ドイツはベルリンを中心に活動するエクスペリメンタルメタル/プログレッシブスラッジメタルバンドの6thアルバム。
ちなみにバンド名はThe OceanとThe Ocean Collectiveというのと2種類あります。権利の関係かな。
Metal Blade Recordsから2013年にリリースされた。
Metallumのバンドのページを見ると過去のメンバーが多い!結構入れ替わりが激しいようだけど、中にはConvergeのNateさんや、Cave InのCalebさんが名を連ねている。どうもゲストボーカルをつとめていたようだけど、私はそのアルバムは聴いたことがないです。
さてこのアルバム、ちょっと面白い特徴がいくつかあります。
まずは2枚組というところ、といっても片一方のディスクはもう片方の歌なしバージョンが収録されております。懐かしのカラオケバージョン(今も日本のシングルにはカラオケバージョンが入っているのだろうか…)か!という感じですが、このバンド演奏が非常に面白いんですよ。プログレシッブな展開もそうですが、リフが非常に凝っていて、かつ非常に豊富なんです。一曲でもほかのバンドの2曲くらいの密度があるような勢いです。だから歌なしのインストだけ聴いても普通に楽しめます。そういった意味ではこの2枚組というやり方もバンドの自信の表れかもしれません。
もう一個の特徴ははというと、まず曲名をみていただきたい。
01. Epipelagic
02. Mesopelagic: Into the Uncanny
03. Bathyalpelagic I: Impasses
04. Bathyalpelagic II: The Wish in Dreams
05. Bathyalpelagic III: Disequillibrated
06. Abyssopelagic I: Boundless Vasts
07. Abyssopelagic II: Signals of Anxiety
08. Hadopelagic I: Omen of the Deep
09. Hadopelagic II: Let Them Believe
10. Demersal: Cognitive Dissonance
11. Benthic: The Origin of Our Wishes
というように曲のタイトルの前に何やら見慣れない単語がくっついていますね。
実はこれどうやら海の深度を表す単語だそうです。
1曲目が一番浅い海面付近の層、どんどん潜っていて最終的には深海にたどり着く、という曲順になっています。
ちなみにアルバムのタイトル「Pelagial」とは海の深さの層自体をまとめて表現した言葉だそうです。
(詳しくはこちらを。http://en.wikipedia.org/wiki/Pelagic_zone)
言わばコンセプチュアルなアルバムといっていい訳です。
さてバンドの名前がThe Oceanですから、このアルバムはバンドにとって特別な、俺たちの本質を、深みを見せてやるぜ!的な満を持して出された集大成的なアルバムであるということがわかりますね。これは聴く前から否応無しに期待が高まるというもの。
実際に聴いてみるとこれが素晴らしい。
このバンドの良さはその多彩さだと思うのです。ブルータルなメタルをベースにしながら、その範疇にとどまらない変幻自在性を持ち、そしてその縦横無尽さを決して散漫にさせず一つの曲にまとめあげる抜群のバランス感覚を持っている。非常にテクニカルなのですが、曲全体の完成度を重視しひけらかしのようなパートは皆無。
重いギターが重厚なリフをならすかと思えばいつの間にか静かなアコースティックギターがアンビエントな音色を奏でている。まさに刻一刻とその表情を変える海の様です。
電子音やキーボードがごくごく自然に挿入されて曲を豊かなものにしており、また選任ボーカルがとても良い。デス声ではない野獣的な咆哮から、吐き捨てるようなスクリーム、歌心のあるクリーンボーカルまで多彩にこなします。
深度を増していくと、比例して高まる水圧に押しつぶされるようなある種暴力的なアルバムかと身構えていたのだが、彼らの表現した深さというのは単に垂直方向だけでなかったようだ。進めば進むほど広がりを増していくようだ。しかし音の粒は重く、濃厚だ。まさに深海。深海には私たちが知らないような脅威の世界が広がっているそうだ。冷たく暗いかと思えば、火山が口を開け、燃え盛る溶岩で海水が沸騰している。そうして奇天烈な生物が闊歩している。次に何が待ち受けているか分からない暗闇の世界はまさに、変幻自在のプログレッシブ性を持つこのバンドにあっているといえる。進むにつれて水圧を増していく世界。気づくとあたりは真っ暗になっている。潜行の果てにたどり着いた深海の底はどういった世界なのか。ぜひ聴いて確かめていただきたい。
こりゃーすごいアルバムです。めちゃくちゃおすすめ。
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