日本は東京のハードコア・パンクバンドの1stアルバム。
2018年にCaptured Recordsからリリースされた。
2006年に結成されたバンドで今まで3つのEPとスプリット音源などをリリースしている。CDのジャケット裏によるとメンバーは5人。(FBだとギターが三人の6人となっている。)
ライブも音源も未体験だったがなんとなーく買ってみた。ジャケットの雰囲気から勝手に激情系のハードコアバンドかなと思っていたら全然違ってびっくりした。冒頭の曲(と中盤にインタールード的な曲もある)のみアルペジオにシャウトが乗るスタイルでややポスト感漂うが、あとはもう完全に日本のハードコア・パンクだ。ツタツタ突っ走るドラムに太めのベースがうねり、疾走感をそのままリフに落とし込んだギター。ボーカルは前のめりにまくし立てるように全編ほぼシャウトで叫び続ける。暑苦しいコーラスワークが曲に極めて荒々しい華を添える。重たさと速さが両立したハードコアスタイルだが、印象的なギターソロが象徴するようにメロディが強烈に意識されており、歌唱にないポップさを楽器隊が一手に担う。結果アグレッションをスタート地点としたハードコアに他に類を見ない叙情性を両立させた楽曲が生まれてくる、という感じ。これをして熱いハードコアなんだよ!というのはたしかにそうなのだが、よくよく聴いてみると決してただ突っ走っておわるハードコアとは異なる事がよく分かる。一番わかり易いのはその叙情性を生み出す表現力の豊かさと、それを支える表現力だろうか。illyaは概ね3分台の楽曲といえば、この手のジャンルにしては長いとは言わないが、短くはないことがわかる。激情ほど悩んでいないが、もちろん脳みそまで筋肉の男たちがただ騒いで暴れているわけではない。ジャパニーズ・スタイルを飲み込んだ上で、自分たちなりに分解しどの要素が楽曲をジャパニーズ・ハードコア足らしめているのかを解釈し、そこに有り余るエネルギーを注ぎ込んでいる。パワーに振るのではなく、クラスト的な粗さをあえて捨てて鋭さと叙情性に力を割く。直線的なボーカルに絡みついていくようなギターのメロディがなんとも華やかだ。例えば8曲目の急展開もスムーズで違和感がない。
とにかくまっすぐな歌詞が苦しいほどに熱い。小難しい言葉を並べ立てて懊悩を表現しようとする激情系とはやはり完全に異なる世界観。話し言葉をノートに書きなぐったような飾らなさが、小恥ずかしさのバリアを突き抜けていい歳した胸に突き刺さってくる。胸に去来するのは憧れだ…なんて言いたくない気持ちになってしまう。きっとライブを見たらさらにビシビシ来るのではないだろうか。
良い意味で期待が裏切られて面白かった。心情はあくまでもストレートだが曲は結構ひねってあって、Death Sideもそうだったけど単にシンプルで熱いのがジャパニーズ・スタイルではないんだなあと思った次第。表現力はもっと豊かで複雑。
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