年末にようやくSWARRRMの「こわれはじめる」の感想をかけた。
一回書いたのがイマイチでやめてから何となく書くのが難しくなってしまったので、年内に書ききったことでなんとか整理をつけることができたかなと。
そうこうしているそのSWARRRMとassembrageのスプリットのレコ発があるということで、もうなにも懸念はない身なのでこれを見に行くことにした。
ラインナップには結構見たこともないバンドもいてそれも楽しみだった。
NoLA
一番手は東京のハードコアバンド。メンバーがひとり減ってから見るのは2回目かな。もう完全に違和感ない4人組。
まだ若いのによくまあと思わせる音楽性で、凶暴なハードコアに泥臭いスラッジをくっつけた音楽性。スラッジって結構魔力的な物があると思うんだけど、その吸引力にとらわれることなく(つまり完全にスラッジコアバンドになることはなく)、出音的には短くコンパクトにまとまったハードコア。といってもいわゆるタフなスタイルとは一線を画す音楽性であって、そういった意味ではスプリットで共演したRedsheerを始めとする日本の激情スタイルに通じるところがないわけでもないのだが、それらのバンドが醸し出す懊悩などの感情に囚われすぎないところが良いところ。わかりやすく言えばブルータルなのだ。パワーバイオレンスにおけるスラッジパートとも違う、Eyehategodなどのもつブルージィなロックンロール感をブーストさせた感じ。もはや人生どん詰まりといった自暴自棄さを健康的なハードコアで補填しているのも良い。
そういった意味では結構どのジャンルからも距離をおいている独自の道を追求しているバンドなんだなと思った。
DIE YOU BASTARD!
続いては東京(?)のハードコアバンド。名前はしっているが見たことも聴いたこともないバンド。ドラム、ベース、ギターに専任ボーカルの4人組。ベーシストとギタリストはもちろんフライングV。
突っ走るドラムにあっついボーカルが乗るジャパニーズスタイルのハードコア。なんだけどどうも様子がおかしい。明らかにうるさすぎる。日本のハードコアは速いだけ(速いだけのハード子も大好きです。)のハードコアに勢いを保ちつつ叙情性を大胆に持ち込んだやり口であって、ギターソロなどにその特徴が顕著に現れるわけなんだけど、このバンドはそもそもあまりそんなギターソロの頻度が多くない。そして何よりドラムがうるさい。とにかく叩きまくるし、とにかく速すぎる。これもう見てて笑ってしまった。すごい好き。格好良い。日本のハードコアも地位を確立していて、逆に言えばある程度の型ができている中で、このバンドはそんな方を豪腕でもって追い抜いていこう!というそういう気概が曲に出ている。妙なやけっぱちさがあって、それがねじけた感じではなく、ひたすら前に前にストレートに出ているのが男らしい。
それで気がつくんだけどバンド名はDIE YOU BASTARD!でこれはかの有名なMotörheadの曲名。4人のメンバーの内3人がMotörheadのマーチニミを包んでいる。(ボーカリストの方は背中にでっかくレミーの顔があしらわれたジャケット。)「死ねや、くそったれ」そんな精神で始まっているバンドなのだった。納得。
会場を巻き込んでいく温かいMCも良かった。
Intestine Baalism
続いて東京のデスメタルバンド。名前も知らなかったです。91年から活動してるベテラン。佇まいからして完全にメタル。そういった意味ではハードコアバンドが名を連ねるこの日一番浮いたバンド。ギタリストが二人いて両方共ボーカルを取る5人組。ギタリストはもちろんふたりともフライングV。だんだんわかってきました。
曲が始まるとこれもうデスメタル。容赦のない低音ボーカルとイーヴィルなしゃがれボーカルの掛け合い、複雑なリフワーク。曲は長めなのだろうが、飽きさせない構成。というのも疾走するところと、じっとり停滞するパートのメリハリが利いているから。リフが魅力のバンドなのだが、疾走するところでは冗長性はバッサリ捨てて突き進むところが格好良い。速度に差が生じれば必然的に、リフが映えるパートでリフの魅力が体感的に実感されるから、結果的にはこのやり方こそがリフ至上主義なのかも。そういった意味では曲は結構プログレッシブ。驚いたのはそれまでの無愛想な凶暴性を一転させる叙情的なギターソロ。哀愁もあれば、勇壮でもある。今まで顧みなかった感情の要素をこのギターソロで取り戻そうとするかのようだ。これ面白いな!と思って、はじめはBetween the Buried and Meっぽいかな?と思ったのだが、最近たまたま見たCarcasの「Heartwork」だと気づいた。そうなるとメロデスだ。私はメロデス全く聴いていなくて、前編メロディアスなデスメタルかな?と思っていたんだけど、「Heartwork」を聴くとどうも違うみたい。つまりデスメタルの曲があって、そこにギターソロ(やその他の要素)としてメロディを持ち込み、両者を同居させている、というやり方(他のやり方もあると思う)なのだなと。そうなると確かにIntestine Baalismはメロディック・デスメタルだ。個人的にはこの日一番面白かった。
全編とにかくポーカフェイスなメンバーも良かった。
OTUS
東京のハードコアバンド。見るのは3回目かな?この日一番タフなハードコアだったのでIntestine Baalismほどではないけどラインナップの中では特異。ボーカルの方がIron Monkey、ベースの方がEarth CrisisのT-シャツ。
ギタリストがアンプを複数使うところ、最新作「Mold」の真っ黒いアートワーク、以前見たライブの盛り上がりから、モダンでブルータルなハードコアかなと思っていて、この日も実際間近で見たら間違ってない。とにかくステージのアクションが激しい。縦横無尽に動くボーカリストだけじゃなくて、ベーシストの人もとにかくよく動く。一番前で見てた人は結構怖かったんじゃなかろうか。フロアも盛り上がってこの日唯一激しいモッシュが発生。とにかく何が起こるかわからない、という危険さを持ったブルータルなバンドだなな。
ただ改めてよくよく聞くと音楽的にはただ暴れているだけじゃない。ギターのリフをとってもひたすらモッシュパートだけを演奏しているわけじゃなくて(とはいえ低音ミュートと高音を噛み合わせたモッシュパートは格好良すぎる。)、結構デスメタリックなトレモロを挟んだりして面白い。一番思ったのはボーカルの頻度が結構高め。メロディアス差は皆無だが、ひたすらモッシュさせるだけじゃないバンドだな、と。叫ぶというのはそもそもハードコアバンクの本文だよね、主張がまずあってそれを曲にするという。
SWARRRM
つづいてはこの日の主役、神戸の混沌グラインダーSWARRRM。いつだってライブをみたいバンドの一つ。4人組という体制は変更なしだが、やはりベーシストはメンバーが変わったようだ。新メンバーは若くて侍のような佇まいの方。このバンドはベースの運指が非常に激しいので大変だろうと思う。
ほぼもう完全に最近の曲で構成されたセットリスト。大胆に肉抜きされたギターの音が耳に突き刺さる。ライブで聞いて思うのは引き算されたといってもただ音の数を減らしたわけではない。逆に減った分リフへの比重は大きくなった。コード感はかなりのもので、なんとなく知っているようなコードフォームも見えたような気がする。音楽理論はからきしなのだが、曲に対して結構コードの数が多い?ただ同じコードを回転させているような印象ではない。音の数も統制されていて、盛り上がるところではギターもかなり感情的だ。AlcestのNeigeがボーカルを採っていた頃のフランスのブラックメタルバンドMortiferaが好きなのだが、結構ここに通じるトレモロ感がある。メロディアスなトレモロリフが印象的なのだが、妙にささくれだっていてそれがガリガリこちらの心臓に刺さるのだ。流石にそこまでヘヴィではないものの赤裸々な音のサウンドが回転してメロディアスな情景を作り出していくやり方は似ている。
観客の中にはおそらく歌詞をなぞっているような方も見受けられた。その気持わかります。自分にあまりない感情を惹起させるようなOTUSやIntestine Baalism。対してSWARRRMは個人的な特定の感情を呼び起こすようだ。曲に同調して体が透明に鳴っていくような気がして好きだ。
assembrage
最後はこの日の主役、大阪のデスメタリック・ハードコアASSEMBLY OF THE RAGEことassembrage。ドラム、ベース、ギター2本に専任ボーカルの5人組。ギタリスト2人とベーシストはもちろんフライングV。この世界ではフライングVが一番イケてるギター/ベースなのだ。私は学習した。
恐ろしいことにギタリストとそしてベーシストの足元には悪名高いエフェクターHM-2が置かれていた。だいたいサウンドが理解できると思う。いわゆるスウェディッシュ・デスメタルのサウンド形成に大いに貢献したのがこのエフェクターだ。輪郭がたわんだような汚い音(褒め言葉)が特徴。
このバンドが面白いのはデスメタルの音を使いつつハードコアを演奏するところ。うひょー音がきたね〜(褒め言葉)と思って聴いていたんだけど、これ本当ハードコア?リフが複雑すぎない?でも例えばIntestine Baalismとは全く異なる出音。あくまでもかっちりしているあちら側に対して、こちら側はとにかく勢いが半端ない。(ちなみに演奏がうまくないということはまったくなかったと思う。)でもassembrageをしてシンプルなハードコアと言ったらそれは完全な嘘だ。ときにはユニゾンし、時にはタッピングも入れるギターソロ、そしてなによりよくよく練られた複雑なギターリフ。これはメタルでは???と轟音に包まれてわからなくなる。2つのジャンルをつなぐのにやはり日本のハードコアがあると思う。感情的という強力な粘着剤で異なるジャンルきっちり結びつけている。北欧のメタルはデスであってとにかく死んだ機械の金属の表面のようにコールドだ。一方assembrageは違う。徹頭徹尾血が通ったハードコアだ。
なかなかの長丁場だったが、共通項はありながらもジャンルに振れ幅があるラインナップで楽しかった。名前はしっているが見たことなかったバンド、名前すら知らなかったバンドを見れてよかった。
ライブはやはり自分にとっては結構気付きの場というところもある。それはそれで楽しいし好きなのだが、そういう見方しかできないのが良く嫌になる(ブログ書くのをやめたら別の見方ができるような気がしている。)のだけど、やはりSWARRRMはすごくてそんな雑念吹っ飛んでしまうくらいのライブだった。
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