2016年6月5日日曜日

Deftones/Gore

アメリカはカリフォルニア州サクラメントのオルタナティブメタルバンドの8thアルバム。
2016年Warner Bros. Recordsよりリリースされた。
Deftonesと言えば最早説明不要のバンドだと思う。私にとってはこのアルバム買うのはちょっとした問題だった。私は1984年生まれの後期オルタナティブ〜ニューメタル世代である。ご多分に漏れずNirvanaから入ってSmashing Pumpkins、Marilyn Manson、nine inch nailsを聴いていたところに、Korn、Limp Bizkit、Linkin Park、Slipknotなどの洗礼を受けてそこにどっぷりハマった。私が人生で一番聴いたアルバムは間違いなくninの「The Fragile」なのだが(今でもすごく良く聴く一番のアルバム)、青春の1曲を選んでくださいと言われたらDeftonesの「Around the Fur」収録の「Be Quiet and Drive」を挙げるだろう。私はこれを大音量で聴いては家族から苦情を言われていた。とくに何の起伏もない灰色と言った感じの思春期だったが、大いにこの曲に助けられたものである。要するに私はDefonesが大好きな訳で3枚目まではアホのように聴いた。(今も良く聴く)なのだが4枚目「Deftones」を聴いた時む?と思ってしまった。今聴いても悪くない、むしろ良いアルバムだと思うんだけど当時はなんか違う気がしてしまった。駄作という訳ではなく方向性に波長が合わなかったんだと思う。その後2006年の「Saturday Night Wrist」、2010年「Daimond Eyes」、2012年の「Koi No Yokan」は買わなかった。なんか大好きなDeftonesの駄作(勿論駄作でない可能性だって大いにある訳なのだが)を聴きたくなかったのだ。良い思い出のままとっておきたいとはま〜〜〜なんとも臆病な考え方なのだが、youtubeでちょっと聴いて良いか悪いか分からないうちに「うわ〜」とかいって途中で閉じるくらいだから本当全然聴いてない。こりゃあ良くねえなと(そして別に例え駄作でも始めの3枚は素晴らしく、幸せな時間を享受した事は間違いない事実だと)思って今回新作を買ってみた次第。

さすがに初期のニューメタルを期待するわけではないのですっとアルバムに入れた。当時からニューメタル界のRadioheadと言われていたりして、暴力的な轟音の中にとろんとエアポケットに落ち込む様なすこし耽美な酩酊、憂鬱な停滞の要素を入れてくるバンドだった。私が聴いていなかった間に苛烈さにそれらのいわばドリーミィな轟音が完全に取って代わった。勿論音の方はガツン!と来る轟音だがChinoのボーカルはほぼほぼクリーンで歌い上げる。スクリームもない訳ではない(「Gore」でのスクリームは全然衰えてないな〜とニヤリとする)が元々クリーンの比重の多かったバンドなので(例えば叫びっぱなしの様な「Lotion」の用な曲の方が特異だった)、違和感は全くない。不満が全くない訳ではない。これは4thの頃から感じていた事で好みの問題だから仕様がないのだけど、ギターの音が金属的な音の塊に固められている。私はどちらかというとつぶつぶした密度のこい音色が好きなので、ここだけはちょっと旧作と比べると残念。ただもしそうすると所謂シューゲイザーっぽくなって、轟音と耽美さというそれらの本質に違う音像からアプローチをかけていく、という今の醍醐味が減じてしまうのかな…と思う。しかしラストの「Phantom Bride」、「Rubicon」の流れは素晴らしいな。ギターがかせを外れたように自由に動きまくる。やはりこうなるとボーカルもその自由さを増していっそう映えてくる気がする。滅茶苦茶楽しい。
いわば新しい個性を獲得し押し進めているDeftonesの新作、結果から言えば素晴らしく、なのでかえって勝手に怖がって中間のアルバムを買わなかったのかと反省ばかり残る。Deftonesらしさ、はなにかという時に単純に激しさ、音の作り方ではなかったのだ、私の場合。勿論陰鬱で内省的、そして傲慢なまでの暴力性は今ではないのだけど、それなら過去のアルバムを聴けば良いし、私がこのバンドに求めていたのはそれだけじゃなかったのだな、と思った。ありがとうDeftonesありがとう、という多幸感。そして今更ですが2013年に亡くなったベーシストChi Cheng氏のご冥福を御祈りいたします。ありがとうございました。青春でした。

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