2015年7月4日土曜日

Refused/The Shape of Punk to Come

スウェーデンはウメオのハードコアパンクバンドの3rdアルバム。
1998年にBurning Heart Recordsからリリースされた。
ハードコアパンク界では有名なアルバム。かくいう私も妙にレトロ感のあるアートワークだけはどこかで見知っていた。このRefusedというバンドはこのアルバムを出した後、活動を休止してしまったのだが、2014年に再始動を果たし、2015年実に17年ぶりの4thアルバムをリリースする(もう現時点ではしているのだが)ということで話題になっている。そのタイミングでまずは名盤と誉れ高いこのアルバムを買ってみた。
「The Shape of Punk to Come」というタイトルはConvergeのBenらのバンドUnited Nationsが曲名でもじってたな〜と思っていたら、何と元ネタのさらに元ネタのアルバムがあるらしい。1959年のOrnette Colemanという人の「The Shape of Jazz to Come」。

さてそんな界隈からタイトルを拝借してくるくらい、そして「来るべきパンクの形」という中々過激なタイトルをつけてしまうくらい前衛的なスタイルのハードコアをならしている。
圧倒的にハードコアパンクの形式に則りながらも、ジャズや電子音、それだけでなくガッツンガッツンしたメタル感のあるリフや、妙にフックのあるメロディラインなどなどハードコアパンク以外の要素を大胆に取り入れた音楽を演奏している。全くパンクらしくないがインタールード的なテクノトラックをのぞけば曲はだいたい4分台か5分台だから(1分から長くて8分台まであるが)、ピュアなハードコアパンクにしてはの尺が少し長め。勿論疾走するパートは速めなのだが、それ一辺倒にならない、つまり速度を犠牲にしてもそれを補ってあまりある個性を取りにいっているバンドといえる。
全体的に音質はクリアで、各楽器の音がまとまりはありつつ、キッチリ分離して聴こえる。ドラムは歯切れの良い乾いて張った音で、ベースは硬質な音でガロガロいうスタイル。ギターは乾いた音で音圧至上主義ではなく、たまに妙にビンテージなロック的にも聴こえる。透明感のあるアルペジオだったり、ジャジーなリフだったりととにかく多彩な演奏スタイルでバンドの普通じゃない感をになっている。ボーカルはまさにハードコアな感じで血管が切れそうなテンションの高いわめき声。アンビエントパートでは一点憂いのあるクリーンボーカルも披露。
このバンドは曲作りの才能が突出していて、普通一つの楽曲に要素をぶち込みすぎたら結果なんなのかさっぱり分からなくなるのだろうが、パンクを下地に様々な要素を追加しても曲の良さはちっとも損なわれていないばかりか、既知の音楽と似ていないくせに耳にしっかり入ってくる。安易なメロディへの接近などは皆無で全編シリアスなのだが、このバンドはの音楽は”楽しい”ものであると思うし、複雑怪奇な音楽性は勿論だが、最大の魅力はこの楽しさだろう。なんだかよくわからんが楽しいのだ。体が動いちゃうあの感じだ。恐らく全編通してからっとした音楽性である事。そしてさらに独特の跳ねる様なリズムがぶっとい背骨のように曲とアルバムをがっしりと一本でつないでいる様な感じがある。この跳ねるリズムこそがフックのある楽曲を生み出し、スピードを落としてまでも彼らが獲得したかった一つの魔法の様なものだろうと思う。
また不思議なのは多様な音楽を取り入れつつも包括的に見ればまぎれも無くハードコア二聴こえる事だ。例えばサビだけクリーンでメロディを歌い上げる様なある種ありふれた分かりやすさは無い訳で、難解ではないにしても相当凝った音楽性ではあるのに隠し様の無いパンクの精神が聴いてとれるのだ。ハードコアはストレートが心情だとするとかなりキテレツなハードコアパンクではあるのだが、見えにくい真意もねじ曲がった曲の向こう側に意外にピュアなものが感じ取れるようだ。
私が今更言うまでもないが名盤出ある事は間違いない。まだ聴いていない人は是非どうぞなオススメ音楽です。

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