これは拍のとり方という意味で勉強したいと強烈に思う。)で出すグルーヴ感だろうか。要するに音だけはメタルからとってきて、ハードコア的な曲作りというか使い方をしているからだと思う。速度が遅くてもドゥームのズルズル感とは違う、歯切れよく刻んでいくのだが、スラッシュの明快さとは違った粘っこさがあるので、結果いわゆるハードコア的な”ブルータル”さが生まれているのはなかろうか。
かなりゴテゴテしていて、ブルータルにかつ洗練されていく昨今のハードコアの流れではきっと生まれないのではというセンス。ともするとメタル的である、つまり悪い言い方をすればダサい(メタルがダサいというのではないです。)ということになってしまうかも知れないからだ。強さが支配するハードコアの世界では結構致命的なのではなかろうか。しかし出来上がった音を聞けば昨今のどのバンドには醸し出せない、ヤバさ(強さ、ヒップホップで言うillだったりdopeだったり)を出しているのが面白い。いわゆるギャングスタ的な悪さとは異なることも特筆すべきかもしれない。十字軍の栄光が結果的に地に落ちたように、突き詰めた正義感がもつ危うさを感じさせる面白いバンド。ハードコアに邪悪さを持ち込むという意味ではDead Eyes Underにすこし似ているけど、露悪的雰囲気を持つなこちらに対してArkangelのほうがユーモアがないぶんもっと余裕がなく張り詰めている印象。
最近こればっかり聴いている感じがある。なにげに歌詞も結構面白いというか馬鹿にできない完成された詩的な世界観があるなと思う。
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