2012年にSummitというレーベルからリリース。
この間紹介したSIMI LABのアルバムがとても格好よかったけど、2ndアルバムはまだ出てない。じゃあということで買ったのがOMSBさんのソロアルバム。結構いろんな人がソロアルバムを出しているんだけどなんとなくOMSBさんから買ってみることに。
このジャンルには全く詳しくないのでスキル云々や韻を踏む言葉の選定なんかは全然善し悪しが分からないとまずは断っておく。
しかし彼のアルバムはとっても格好いい、まずはラッパーOMSBから。
SIMI LABのアルバムを聴いたときは個人的に一番聴きやすいな、と思った。恐らく多分リズム感が抜群にいいんだね、この人は。ヒップホップは音数が圧倒的に少ないから、曲の主役はラップであるは後ろでなっているビートとずれてしまうと結構露骨に聴いている方にも分かっちゃう。けど、OMSBはここら辺がうまくてそつなくこなしてくる一方妙な言葉言い回しでギリっと切り抜けるような楽しさがある。ばしっと決まるところであえて言葉の途中で切って、次のビートにラップをつなげる感じ。声は結構クリアなんだが、感情がこもってくると妙に粘っこく嫌らしくなるところもグッド。兎に角ラップに緩急があって聴いているほうを飽きさせない。
で、次はトラックメイカーOMSB。
彼は自分でトラックも作っちゃうマルチなやつ。このアルバムは16曲収録なんだけど、全部自分で作っているようだ。OMSBとWah Nah Michaelという2つの名義を使い分けている。いかにもヒップホップ然とした音数の少ないトラックからびょんびょんした音、フリーキーなよく叩くドラム、テクノっぽいトラックまで結構多彩で面白いです。
さて曲な方はというと、初め聴いたときは結構悪っぽいな!と思った。悪そうなヒップホップである。強そう悪そうが売りなイケイケな(私の勝手なイメージです。)あれである。おお、おお、と思って聴いているうちにあれ?ちょっと暗ーい感じになってきましたよ。不思議。
このアルバム恐らく意識していると思うのだが、曲順が後半に進むに従って彼の内面に踏み込んでいくように設定されているように感じる。恐らく途中のインストが転換となってそれ以降は(まさにでFogって曲もあるんだけど)全体の曲調も進むにつれてどんどん煙ったくなってくるようだ。
歌詞(リリック)もかなり個人的になってくる。ラッパーとしての生活から、それを含む個人の生活に視点が移動した感じ。SIMI LABのレビューでもちょっと書いたけど、出自とそれに起因するいろいろがかなり赤裸々な言葉で綴られている。これすごいな、と思ったのはOMSBは結構面白みのある人で言葉の選定もウィットに富んでいる。怖そうに見えて意外にリスナーを楽しませようとしている姿勢が伺えるんだけど、アルバムの後半に関してはそんな気遣いや修飾がどんどん削られていって、生の声に近くなっているようだ。内省的な歌詞と暗い曲調。メジャーだろうがインディーズだろうがミュージシャンというのはある種の偶像を期待されるものだ。どんなに等身大を売りにしても演じる部分が多かれ少なかれあるものだと個人的には思っている。そういった意味ではちょっと生々しすぎてしまうと感じる人もいるかもしれない。しかし私は大歓迎。鬼気迫るような気持ちのこもった音楽というはいいものだ。真剣さがある。馬鹿にしない態度だ。つまり聴いている人に語りかける音楽だ。
アルバムの最後Hustle2112という曲にこういうフレーズがある。
「何百年後も俺のBoom Rapがキミの耳元届くように祈る」
なんとも格好いい。ちょっと青臭いけど音楽作っているなら私はこういうことをいえる人が好きだな。
というわけで私はとても気に入りました。
Hip-Hopには詳しくないけど、音楽としては文句なしに格好いい。
悪いだけじゃない悩んでいる、鬱屈して爆発しそうなアルバムです。
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