このブログだとクトゥルーと記載しているけど、クトゥルフのほうがメジャーなのかなあ。まあそもそも人間には発音できない音節とのことなのでどちらでもいいか…
扶桑社から出ているクトゥルーものの独自アンソロジー第2弾。
タイタス・クロウシリーズで有名なブライアン・ラムレイを始めこの道では結構よく知られた作家3人によるアンソロジー。全部で4つの比較的長目の短編中編が編まれています。
ラムジー・キャンベル「ムーン・レンズ」
マーシーヒル病院のジェイムズ・リンクウッド医師のもとに深夜レインコートに身を包んだ怪しい男が訪れる。「死なせてほしい」と懇願する男の話は医師の想像を絶する内容で…
「湖畔の住人」
感受性豊かな作家の友人が引っ越したのはある湖畔にたたずむ曰く付きの廃屋寸前の屋敷。主人公は不可思議な悪夢に悩まされるようになった友人を訪れるが…
コリン・ウィルソン「古きものたちの墓」
不思議な縁で南極調査に同行することになった主人公。分厚い氷の下には有史以前の人間以外の手による文明がねむっているという。そこはかつて異端の作家ラブクラフトが「狂気の山脈にて」で舞台にした場所だった。
ブライアン・ラムレイ「けがれ」
とある寂れた山村に越してきた引退した医師。何かにおびえるように暮らす母親と娘。そして妙に魚のような風貌をした不思議な若者。彼らの背後には呪われた町インスマスの影が…
ラムジー・キャンベルの2編はオールドスクールな神話を踏襲した形で安心感すら覚える佳作。伝聞と手紙というかたちで展開される物語は独特の恐怖感が非常に生々しく迫ってくる。恐らくそこに客観性が生じるためであろうか。直接主人公たちが見聞きしたという形で進められる物語とは違った風情がある。
この短編集では神話のオリジネイターラブクラフトの超名作「狂気の山脈にて」と「インスマスを覆う影」を題材とした「その後の話」が載っているが目玉だろうか。
独特のオカルト論をクトゥルーに盛り込んだコリン・ウィルソンの手腕はさすがか。科学小説とオカルトが融合した南極探検譚が少しずつ恐怖に浸食されてクライマックスに進む様はまさに「狂気の山脈にて」の続編にふさわしいのかも。
ブライアン・ラムレイ。実は「タイタス・クロウの帰還」を読んでげんなりがっかりして以来なんとなく敬遠していたけどやっぱりうまいなあ。神話の持つおどろおどろしさ。隣人たちが人間じゃないのでは?という伝統的な乗っ取り要素も盛り込まれていてグッド。
比較的オーソドックスなスタイルのクトゥルー神話がおさめられているので、題名の通り初めて神話に触れる人にはぴったりかも。勿論クトゥルーファンも安心の一冊。おすすめです。
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