2013年にKrankeyからリリースされた。
私が持っているのはライナーとボーナストラックが1曲追加された日本版。
Tim Heckerというとアンビエント界隈ではとても著名なミュージシャンだと思うが、私はNadjaのAidan Bakerとコラボしたアルバムしか持っていないのだった。
ネットで評判だったので買ってみた。というのも全体的にピアノが中心に据えられた音作りのようだったから。私はギターを前面に押し出したメタル音楽ばかり聴いていて、勿論暴力的にゆがめられたバンドサウンドがこの上なく好きなのだが、昔からピアノという楽器にあこがれがあるのである。なんと言っても澄み切ったような音と、鍵盤を叩いた後の音の余韻がたまらなく琴線に触れるのである。
基本はドローンということになるのであろうと思う。
重みのある太い音、か細い糸のような音、様々な音がすーっと後ろに伸びていく。コントラストのように少しずつ変わっていく音。ジリジリとしたノイズ。貼付けていくように多様な音が追加されて以外にもカラフルな音像が出来上がる。
アンビエントな静謐性に加えて潮が満ちてくるようなカタルシスがあって、ぐわーっと高まってきたかと思うとあっという間に引いていくような、そんな趣があって面白い。
ビートは極力排除されていて乗るというよりは、沈み込むような陶酔感がある。
そこにピアノが入ってくる訳だが、これがすごい。ピアノというのは兎に角雰囲気に幅のある楽器だと思う。このアルバムでは勿論楽しいようなピアノはないのだが、一口に暗いと言ってもその実かなり豊かなバリエーションがある。つま弾くように引かれるはかない感じ。妙に歪んであるフレーズが執拗に繰り返される病的な感じ。どれもさすがの表現力だが、やはりピアノ特有の空間に響くような透明な感じと、尾を引くような残響があってこれがたまらない。胸が締め付けられるような切なさである。
なるほど高評価を受けるのが納得の出来であった。是非どうぞ。
ちなみに日本版は少し割高になってしまうが、ダウンロード形式になっているボーナストラックがとても格好いいので、これから買おうという人には日本版をお勧めしたい。
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