2016年9月18日日曜日

ColdWorld/Autumn

ドイツはライプツィヒのブラックメタルバンドの2ndアルバム。
2016年にCold Dimentionsよりリリースされた。
アメリカのハードコアバンドCold Worldとは勿論別もの。
Georg Börnerという渋いおじさまがすべての楽器を演奏しているソロプロジェクトのようだ。このプロジェクトは2005年に開始されている。マイペースに活動しているようだ。
私は全然知らなかったのだが、アルバム発売前にみた動画が気に入って購入した。CDを購入。デジタルはあるのかちょっと分からない。
バンド名で検索すると1stのレビューが結構出てくる。なにげに日本では人気なのかもしれない。

「秋」というタイトルが良い。コールドなブラックメタルだと厳しい冬のイメージだが、ちょっとそこからは外して来ている。Panopticonも「Autumn Eternal」というアルバムをリリースしていたし、四季の中では秋が一番好きな私は期待があがる。
ジャケットの女性のアートワークが象徴するように「メランコリー」をテーマにしたバンドで(FBにもそう記してある)、ブラックメタルのフォーマットでそれを表現している。元々ブラックメタルは暗い音楽だから、メランコリーを表現しようとする試み自体は珍しくないが、どうしてもShiningのようなデプレッシブだったり、Tristのようなスーサイド系に走りがちだったりする中、血なまぐさくない幻想的な物語という音楽に舵を取るのは実は珍しいかもしれない。またデプレッシブにしても”メタル”なので(特に前述のShiningなんかも)たとえ自分に向けだとしても攻撃的(自殺も勿論自傷行為)な一面をもっているものがだが、このバンドに関してはあまり(イーヴィルなシャウトは入るのであまりと表現)それらも感じられない。美麗なブラックメタルというとAlcestをはじめとしたシューゲイザーに接近した(一部のバンドの)キラキラした感じはない。そこまでは洗練されてもあか抜けてもいなく、やっぱり鬱屈としている。適度にガリガリとしたプリミティブさを残しつつも中速くらいのスピードで多恵なるメロディを持つトレモロを奏でるギターが最大の特徴で、そこにバイオリンなどのストリングス(実際の楽器なのか打ち込みなのかは不明)や女性のボーカルを大胆に投入してくる。キーボードも勿論あり。アコースティックギターを始め、牧歌的な雰囲気も曲によってはかなりある。ボーカルはクリーンとイーヴィルなブラックメタルのシャウトの使い分けだが、前者の方が出番が多いかもしれない。こちらはかなり朗々とした威厳のある声だが、やはりその雄々しさの中にも陰鬱としたあきらめの様なものが感じられていて非常にバンドの表現する世界観を盛り上げてくる。ストリングスの導入などでドラマチックな雰囲気は横溢しているのだが、面白いのはメロディにしてもそこまでくどい(またはクサいとも評してもよいかも)訳ではなく、この手のジャンルにはない上品さが意識されている。「儚い」といってもいいかもしれない、この幻想的な景色には常に脆さがつきまとい、起きたら消える夢か、もしくは触ったら壊れそうな結晶に移った影絵のようだ。とかくなんでもやり過ぎてしまうメタルの世界ではこのようなバランス感覚はちょっと希有なのではなかろうか。比較的ブラックメタル然とした「Climax of Sorrow」はシャウトが強烈でなんならちょっとアルバムの中で異彩を放つくらいだ。

メタルは勿論様式美の世界だから基本的に強い物語性が魅力のジャンルだと思う。そんな中何とも言えない寂寞とした光景を冷たく、そして暖かく描き出しているという意味で非常にかっこ良いアルバム。幻想的、ということばが非常にしっくり来る何とも儚い虚構の世界、大変美しい。ブラックメタルにそこら辺の物語を求めてしまう貴方は是非どうぞ。オススメ。

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