アメリカ合衆国はオハイオ州クリーブランドで結成され、今はベルギーを中心に活動しているハードコアバンドの10枚目のアルバム。
2017年にRelapse Recordsからリリースされた。
1988年に結成されボーカリストのDwid Hellionだけは不動のオリジナルメンバーとして活動し続ける(長い活動の歴史で中断はあったようだが)ハードコアバンド。知らない人でも印象的なロゴマーク(トゲのついた帽子をかぶって牙の生えた骸骨?)はどこかで目にしたことがあるのではなかろうか。私は全くもっての後追いで一つ前のアルバム「Suicide Black Snake」(2013)から聞き始めた。ブルータルでプリミティブなハードコアかと思って聞いてみたらかなり印象の違う音でびっくり。以前の聞かないとな〜と思いつつ新作が出たので買ってみた。
デジタル版をBandacmpで購入したのだが、ボーナストラックが5曲入っており、全部で15曲。全部で72分ある。その音楽的な”濃さ”もあって一回聴き通して見るとうおお、濃厚だな…とただただ圧倒されたのだが何回か聞いて見ると結構この世界に入り込むことができたのか、全然普通に聞ける。(全体でちょっと長い感は否めないけど。)
Integrityというのは初期は知らないのだが、少なくとも直近の2作ではメタリックなハードコアを演奏している。メタリックなハードコアは「メタルコア」という名称も含んで実際はかなり懐の深いというか、同じくくりでも様々な音楽が内包されている。(きっと本当にすごく議論が尽きないところだと思う。)そんな中でもIntegrityは独特のメタリックハードコアを鳴らしている。なんせ、メタルとハードコアという要素が非常に明確に一つの曲、Integrityという一つの音楽性の中で分離して共存しているからだ。一番わかりやすいのは非常に饒舌なギターソロだろうか。さすがにクラシカルさやテクニカルさでは本場の先鋭的なテクニカル・メタルとは一線を画すだろうが、ハードコアでここまでメロディアスで叙情的なギターソロを飛び道具的ではなく曲に持ち込んでいるバンドは他に知らない。やけっぱちな短いソロがキンキンしてやや潰れた音で披露されることはあるが、Integrityの場合は明らかにクリアで聴きやすい音で滑るように滑らかに弾きまくられる。
メタリックなのでリフでも刻んでくるのだが、いわゆるスラッシュコア、スラッシーなハードコアという名称もこのバンドの場合はあまりしっくりこない。鬼のような速度で刻みまくる勢いというのはあまりなくて、曲は結構ミドルテンポで尺もそれなりにある(今作は特に)のでHellnationみたいなざらついたパワーバイオレンスめいたスラッシュコアというの音像からは距離がある。今作では女性ボーカルを取り入れた曲もあるし、なんというか世界観が本当に独特。
もうメタルでいいんでは?という気が通して聞くとそんなにしないのは、やはりDwid Hellionのボーカルもあるかもしれない。ちょっとMotorheadのLemmyに似ている酒や煙のダメージを露骨に受けたようなしゃがれたかすれ声。低音が強いがあまり作為的な香りがしない、結構ナチュラルな歌い方だが、この歌唱法は周りのバンドサウンドと同じくらい他に類のないもの。
メタリックというとだいたい音の種類のことをさすがこのバンドの場合、ハードコアにはない漆黒感(ブラックメタル感ではないです)を持ち込むためにメタルの武器を使っているという感じ。だから前に進んでいく攻撃的なパワーバイオレンスにならなくて、むしろ奥行きを増して曲が長くなっていくのではなかろうか。女性ボーカル、アコギ、ストリングスと使っている楽器の種類も豊富でボーナストラックはちょっとトラッドな雰囲気すらある。表現力という意味ではやはりちょっと別の次元で勝負しているハードコアバンドなのだが、そうなるとハードコアってなんだろうな…となる。難しい。全体的にメタリックではあっても、メタルには聞こえないんだよな〜。不思議。
来日公演も迫ってきたしきになる人は是非どうぞ。漆黒のメタリックハードコア。ハードコアでは稀有な濃密さに驚くけどハマるとかなり良いです。
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