アメリカの詩人・作家の短編集。
人の勧めで読んでみた。
調べてみると破天荒な人だったようで、この本のほとんどの短編集が作者本人をモデルにしたような人たちが主人公。
どんな人かというと、大抵酒飲みで下品で貧しくて警官嫌いで競馬好きで女好きで口が悪くて態度が悪くて人と接するのが苦手で詩人。
こんな感じの人たちが、似たような下品な人たち、奇人、変人、金持ち、娼婦、警察官、自分の詩のファンたちと恋人になったり、口げんかしたり、険悪になったり、怒ったり怒られたり、小突いたり、殴られたりするわけです。
とにかく最初は下品な言葉に圧倒されるんだけど、汚い部屋、酒やけした声、執拗な警察官の笑い顔、窒息しそうな刑務所の独房、殺気立った競馬場、そんなところにふっとなんとく大切にしたい楽しさや余韻を残す物悲しさがぶっきらぼうにぼんっと明朗な文体で提示されたりする。
後半になるとその傾向が強くなるようで、前半乱暴に殴られて「うっはーひでー」と笑ってたのが「これはなかなかどうしてだぞ」となんとなく居住まいを正して読んでしまった。
ふらっと現れては人の邪魔をする人種を書いた「ペスト」などは思わずううむとうなってしまう。
ラビ志望の若者とのお酒を飲んで語り合う政治や戦争のことについての軽口をまじえたおしゃべりを書いた「静かなやりとり」の会話に見える知性はどうしたことだろう。
この本は人生について書かれている。どうしようもない毎日、酒びたりの。次第においてくる体とひどい背活の。何ガロンものビールと酩酊の向こうにある人生の。
人生は~だ、ということはたやすく、そうやって書いた小説はわかりやすくて面白い。この本はおおむね人生は糞だといっているが、実はそうじゃなくて、人生というのは本当にいろいろな思いがあってそのときそのとき一瞬でも実は楽しい悲しいだけじゃない、いろんな感情が一緒くたになってとても、簡単な言葉では言い表せないといっているようだ。
つまりこの本に直面するとなんていったらいいのかわからない。デフォルメされてない毎日が書かれているからだ。
圧倒されてしまう。そしてすごく面白い。
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