2013年1月12日土曜日

ドン・ウィンズロウ/フランキー・マシーンの冬






「犬の力」があんまり面白かったもんで、同じ作者が「犬の力」の後に発表した本を購入。

主人公フランク・マシアーノは62歳、サンディエゴの海沿いに住んでいて、釣具屋、リネンレンタル業などを営み、仕事の合間にはサーフィンを楽しむ。地元の人間にはとても愛されていて、離婚したけど今は恋人がいて、またわかれた妻との間に生まれた娘との関係もよい。
ある日、昔の”仕事”の関係者から懇願されたフランクはやむにやまれない事情から引退したはずの”仕事”の手伝いをすることになるが、交渉の場で殺されかけてしまう。
今は餌屋を営むフランクは「フランキー・マシーン」と呼ばれるイタリア系マフィアの殺し屋だった。
あっさり襲撃者2人を返り討ちにしたフランキー・マシーン、きれいに足を洗った後に手に入れた平穏な生活をこよなく愛する彼には殺される理由がわからない。
追っ手から逃つつもフランクは狙われる理由をはっきりさせ黒幕を突き止めようとするが…

フランキーのこらまた血煙にまみれた逃走劇とマフィア時代の回想が同時進行で展開される。
マフィアの世界とは不思議なもので何か事を起こそうとすると、仁義だ何だとうるさいことを言われるくせに、みんな裏ではお互いを欺いたり出し抜こうと苦心している。
大きな矛盾をきれいごとのラベルで包むのは、今も昔もやくざもかたぎも変わらんのか問い浮きもするけれど、そんな陰謀渦巻くマフィアの世界でも自分の道理を貫いて、冷酷な殺し屋ではあるけど”汚い仕事”に手を染めない男気あふれるフランキーがとてもかっこいい。
フランキーは自分でもがんばって、また運がよくて堅気になれた。フランキーは今を愛しているけど、マフィアの仕事にどっぷり使って抜け出せない、そして今はもう老いてしまった登場人物たちが口をそろえて「昔はよかったな、フランキー」というのが悲しい。

この本も暴力と裏切りあいがせめぎあっているけれど、犬の力と違って渺茫とした暴力の果ての地平が描かれていない。
個人的な問題が根底にあって、家族と堅気の生活を守りたいという主人公のポジティブさが物語を明るいものにしている。
映画を見ているような冒険活劇でとても面白かった。

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