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2017年4月2日日曜日

DIEAUDE/渦巻く絶望の世界

日本は愛知県岡崎市のハードコアパンクバンドの1stアルバム。
2014年日本四国のDan-Doh(男道)Recordsからリリースされた。バンド名は「ダイオード」と読む。
AcuteのSivaaaaaさんによるコッテリ過ぎなアートワークが印象的。
2016年には姫路のネオクラストバンドsekienのメンバーらによる新バンドKuguridoとスプリットをリリース。東京は新宿のAntiknockでリリースライブを開催。私はそこでこのバンドのライブを目の当たりにして大変かっこよかったので物販でこの音源を購入。このアルバムをリリースした当時は5人編成だが、今はギターが一人抜けて4人編成のようだ。

いかにも不器用な感じのMCも含めて決して器用なバンドではないのだろうが、ライブは楽しかった。一緒に出ていた東京のNoLAはわかりやすく派手なステージングだった。一方のDIEAUDEはなるほど動きこそ控えめだったが、(特にボーカルの人の不敵な面構えもあってか)凄みのあるものだった。リリースパーティということもあって「主役は俺らでしょ」という自負と自身で持ってフロアもそれまでにない盛り上がりを見せていた。それは音楽的にもそうで、多様なバンドが様々な音を鳴らしている中ストレートなハードコアを鳴らしているのは異様に目立っていた。私の目にはその異質さが「ヤンキー感」に見えてしまったのだった。マイナーな音楽にしても流行や時代の潮流があって、それに迎合しにくい土壌があったとしても(フラフラ流行を追いかければコマーシャル、中身がないと批判されがち)、多かれ少なかれ影響はされるものだと思う。(”ブラッケンド”なんてのはまさにそうではと思う。新しい可能性の伝播なのでそれ自体は良し悪しではないかなと思います。)ところがこのDIEAUDEというバンドはあまりそう言った感じがしない。一緒に見たKUGURIDOはTragedy型のクラストを自分たちなりに解釈、構築するバンドだったというのもあって、このバンドのブレなさは逆に異質に見えたのだと思う。
日本の伝統的なハードコアスタイルに則った音楽を演奏している。ここら辺は私PaintoboxとThink Againくらいしか聴いてないのだけど、この二つのバンドに比べるともっと勢いがあってその代わりメロディアスさは減退している。ほぼシャウトで構成されたボーカルはなかなか歌詞が聞き取りにくい。コーラスは多めだが例えばライブで初見で乗れるようなキャッチーさはない。言葉で説明するととっつきにくい音楽性だけど、実際に見てみるとこれがひたすらかっこ良い。一つは(どうも独特のコード進行らしいのだが)構成と進行が明快でわかりやすい。ひたすらストレート。ドカドカ蹴り込むドラムにギロギロに硬質なベースが勢いを出してくて、ギターもそれに乗っかる形だがここがかなり凝っていて勢いに程よく感情の色を乗せている。つんざくようなソロ、中音域の分厚いトレモロ、実はかなり感情的だ。そこに乗っかるボーカルに再度注目してみると勢いの中にも。耳に馴染むメロディがある。演歌とまではいかないが哀愁のある儚いメロディ。それゆえに尖った強いメッセージ性も胸に突き刺さってくるのだなと思う。
KUGURIDOとのスプリットではさらにアルペジオを取り入れたりと時にグルーミィな叙情性を激しい曲に溶け込ませていくわけなんだが、なるほどその萌芽をこの音源でも聞き取ることができると思う。

既存の曲の完全なコピーをやっているのでなければ新しい要素の入る余地がないわけがない。温故知新に見えてこのバンドにしても必ず独自の要素が入っている。東京を一つの地方とすれば、それとは別系統の音を鳴らしているのがDIEAUDEを含む地方のバンドであって、それを体験する時に単にオールドスクールだというのはちょっと変だ。(まるで東京はその地点を通り過ぎて最先端だといわんばかりの傲慢さがある。)独自の進化系統にる、もう一つの可能性じゃんと思ってしまう。少なくともこのバンドにはそう思わせるかっこよさがある。ヤンキーが強いのはそう言った別の可能性の楽しさがあるなと思った。

2017年3月26日日曜日

Break The Records presents War for Peace Vol.5@新宿Antiknock

日本は姫路のネオクラストバンドsekien(赤煙)が解散後、メンバーが新たに立ち上げたバンドがKUGURIDO。デモリリースでも話題を呼んでいたが、2017年満を辞してBreak The Recordsから、愛知は岡崎のハードコアバンドDIEAUDE(ダイオード)とのスプリット「叫鬥(「きょうとう」と読む)」をリリース。リリースを記念したライブが東京で行われることになった。KUGURIDOはこのライブが初ライブになる。つまり初ライブが地元の外。スプリットはそこまで聴き込めてなかったけど、sekienのライブはすごかったので新宿のAntiknockに見に行ってきた。
Coffinsのあたけさんが言っていたがなんとも形容しがたい取り合わせのライブだった。

NoLA
一番手は東京のNoLA。ライブを観るのは2回目かな。Redsheerとのスプリットリリース以来。改めて見るとその勢いに圧倒される。出している音としてはハードコアなのだろうけど、どうしてもドゥーム/スラッジの泥濘感があるような気がする。バンド名(Nolaはニューオーリンズ・ルイジアナの特定の音楽を指す言葉でもあるので)からの先入観もあるだろうが。しかしフレーズの語尾をだるい感じに引き延ばす感じ、そして何より速度のコントロール、というよりは低速パートはハードコアのそれというよりはスラッジのそれを彷彿とさせる。ただ早いだけではなくてハンマー投げの射出する前の状態のよう。つまり遠心力。思い何かをぐるぐるぶん回す。その楽しさがあるなと思った。ボーカルの人の動きも激しく一番手としてはうってつけのアクトだった。

No Excuse
続いて同じく東京を活動拠点にするハードコアバンドNo Excuse。Break The Recordsから音源をリリースしているらしい。この度初めて聞くし、見る。4人組のバンドでメンバーの立ち居振る舞い、衣装でハードコアパンクバンドだとわかる。調べてみるとジャパニーズ・ハードコアの系譜に連なる音楽を演奏するバンドで、とにかくストレートに攻めてくる。ドラムは勢いのあるD-Beat、ベースの音は尖り、ギターは分厚い中域が強調された温かみのある音であまりミュートを使わないハードコアらしい演奏。ジャパニーズ・ハードコアはとにかく恐ろしい伝統の世界、というような先入観があるのだけどこのバンドを見るととても親しみやすくて曲を知らなくても楽しめた。非常にキャッチー。ボーカルはひたすら叫んでいるのだけど、一つはメロディラインというかコード進行がそれとわかるような軽快なメロディアスさを持っていること。それから熱くそしてシンプルなシンガロングパートがある曲が多いこと。これは盛り上がる。性急な感じのギターソロも多めでかっこよかった。この間音源を聴いたThink Againに似ているけど、こちらの方がシンガロング多めでその代わりボーカルはよりハードコア。だけどむしろNo Excuseの方がキャッチーかも。

Terror Squad
続いては1992年に東京で結成されたスラッシュメタル/ハードコアバンド。私はこの間リリースされた兵庫のSwarrrmとのスプリットを持っているので聞いたことはある。ライブに行くにあたり他の音源も聴いてみようかなと思い、youtubeで調べたらヒップホップユニットのMVばっかりひっかかる。やって見て。
転換の時は明らかにベテランの佇まいだな〜と思っていたけど始まってみたら、めちゃくちゃ熱い。ボーカルの人はNoLAのボーカルと同じくらいアクティブだった。とにかく細かく早く刻むギターがスラッシー。スラッシュメタルだと思ったんだけど、よく聞くとそうじゃない、というかそれだけじゃない。まずボーカル、スラッシュならこんなに顔真っ赤にして叫ばない。そしてベース(ベースの人はMelvinsのバズみたい、もしくはガンズのスラッシュ。)はよくよく聞くとめっちゃグルーヴィ。かっちりしているけど根底にはMotorheadから連綿と続くロックンロールのグルーブがある。この縦横のノリを維持したまま速度を上げると、確かにハードコアっぽくも聞こえるから不思議。初めはギターの音量が小さいかな?と思ったけど次第に良い感じの仕上がりに。拳を振り上げるのが楽しかった。ボーカルの人の笑顔が素敵でした。

Coffins
次いで東京のオールドスクール・デスメタル、Coffins。結構見ている。つなりいろんなイベントに呼ばれているってことなんだろう。この日は割とハードコア色の強いイベントだったけど、このバンドはきちんと自分たちの役割をわかっている。いつも通り徹頭徹尾暗くて重たいデスメタルをプレイ。ただ比較的コンパクトな楽曲をプレイしていたと思う。這い回るような、引きずるようなドゥーミィなリフは間違いなくオールドスクール。重たく吐き捨てるボーカルに全くメロディがないので、剛腕リフをぶん回してそこにグルーブを生み出すバンド。一見全く優しくないのに棒立ちで聞くバンドではないのはひたすらすごい。この日はいつもより高音〜中音域のソロが映えていたように思う。特に中音でうごめくように弾くフレーズは個人的にはツボ。ドラムの人は軽く叩いているように見えるのになんで音があんなにでかくて、そして正確なのだろうか。Coffinsはライブのたびにドラムがすごいな、ドラム…ってなる。

DIEAUDE
さていよいよスプリットの片方、愛知は岡崎のダイオード!4人組のバンドでドラム、ベース、ギターに加えてボーカル。佇まいもそうだが鳴らす音もNo Excuseに似ている。つまりジャパニーズスタイルのハードコア。突進する演奏陣に野太く、男臭いボーカルが怒号を乗せる。No Excuseと違ってキャッチーさはない。シンガロングはあるんだけど頻度が少ないし、初見で乗るのはちょっと難しい。ロックの香りがするギターソロもない。その代わりミュートを多用したり、音の数が多かったり技巧的な「テクニカル」さではないが独特の音づかいをしていた。フロアは盛り上がっている。拳が振り立てられ、体の動きが激しい。私が感じたのは語弊があるかもしれないが「ヤンキー感」である。これは決して悪い意味ではない。そしてダサいという意味でもない。ただ東京で幅を利かせているお洒落と行かないまでも洗練された様式とは明確に異なる。粗野な勢いがある。頭で考えるけど、フィジカルにも重きを置いているようなアティテュードが感じられるような。その勢いというのがこのアウェイの地でも今までの経験に裏打ちされた自信ゆえだろうか、確固たるものとして私の目には何かしらの異質なものとして見えた。ライブを見て面白いのは「なんだか説明できないけどすごいものを見ている」という感動で半笑いになってステージを見上げる時なんだけど、この日はこのDIEAUDEはまさにそうだった。音自体はあくまでもハードコアで奇を衒うことは全然ないんだけど、何か別のものを感じてしまった。

KUGURIDO
続いては播州播磨、つまり兵庫の姫路のKUGURIDO。メンバーがこのバンド結成する前にやっていたsekienはすごかった。khmerの来日で見た時は両者の違いにネオクラストというのは考え方やアプローチであるのかなと思ったものだ。この日のバンドで唯一ボーカルが専任ではなく(ベーシストが歌う)、また唯一バンドのフラッグをステージに飾った。「HIMEJI CITY HARD CORE」と書かれたそのフラッグは東京の地で非常に誇り高く見えた。ドラム、ベース兼ボーカル、ギターの3人体制。この日が初ライブ。
実はこの日一番難しいバンドだったのでは。sekienに比較するとボーカルの登場頻度がやや減ったように思う。代わりにギターの変幻自在さが否応でも目立つ。とにかく1曲の中に多様なリフとフレーズが詰まっている。ただテクニカルかというとそんなことはない。ミュートをあまり多用しないリフはハードコア的だし、ボーカルがぶっきらぼうな分、ボーカルの後ろで、それからボーカルがないパートではそのメロディアスさを存分に発揮している。力強さと叙情性を併せ持つギターと酷薄といってもいいくらい前に進むボーカルの対比、ここはこの日SEとして繰り返しなっていたTragedyに似ている。ただネオクラストに対する回答がsekienだったように、やはりTragedy的であっても決してTragedyのコピーではないということだろうか。異形の新しさが”これから”の期待を煽る、そんなライブだった。

今回スプリットを出した主役の二つのバンドはともに東京から離れた土地で活動するバンドで、やはりどうしても東京のシーンとは違いがあるように思った。そしてその異質さこそが面白さなのでは。逆説的に東京がダサくて地方がクールだ、無論そんなことはない。存在しないユートピアとしての他所ではなく多様性の問題であって、この差異は例えば地方ごとに築かれたシーンの伝統(3la水谷さんより)にその要因を求めることができるだろう。「インターネットで均質化さ」れるとはよく聞くフレーズだが、均質化されているのはあくまでも受取手に過ぎないのではないかなと思った。多様性こそがきっとシーンを活性化させる。それは音楽だけではなく。そんなことを考えて楽しくなった。DIEAUDEのCDとKUGURIDOのT-シャツ(デザインがカッコ良いのよ〜)を買って帰宅。