2013年MetalbladeとRiseAboveから。
Cathedralは元Napalm DeathのボーカルLee Dorianさんが中心になって1989年に結成されたバンド。Napalm Deathといえばトリビアの泉にも出演してたりで知名度の高い、グラインドコア(すごい速いメタル)の帝王ともいえるバンドだから、Leeさんは極端に速いジャンルから極端に遅いジャンルにすぱっと転換したことになるね。
さてこの最終作はかなり一筋縄でいかないアルバムになっている。
まず一言でいえばかなりおどろおどろしい仕上がりになっているのだが、所謂一般的なこの手のバンドがおどろおどろしさを演出される場合は、極端に重く遅い音に、聞き手の恐怖感をあおるようなデス声や金切り声などが重なって、一種近寄りがたい雰囲気を持った曲を作り上げるのだがオーソドックスな手法の一つになっているのだ。
一方でこのアルバムの楽曲群は、演奏はもちろん遅くて重いのだが、とてもバランスのとれた聞きやすい音作りになっている。Black Sabbathを思わせる溜めのあるギターリフ、クラシックなロックテイストの強いギターソロ、これまたちょっと古めかしい怪しい雰囲気のシンセサイザー。曲を構成する要素ひとつひとつは間違いなく、長年ドゥームメタルバンドとしての先駆者としては知り続けてきたこのバンドならではのいぶした銀のような貫禄と重量感を併せ持った歴史を感じさせるようなものである。しかし保守的で古くさい時代遅れの楽曲群ではない。曲の構成がかなりモダンで、曲によってはアバンギャルドともいえるようなフレーズや試みがちりばめられている。プログレとまでとはいわないけど、結構気持ち悪い(もちろん褒め言葉です)大胆な展開も結構あって、比較的長い楽曲が多いけど全く飽きさせない。
また、Leeさんのボーカルがよい。デス声でもない、どちらかというと結構歌心のある歌唱法であるけど、独特の邪悪さがあって、まるで底意地の悪い悪魔の誘い文句か、確信に満ちた偽予言者の語る黙示録のようではないか。歌詞を読んでみるとかなりおどろおどろしい救いのない世界を歌っている。
私はこれが黎明期からずっとジャンルを引っ張ってきたバンドの実力かと、ちょっとびっくりした。伝統と自分たちのカラーを守りつつ、時代に迎合するのではなく、新しく変化し続けていく。正直お見それしましたという気持ちでいっぱいです。
文句なしにおすすめ。
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