2016年2月7日日曜日

Prurient/Frozen Niagara Falls

アメリカはニューヨーク州ニューヨークを活動の拠点とするアーティストのアルバム。
2015年にProfound Lore Recordsからリリースされた。
一個前のアルバム「Bermuda Drain」を持っていてこちらも買わないとなと思っているうちに時間が経ってしまった。複数の人が2015年ベストに入れてもいたし、遅まきながら購入した次第。私が買ったのはデジタル版だがCDだと2枚組、全16曲で1時間半というなかなかの大作である。

Prurientは様々な変名やプロジェクトで活動する(私が音源を持っているのは多分Vatican Shadowくらいだと思う)Ian Dominick Fernowという人物(どうももの凄い多作なひとらしい。)がソロでやっているユニット。ジャンルとしてはパワーエレクトロ/ノイズなのだろうが、この人は独特の美学を持っているらしく、私もこのジャンルに明るい訳ではないがそれでも分かるくらい尖った音楽を作っている。
まずはその幅の広さ、凶悪なノイズを披露する事もあれば、ドローンめいたアンビエントなもの、アコースティックギターやピアノを取り入れた美麗なものなど。音数自体は決して多くない(ノイズの場合は音数分からないし、勿論音数が少なくても超五月蝿い曲も沢山あるのだ)がそのバリエーションは豊富だ。どれも質は高く、しかも散漫な印象は無い。Pruirientというのは懐の広さに共通して名状しがたい”暗さ”という太い軸を一本通す事で、完全にその楽曲群を統制している印象がある。後述する特徴もあってPrurient節みたいなのが全編を陰鬱に覆っている。いわば表現すべき風景があって、様々な道具や演奏法でもってその世界を構築しようと言う試みである、という姿勢を何となく感じさせる。虚無的な美というものがあって、ノイズの使い方もただ五月蝿いというのはほぼ無い。特にこのアルバムに関しては強くそう思った。垂れ流し感は皆無で全編に渡って良くコントロールされている印象。ノイズと対をなす様な浮遊感のあるアンビエントなシンセ音の使い方は堂に入ったもので、足下を這う霧のように聴いている人を異界に迷い込ませる作用がある。その静寂にノイズを忍ばせてくるあたりはコントラストが利いていて個人的には好きな手法である。
さてそんな五月蝿くも美しい世界をぶちこわさんばかりに本人の絶叫をいれてくるのがPrurientのやり方でこれがもの凄く怖い。バンドのボーカリストとはやはり違うのかよくも悪くも不安定で、極限にまで追いつめられた男の絶叫に他ならない。ある意味凶暴性のなかの美を一切取り去ったような原始的なもので、曲によっては演奏の対極にあるものである。いわば折角作った美というものをこの絶叫で持って台無しにぶっ壊してやろう、というもう歪みまくった底意地の悪さが感じられて、奇麗な曲が続いたりするとそろそろ包んじゃないかとドキドキしたりして、すっかりこの要素に見せられている自分を発見するのである。
一癖も二癖もある音楽性だが、今作は前述の通り、激しさは引き続き存在しつつも一枚ベールを噛ませた様なアンビエント性が全体を覆っている様な印象。より不穏になったというイメージで個人的には前作寄りはこちらの方が好きだと思う。より潜行し、内省的になっている。捻くれた音楽が好きな人は是非どうぞ。オススメ。

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