2014年にMetal Blade Recordsからリリースされた。
グラインドコアの要素を取り入れた超速いブラックメタルを基調とした音楽性は過激な反面音楽好きの心をガッチリ掴んで日本でも結構人気なのではないでしょうか。私は実はフルアルバムを買うのは初めてなのだが、別にみんなが聴いているから買わないとかではなくて、多分学生の頃に「When Fire Rains Down from the Sky, Mankind Will Reap as It Has Sown」という彼らのEPを買った事があるんだけど、良くない!とは言わないがふうむ、という感じでそこまで刺さらなかった。当時はブラックメタルというジャンルを今ほど知らなかったし、本当に何故フルアルバムを買わなかったのか今でも我ながら解せないのだがまあ仕方なかったのかという感じ。なんでその後何枚もアルバムがでてもまあいいかって感じで聴いてこなかったし、今回ニューアルバムでても特に注目もしていなかったのだが、偶然youtubeでこのアルバム収録の「Idol」という曲を聴いたらとてもカッコいい!という訳で買った次第。
イントロのインストを皮切りに本編が開始されるとテンションの高さにビビるくらい。
あれ大分印象が違う。
速いし五月蝿い。竜巻の様な演奏をバックに、色々なレビューでたびたび「キチガイ」と称されているボーカルがギャーギャーわめいているのに呆然としているとなんだかすごくメロいサビが飛び出してくる。あれよと思っていると業火のように激しい演奏が舞い戻ってくるといった寸法であるからに、聞き手としてこんなに面白い事は無いだろう。
ボーカルはブラックメタルのイーヴィルなものから儚さの要素を一切排して、禍々しさを突き詰めたもので声量があるし、もはや言葉なのかどうかすら妖しい叫びをときに演奏を無視したかのように縦横無尽に吐き散らすものでなるほどこれは巷間の危ない評価もうべなるかなと納得の出来である。さらにグロウルめいた低音が残虐性をまし、サビを担当するメロディあすな歌唱法も妙に荘厳なオペラを彷彿とさせる怪しさをもっていて、おまえちょっとどれだけ詰め込むんだ…とこちらを途方に暮れさせる様はまったくもってメタルの神髄としか言いようが無いエクストリームさではないか。
演奏陣はもう一人のメンバーが一手に担っているとの事で、故に非情に統一感のあるカッチリしたもの。かつては割とプリミティブなブラックをやっていたということもあり、往年のブラックメタルに敬意をはらった伝統的なものなのだろうが、そこはまたその要素をもとに過剰にブースとさせた様な代物になっている。吹雪の様なトレモロは高音ではなく中音から低音の音の幅の厚いものが主体になっていて最早雪崩の様な迫力。そこにギチギチしたノイズをのせる。曲自体は荘厳なサビのメロディもあって大仰ではあるのだが、ありがちなオーケストラアレンジをのせる訳ではなく、その凶暴な野卑さを隠そうともせずあくまでも下品なインダストリアル音をのせるあたり、不敵としかいいようがない。
面白いのは曲によっては結構ドラムの音があからさまに電子由来の音にされているところ。私は聴くだけの消費者で作り手の事は全く持って分からないが、デジタル音源が進化している昨今デジタルでも実際の楽器の音とほぼ同じように音が作れるのではなかろうか。またそうでなくても実際に誰かに生でドラムを叩いてもらえば良いところ、このバンドは敢えて電子由来のドラムをそれと分かるように使っている。これは明らかに意図的だし、これが自分たちの売りである事を意識しているのだろうと思う。これが楽曲にもたらす効果をはっきり汲み取れる訳ではないが、なにか別の、という異質感をひとつ突き詰めるのに一役買っていそうである。ブラックメタルというかなり先鋭的なそのジャンルからさらに一歩異質さで先んじてやろう、というそういう尖りまくった意思が垣間見える(と思う)。
もはやチートとも言うべき、僕らの考えた最強のブラックメタルを突き詰めた一つの方向性の指標なのかもしれない。素晴らしいのは彼らなりの最強のブラックメタルが中二のノートの落書きから端を発するにしても、結果として真面目な大人達ががっつり洗練された完成系に結実させている事だろう。完成度がスゲエ。という訳でとてもカッコいい。昔の感想を引きずらないでもっとはやく再確認しておけば良かったなあと反省。まだ聴いていな人はぜひどうぞ。
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